概要
慢性砒素中毒とは、長期間に渡り砒素を摂取することでもたらされる健康被害のことを指します。日本においては、過去に公害病として報告されたことがありました。
慢性砒素中毒では、砒素を摂取して数年から十年以上経過してから、皮膚を始めとして体の各部位に症状が現れます。治療では、砒素の体外への排泄を促すために、キレート剤が使用されることがあります。
原因
慢性砒素中毒は、長期間に渡り砒素を摂取することを原因として発症します。砒素は自然界で見られる物質ですが、火山や鉱山の周辺において、土壌・水が砒素で汚染されたり、不法投棄によって飲料水が汚染されたりすることがあります。
このようにして、水や食物が砒素に汚染され、これらを長期間に渡り摂取することで慢性砒素中毒を発症します。体内に摂取された砒素は、その後、骨にも蓄積する関係から、人の体に対する影響は長期間に渡って継続します。
症状
慢性砒素中毒では、砒素を摂取して数年から十年以上経過してから症状が現れます。症状は、皮膚を始めとして体の各部位に現れます。
初期症状としては、皮膚の色素沈着(皮膚過色素沈着)や皮膚の盛り上がり(皮膚過角化症)などがみられます。これらの症状は、皮膚がんの前段階であることもあるため注意が必要です。その他、膀胱や肺、大腸などのがんの発生が引き起こされることもあります。
検査・診断
慢性砒素中毒が疑われる場合には、体内に蓄積した砒素の状況を確認するための検査が行われます。具体的には、尿や血液、髪の毛や爪などを用いて砒素の蓄積を評価します。
慢性砒素中毒によって生じた皮膚などの病変から、がんが発生することも懸念されるため、病理検査が行われることがあります。病理検査とは、皮膚の一部を採取して顕微鏡で観察する検査です。また、各臓器の機能を評価するために、血液検査や尿検査、レントゲン撮影などが行われることもあります。
治療
慢性砒素中毒では、砒素の体外への排泄を促すために、キレート剤が使用されることがあります。ただし、キレート剤の効果は、砒素が体内に取り込まれてから早期のほうが高く、症状が固定した場合には十分な効果が期待できないこともあります。
また、現れている症状に対する治療が適宜検討されます。たとえば、がんが発生した場合には、手術や化学療法、放射線療法などによる集学的な治療が行われます。
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