概要
単純性顔面粃糠疹とは、主に小児の顔面にみられる細かな鱗屑を伴う脱色素性の皮疹のことです。円形や楕円形の形状で、直径数cmの斑点のようにみえるのが特徴です。
小児に広くみられる皮疹であり 、古くから「はたけ」と呼ばれてきました。症状の程度は異なりますが、学童期の児童の10%にみられるといわれており、女児より男児に多い傾向にあります。
粃糠疹は皮膚の角化異常によって生じる疾患ですが、単純性顔面粃糠疹はアトピー性皮膚炎の児童が発症しやすいとのデータがあり、皮膚の炎症性病変との見解もあります。特別な治療を必要とせず、多くは発症後一年ほどで自然に治ります。
原因
人の皮膚は表皮、真皮、皮下組織の大きく3層に分けられていますが、そのなかでもっとも表層にあるのが表皮の角質層です。角質層にはいわゆる「垢」の元になる細胞が積み重なっており、摩擦などの刺激や乾燥から肌を守るはたらきをしています。
粃糠疹は、この角質層の形成過程である角化に異常が生じることが原因で生じます。単純性顔面粃糠疹も粃糠疹の一種であり、その明確な原因は解明されていませんが、角化の異常によって生じると考えられています。
一方、アトピー性皮膚炎の患者さんにできやすいことから、単純性顔面粃糠疹は皮膚の炎症後の色素脱失であるとの考え方もあります。また、かつては白癬や何らかの細菌感染が原因と考えられていましたが、今では感染による病変ではないことがわかっています。
症状
学童期の男児に多く発症し、頬や顎の周りなどにいくつかの皮疹が現れます。皮疹の大きさは数cmに止まり、円形~類円形の形状をしています。また、不完全な脱色素がみられ、白~淡紅色のまだらな色調を示します。また、皮疹の正面は細かい米ぬかのような鱗屑に覆われ、周辺の正常な皮膚よりやや盛り上がりがみられることもあります。
不完全な脱色素のため、皮疹の存在自体が気づかれないこともありますが、夏に日焼けをすると目立つのが特徴です。また、冬から春にかけて乾燥する時期に表面の落屑が増えるなどの悪化がみられることがあり、軽度のかゆみを伴うことも少なくありません。
検査・診断
単純性顔面粃糠疹は、皮疹の性状が尋常性白斑と似ているため、しばしば誤診されることがあります。これらを鑑別するための特異的な検査はなく、慎重な視診によって色素脱の程度などを評価して診断が行われます。単純性顔面粃糠疹は、不完全な色素脱があり皮疹部はまだらな色調であることが特徴です。
また、アトピー性皮膚炎や顔面白癬との鑑別が必要な場合もあり、血液検査などによるアレルギー検査や、皮疹の一部を採取して顕微鏡で白癬の存在を確認する検査などが行われることがあります。
治療
単純性顔面粃糠疹の多くは、治療を行わなくても一年以内に自然に治るとされています。しかし、鱗屑が多く、乾燥が重度な場合には保湿効果がある塗り薬が使用されることがあります。
皮疹が目立つのは夏ですが、皮膚が乾燥する冬季に症状が強くなります。そのため、冬季にスキンケアを行うことが症状の緩和につながります。また、夏などに皮疹が目立つのを防ぐためには、周囲の皮膚を含めて紫外線から守ることが大切です。
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