だいのうひしつきていかくへんせいしょう

大脳皮質基底核変性症

概要

大脳皮質基底核変性症とは、脳の前頭葉と頭頂葉に強い萎縮がみられる病気で、はっきりとした原因は分かっていません。しかし、顕微鏡で観察した結果、脳の神経細胞が脱落して、残っている神経細胞にも異常なタンパク質が蓄積することが分かっています。 発病は40歳代-80歳代にみられ、最も発病しやすいのは60歳代で男女比にほぼ差はありません。日本では人口10万人当たり2名程度の非常にまれな疾患です。日本においては難病指定を受けている疾患の一つです。 大脳皮質基底核変性症を発症すると、大脳皮質に関連した症状とパーキンソン病に類似した症状が出現します。具体的には、手がうまく使えない、指先の運動が困難になる、動きが遅くなるなどです。大脳皮質基底核変性症に対して確立された治療方法は存在せず、症状にあわせた支持療法が中心になります。

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原因

大脳皮質基底核変性症では、脳のうちでも前頭葉と頭頂葉、そして黒質と呼ばれる部位の神経に障害が生じており、神経細胞が失われていることが知られています。さらに、リン酸化タウと呼ばれる異常なタンパク質が蓄積していることも特徴であり、4リピートタウオパチーと呼ばれる分類がされています。前頭葉と頭頂葉が障害を受けることは知られてはいますが、こうした大脳皮質の障害の程度は非常にバラエティがあることも報告されています。したがって、臨床症状の出現様式も同じ疾患であってもさまざまであり、臨床症状から大脳皮質基底核変性症を診断することは困難なこともあります。 形態学的な特徴(脳の特定の部位の萎縮や異常タンパク質の蓄積)に関しての知見は蓄積されていますが、なぜこうした形態学的な変化が生じるようになるのかに関しての原因についての全容は明らかとなっていません。

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症状

大脳皮質基底核変性症の症状は、前頭葉や頭頂葉障害に関連した症状とパーキンソン病様の症状で特徴付けられます。初発症状としては、片方の腕が思うように使えないといった症状や緩慢な動きから発症することが多いです。「ぎこちない」、「不器用になった」といった自覚症状から病院を受診することがあります。上肢から症状は出現し、徐々に下肢にも症状は広がり、歩行障害をみるようになり転倒を来すようになります。 自分の意志とは無関係な筋肉の動きもみるようになり、ミオクローヌス(腕を動かす時に素早い動作になってしまうことです)やジストニア(手足に持続的に力が入ることです)、勝手に手が動くなどの症状が出現します。また視覚や感覚、運動には問題がないにもかかわらず、空間を認識できなかったり、目的にあった動作を実行することができなくなったりします。言葉が出てこなくなる失語症をみることもあり、最終的には認知症が出現することもあります。また進行性核上性麻痺で認めるような症状(すなわち、眼を上下方向に動かすことができなくなり、足下が見にくくなります)を呈することもあります。

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検査・診断

大脳皮質基底核変性症では、脳のCTやMRI、SPECT、PETといった検査を行います。頭部CTやMRIでは、前頭葉や頭頂葉に脳の萎縮を確認することができ、大脳皮質基底核変性症における形態学的な変化は左右差が強いともいわれています。MRIでは基底核に病的な信号をみることもあります。また、SPECT検査では脳の血流を評価することができますが、脳が萎縮した領域に対応して血流が低下していることが確認されます。こうした血流の低下は、CTやMRIで萎縮性変化をみる前に同定できます。PET検査は脳の代謝機能を評価する検査方法であり高額な検査方法ではありますが、SPECTより詳細な機能評価を行うことができます。 大脳皮質基底核変性症では、パーキンソン病進行性核上性麻痺多系統萎縮症など、類似した症状を呈する疾患があります。これらの疾患と鑑別を行うためにもこれら画像検査は有用です。確定診断を行うには、脳の細胞を採取して大脳や脳幹の神経細胞の喪失、異常タンパク質の蓄積を実際に顕微鏡で確認することになります。しかしこうした検体を採取するのは、生前に行うことは困難です。そのため、大脳皮質基底核変性症の診断は困難を伴うこともあります。

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治療

大脳皮質基底核変性症自体の根本的な治療法はなく、各症状に対する治療を行うことになります。先に述べた“パーキンソン症状”に対しては、パーキンソン病の治療薬(レボドパ、ドーパミンアゴニスト、アマンタジンなど)で改善することがあります。 また、筋力が低下しないように運動をすることも重要です。病状が進行すると、関節が硬くなったり、バランスをとるのが難しくなったりし、最終的に寝たきりの状態になります。病気初期の段階からリハビリを行うことで筋力を保持することは重要です。また筋力が伴っていても日常生活に困難を伴うことがありますので、周囲の環境整備も重要になります。たとえば転倒しないように見守ったり、つまずきやすいものをなくすのも大切です。空間認知能に障害をみることもあり、左側に配膳された食事を食べ残すことなどもあります。そのため、声かけをして注意を引くことも大切です。 さらに、嚥下機能が低下し誤嚥性肺炎を来すこともあります。嚥下機能についてのリハビリ、食事形態の変更などを行うことも必要とされることがあります。

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