概要
外リンパ瘻とは、内耳の一部に穴が開いて、めまい・難聴・耳鳴りといった症状が引き起こされる病気です。重い物を持ち上げる、トイレでいきむ、強く鼻をかむ、ダイビングなど中耳に急激な圧変化をきたした場合にも発症します。
原因
内耳はカタツムリのような形状をしている平衡感覚や聴力にとって重要な器官です。内耳は側頭骨内にあり、骨迷路という空間とその中にある膜迷路からできています。両者の間は外リンパ、膜迷路の中は内リンパで満たされています。外リンパ液が流れている空間には中耳と壁を隔てて隣り合う部分が存在し、「前庭窓」と「蝸牛窓」と呼ばれています。つまり、前庭窓と蝸牛窓により内耳と中耳は隣り合っています。
前庭窓と蝸牛窓は外力に対して弱い構造をしているため、穴が開くことがありこの状態を「前庭窓破裂」、「蝸牛窓破裂」と呼びます。穴が開いて外リンパが持続的に中耳漏れ出た状態が「外リンパ瘻」です。外リンパ漏が起きると内耳が本来持つ平衡感覚や聴力に支障が生じます。
内耳の一部に穴が開くきっかけはさまざまで、交通外傷や頭部外傷などの強い外力や日常生活のちょっとした動作によって生じることがあります。具体的には、重い物を持ち上げる、トイレでいきむ、強く鼻をかむ、くしゃみ、海に潜る、エレベーターに乗る、飛行機に乗るなどしたときで、これは急激な圧変化によるものです。また、なかには特発性と呼ばれる原因不明のものもあります。
症状
穴が開くのと同時に、めまい、難聴、耳鳴りなどが出現します。ほかにも嘔吐、気分不快感、冷や汗などが生じることもあります。また外リンパ瘻を発症したときにpop音と呼ばれる穴があいた音や水の流れる音を自覚することもあります。
難聴の出現は突発的で、時間経過と共に徐々に増悪することもあります。きっかけなしで何度も症状を繰り返す場合、メニエール病など他の内耳疾患との鑑別に苦慮することも少なくありません。
検査・診断
外リンパ瘻は聴力や平衡の障害を伴うため、聴力検査や平衡機能検査を行います。また、側頭骨骨折の有無などを確認するためにCT検査も行います。外リンパ瘻の診断が困難なことありましたが、CTPと呼ばれるタンパク質を迅速に検出可能になったことで診断率が向上しました。CTPは外リンパに含まれているタンパク質の一種で、鼓膜切開により中耳から得た検体からCTPを検出することで外リンパ瘻を診断します。
治療
外リンパ瘻には保存的治療方法と外科的治療方法があります。
保存的治療方法
頭部挙上でベッド上安静します。そして、くしゃみやいきみを避け、瘻孔の自然閉鎖を促します。
外科的治療方法
保存的治療により改善がない場合や、ふらつきや難聴が増悪する場合に実施します。手術では内耳に穴があいている部位を確認し、同部位を閉鎖する内耳窓閉鎖術を行います。外リンパ瘻の診断が困難な場合には、手術により外リンパ漏の有無を直接確認することもあります。
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