概要
弾性線維性仮性黄色腫とは、全身の弾性線維が進行性に変性および石灰化し、目の網膜や血管、皮膚などが障害される病気です。
弾性線維は弾力性を生み出す線維のことで、皮膚や血管など全身のいたるところに存在しています。弾性線維性仮性黄色腫では、“ABCC6”という遺伝子の変異(遺伝子構造が変化すること)によって弾性線維に石灰化などが生じ、目の網膜出血、狭心症や消化管出血などさまざまな異常をきたします。
この病気の患者数は全国に300人ほどと報告されていますが、診断に至っていない患者も想定されることから、今後さらに増加すると予想されています。
現状では弾性線維性仮性黄色腫に対する有効な治療法はなく、発症が認められた場合には、出現する症状や合併症に対する対症療法が行われます。
原因
弾性線維性仮性黄色腫は、遺伝子の変異によって発症することが分かっています。細胞膜で物質の運搬に関与するMRP6と呼ばれるタンパク質を作るABCC6遺伝子の変異によって、全身の弾性線維が切れたり石灰化が生じたりするようになります。
しかし、なぜABCC6遺伝子の変異が弾性線維の変性を引き起こすかについては、明らかになっていません。
症状
弾性線維性仮性黄色腫では、弾性線維が豊富な網膜や血管、皮膚などの組織が障害されることで、さまざまな症状が現れます。
目の症状
眼球の後方にある網膜が障害され、網膜に裂け目ができて出血をきたしたり、脆い血管(新生血管)が新しくできたりして視力障害や視野障害が現れることがあります。
血管の症状や合併症
血管が硬くなり、高血圧や消化管出血などを生じることがあります。また、血管の内側にコレステロールなどの成分からなる物質(プラーク)が沈着し、血管が狭くなったり詰まったりする動脈硬化が起こることもあります。
さらに、動脈硬化によって心臓を栄養する冠動脈が狭くなる狭心症や、冠動脈が詰まる心筋梗塞、脳の血管が詰まる脳梗塞などの合併症が起こることもあります。ほかにも、疲労感やふくらはぎの痛みによって歩行が困難になる間歇性破行がみられることがあります。
皮膚の症状
首や腋の下、ひじ、鼠径部、へその周囲の皮膚が厚くなり、溝ができます。また、黄色っぽく盛り上がった小さい発疹ができることもあります。さらに、皮膚の柔軟性がなくなって伸びた状態になったり、太いしわができたりする場合もあります。このような症状は小児の頃には目立たないものの、成長とともに顕著にみられるようになるのが一般的です。
検査・診断
弾性線維性仮性黄色腫の診断は、身体診察や皮膚生検などによって行われるのが一般的です。
身体診察では、皮膚の状態などが確認されます。また、目の症状の有無や程度を確認するため、視力や視野の検査などが行われます。さらに、病変部の皮膚の一部を採取し、顕微鏡で細胞の状態を詳しく調べる皮膚生検によって診断されます。皮膚病変が認められず診断が困難な場合には、遺伝子検査が行われる例もあります。
ほかにも、合併症の診断のために血液検査や心エコー検査、CT検査などが行われることがあります。
治療
現在のところ、弾性線維性仮性黄色腫に対する有効な治療法は確立されていません。対症療法として、出現する症状や合併症に対する治療が行われるのが一般的です。
目の症状
目に新生血管がみられる場合には、レーザー治療などが行われる場合があります。
血管の症状や合併症
動脈硬化を認める場合には薬物療法のほか、狭くなった血管を広げるためにステントの留置や血管置換術などの外科的治療が行われます。また、消化管出血に対しては内視鏡を用いた止血療法などが実施されます。
皮膚
皮膚病変に対しては、患者の希望に応じて外科的手術が行われることがあります。
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