かぞくせいちちゅうかいねつ

家族性地中海熱

最終更新日
2020年09月23日
Icon close
2020/09/23
更新しました

概要

家族性地中海熱とは、40℃近い高熱を伴う腹膜炎胸膜炎などを繰り返し発症する病気です。

血液中の好中球に存在するパイリンと呼ばれるたんぱく質に異常が生じ、炎症を引き起こすシステムが乱れることによって過剰な炎症反応が引き起こされると考えられています。このパイリンの異常は遺伝子の変異によって引き起こされるケースが多く、遺伝が関与していることが分かっています。一方で、遺伝子の変異が見られない発症者も少なくないことから、遺伝以外の要因も関与していることが示唆されています。

家族性地中海熱はまれな病気であり、日本では約300人の患者が確認されています。発作のように高熱や腹膜炎などの重篤な症状を引き起こしますが、比較的速やかに回復し、再発を繰り返すのがこの病気の特徴でもあります。発作が治まれば症状は消失するため、この病気で命を落とすケースはまれですが、適切な治療を行わなければアミロイドと呼ばれる異常なたんぱく質が全身のさまざまな臓器に沈着してダメージを与える“アミロイドーシス”を合併することが報告されています。

原因

家族性地中海熱は、好中球に存在するパイリンと呼ばれるたんぱく質に異常が生じることによって引き起こされる病気です。パイリンは、炎症を引き起こす経路にはたらきかけて炎症を抑えるため、異常が生じると炎症反応が過剰になり、感染症などの原因がないにもかかわらず高熱や腹膜炎などを繰り返すようになります。

パイリンの異常は、“MEFV遺伝子”と呼ばれる遺伝子の変異によって引き起こされると考えられています。この遺伝子の変異は特定の人種や集団に多いことが分かっており、特に地中海沿岸部に居住する人種に多いことから“地中海熱”という名称がついています。

遺伝子の変異は遺伝しやすいことが知られていますが、一方で家族性地中海熱の発症者の中にはMEFV遺伝子の変異が見られないケースもあり、MEFV遺伝子以外の何らかの要因が発症に関与していることが示唆されています。

症状

家族性地中海熱は5~15歳頃に発症することが多いとされていますが、乳児期から症状が見られることもあり発症年齢には幅があります。

発症すると、突然40℃近くの高熱と腹膜炎胸膜炎、心膜炎、関節炎精巣漿膜炎(せいそうしょうまくえん)髄膜炎など臓器を包む“膜”などに強い炎症を引き起こす病気が現れるようになります。これら発熱などの症状は12~72時間程度続くと、後遺症を残さずに自然に回復していくのがこの病気の特徴です。そして、通常は2~6週間に1回の頻度で同様の症状が発作的に現れては改善するというサイクルを繰り返します。そのため発作がある期間は高熱のほか、炎症が起きている部位によって腹痛や胸痛、関節痛、腰痛、頭痛などの症状が現れます。

また、適切な治療をしないまま発作を繰り返していくと、体のさまざまな臓器にアミロイドと呼ばれる異常なたんぱく質が蓄積するアミロイドーシスという病気を併発することがあります。

検査・診断

症状や家族の病歴などから家族性地中海熱が疑われるときは、次のような検査が行われます。

血液検査

高熱や腹膜炎などの症状を発作のように繰り返すため、症状がある期間には体に生じている炎症の状態などを把握するために血液検査が行われます。特にこの病気では、CRPや血清アミロイドAなど、炎症が生じることによって上昇する検査項目が著しく上昇するのが特徴です。

画像検査

家族性地中海熱は腹膜炎や胸膜炎関節炎などさまざまな部位に炎症を引き起こします。そのため、発作がある期間には臓器の状態などを調べるため、X線検査やCT検査などが行われることがあります。

遺伝子検査

家族性地中海熱の確定診断のために必要な検査であり、MEFV遺伝子変異の有無を調べる検査が行われます。ただし、発症者の中には遺伝子変異が見られないケースもあるため、その場合には症状や血液検査項目などから総合的な診断が下されます。

治療

家族性地中海熱を根本的に治すための治療方法は現時点では確立していません。

しかし、痛風発作の予防薬として使用されるコルヒチンを服用することで90%以上は発作を抑制することが可能であると報告されています。コルヒチンは炎症を引き起こすサイトカインという物質の産生を抑制するため、家族性地中海熱による炎症を抑えるはたらきがあると考えられています。

一方で、コルヒチンが効かない場合には、炎症作用を強く抑えるIL-1阻害薬であるカナキヌマブや適応外使用薬としてTNF阻害薬などの薬を使用することも少なくありません。

予防

家族性地中海熱の発症を予防するための方法はないのが現状です。

この病気によって命を落とすことは少ないものの、無治療のまま発作を繰り返すとアミロイドーシスを発症して命に関わる状態になるケースも報告されています。このような事態を避けるためにも、この病気を発症した場合はできるだけ早く適切な診察や治療を受けることが大切です。

「家族性地中海熱」を登録すると、新着の情報をお知らせします

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください