概要
性別不合とは、身体的な(割り当てられた)性と自身で認識する性が一致しない状態のことです。性同一性障害と呼ばれてきましたが、国際疾患分類が改訂(ICD-11)されたことにより、性別不合へ変更になりました。
身体的な性が男性で自身が認識する性が女性である人をMTF(Male to Female)、身体的な性が女性で自身が認識する性が男性である人をFTM(Female to Male)と呼びますが、最近では、トランス女性、トランス男性などと呼ばれることが多くなりました。
性別不合では、体の性と心の性が一致しないために、女性に特有な胸の膨らみや、男性に特有な筋肉質な体などに嫌悪感を抱いたり、体の性とは反対の性を意識した言葉遣いや立ち振る舞いを好んだりするようになります。
性別不合の人は全国に約46,000人程度と推定されていますが、医療機関を受診していない人も含めると、より多くの人が性別不合に悩んでいると考えられています。近年では性別不合に関する社会の理解が徐々に広がり、治療や法律の整備が進められています。
原因
性別不合の原因はさまざまなものが考えられていますが、はっきりとしたことは分かっていません。
しかし、胎児期に体や脳の性分化に異常が生じることが、性別不合の発症に関わっているとされる説があります。
症状
性別不合では以下のような特徴がみられます。
自分自身の男性や女性特有の体の特徴に対して、嫌悪感を抱くようになります。たとえば、自認する性別と異なる“筋肉質な体やゴツゴツとした骨格”などの男性的な特徴や、“胸の膨らみや月経”などの女性的な特徴に対して嫌悪感を覚えるようになります。
また、自分自身の性別とは反対の性別を意識し、立ち振る舞いや言葉遣いが変化するようになります。自分とは反対の性が一般的に着用する服を好んだり、自分とは反対の性が選ぶことの多い職業や趣味などを選んだりするという例が挙げられます。
検査・診断
性別不合の診断には、“性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン”と呼ばれるガイドラインが用いられています。性別不合のケアにはさまざまな診療科が関わりますが、受診者や家族などからの聞き取りをもとに、精神科医が担当することが一般的です。
精神科医の診察では、日常生活の様子やこれまでの養育歴、性行動歴などから受診者の身体的な性と自身が認識する性の不一致について判定します。現在の自らの性に対してどれくらいの不快感や嫌悪感があるか、反対の性に対してその性になりたいという思いや、その性を意識した行動がどれくらいあるかなどが評価されます。
また、身体的な性別に関連する異常がないかどうかを評価するため、泌尿器科医や産婦人科医による染色体検査、ホルモン検査、内性器および外性器の検査を行うこともあります。
ときに、統合失調症などの精神障害や文化的社会的な理由、職業的な利得のために性別の不一致を訴えることがあるため、これらに該当しないかどうかの除外診断も行われます。
治療
性別不合の治療は、精神的なサポートを行う精神科領域の治療と、ホルモン療法や乳房切除術、性別適合手術といった身体的な治療に分けられます。
精神科領域の治療
カウンセリングを中心とした精神的なサポートや、自身の性自認について周囲にカムアウトを行うかどうかのサポート、いずれの性別でどのような生活を送ればよいのかについての検討と実践などを受けることができます。
また、これまでの経験からうつ病などの合併症を発症している場合には、性別不合の治療を始める前に合併症の治療を行うこともあります。
これらの治療を継続したのちに、本人が望む場合は身体的治療に移行します。
身体的治療
ホルモン療法では、自身が望む性のホルモン製剤を投与することで、それぞれの性ホルモンに応じた全身的な効果を得られる場合があります。
二次性徴の途中にある場合は、二次性徴抑制療法と呼ばれる治療を行った後に性ホルモンによる治療に移行するかどうかを検討します。
また、外科的な治療として乳房切除術や性別適合手術があります。性別適合手術とは主に内性器や外性器の手術のことであり、自分が持つ内外性器の除去と反対の性の外性器の形成を行うことができます。乳房切除術や性別適合手術を受けるにあたっては、本人や家族、パートナーへ手術の効果やリスクについて十分に説明し理解を得ていることや、治療に関わる医療チームがこの治療が適切であると判断することなどが必要になります。
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