概要
成人スチル病とは、38℃を超える高熱、複数の関節炎、皮疹を主な症状とする病気です。半数は症状の改善と再発を繰り返すとされています。
子どもが発症するスチル病(全身型若年性特発性関節炎)という病気が知られていましたが、16歳以上でもスチル病とよく似た症状の病気を発症することが分かったため、“成人スチル病”と呼ばれています。
この病気の明確な発症の原因は解明されていませんが、感染症などがきっかけとなって体の中で炎症を引き起こす“サイトカイン”という物質が過剰に産生されることが主な原因と考えられています。
また、現在のところ成人スチル病の根本的な治療法はなく、症状が生じた際に炎症を抑えるためにステロイドや免疫抑制薬などを用いた薬物療法が行われます。
原因
成人スチル病は強い炎症が生じる病気です。
はっきりした発症の原因は解明されていませんが、体の防御を担う白血球やマクロファージなどの血液中の細胞が過剰にはたらくことで、炎症を引き起こす“サイトカイン”という物質が大量に産生されるため発症すると考えられています。
遺伝的な要因のほか、EBウイルス・肝炎ウイルス・インフルエンザウイルス・マイコプラズマ・クラミジアなどへの感染がきっかけで生じるという説もあります。
症状
成人スチル病は全身に炎症が生じる病気ですが、中でも高熱・関節炎・皮疹の3つが主な症状です。
発熱は日中に平熱であるものの夕方から早朝にかけて38℃以上の高熱になる“弛張熱”という特徴的なパターンであり、倦怠感や疲れやすさ、体重減少などの症状を伴うこともあります。
一方、関節炎は発熱のタイミングで手首・膝・肘・肩などに生じることが多く、一般的には複数の関節に痛みや腫れ、熱感などの症状が現れます。これらの関節炎は一時的なこともありますが長く続くこともあり、その場合は骨や関節にダメージが生じることもあります。
また、皮疹は関節炎と同様に発熱と同じタイミングで現れ、熱が下がると同時に消失するのが特徴です。皮疹はかゆみなどの症状は伴わず、薄いピンク色でサーモンピンク疹と呼ばれさまざまな部位に生じます。
そのほか、この病気では喉の痛み、リンパ節の腫れ、脾臓や肝臓の腫れなどの症状が現れることもあり、重症化すると胸膜炎や心膜炎、間質性肺炎、播種性血管内凝固症候群などの合併症が生じることも知られています。
検査・診断
成人スチル病は、関節リウマチなどほかの自己免疫疾患のように特定の自己抗体(自分自身の体を攻撃するタンパク質)がないため、症状や血液検査などによって炎症が生じる類似の病気の除外を行うことで総合的に診断されます。
この病気の診断には次のような検査が行われます。
血液検査
成人スチル病では炎症や肝機能障害などがみられるため、全身の状態を把握するために血液検査が必要になります。また、この病気では体内の鉄分貯留量を占める“フェリチン”という物質が異常に増えることが知られており、血清フェリチン値の測定が診断の手がかりになることも少なくありません。
そのほか、ほかの病気との鑑別を行うために各種の腫瘍マーカーや自己抗体などを調べる必要もあります。特に、関節リウマチや自己免疫疾患患者でみられるリウマトイド因子や抗核抗体という自己抗体(自らの体を攻撃する抗体)の存在が否定されることは、成人スチル病の診断基準の1つとなっています。
画像検査
成人スチル病では肝臓や脾臓、リンパ節の腫れなどが生じたり、合併症として胸膜炎や心膜炎、間質性肺炎などを起こしたりすることがあります。これらの有無を確認するため、X線、CTなどによる画像検査が必要です。
治療
成人スチル病は根本的な治療が解明されておらず、症状が出現した際に炎症を抑えるための対症療法が主体となります。
具体的には、炎症を抑える作用があるステロイドの投与が一般的であり、重症な場合はステロイドの大量投与や免疫抑制薬の投与が検討されます。また、2019年からはこれらの治療によって十分な効果がない場合に、炎症を起こすインターロイキン6(IL-6)というサイトカインのはたらきを抑える生物学的製剤の“トシリズマブ”が使用できるようになりました。
なお、成人スチル病は上述したようにさまざまな合併症を起こすことがあるため、合併症に対する治療が必要になることもあります。
予防
成人スチル病は明確な発症メカニズムが解明されていないため、確実な予防法はないのが現状です。しかし、この病気は重症化すると合併症を起こすこともあるため、高熱や関節炎、皮疹などの症状があるときは、できるだけ早めに医師の診察を受けましょう。
成人スチル病の患者さんとご家族の方へ
成人スチル病でよりよい治療を行うためには、普段のご自身の症状や状態、治療の希望を医師にしっかりと伝えることがとても大切です。「治療ノート」では、毎日の体温や痛み、皮疹などの症状、気になることや困りごとをスマートフォンやパソコンで簡単に記録することができます。
医師の方へ
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