へんとうしゅういのうよう

扁桃周囲膿瘍

概要

扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういのうよう)とは、のどにある“扁桃”と呼ばれるリンパ組織に感染が生じ進行することによって、扁桃周辺に(うみ)がたまってしまう状態のことです。大人に発症することが多く、好発年齢は20〜30歳代といわれています。

扁桃はウイルスや細菌が体の中に入ってくることを防ぐために存在するリンパ組織です。一般的に扁桃腺と呼ばれる“口蓋扁桃(こうがいへんとう)”のほかに、“咽頭扁桃(アデノイド)”“舌扁桃”“耳管扁桃”などさまざまな種類があります。

原因

扁桃周囲膿瘍は、“扁桃炎”の悪化によって起こります。

扁桃炎は、のどの左右に位置する口蓋扁桃にウイルスや細菌が感染し炎症が生じる病気です。扁桃炎が進行すると、炎症が口蓋扁桃周辺にも広がり“扁桃周囲炎”を生じることがあります。さらに、そこにがたまるようになると“扁桃周囲膿瘍”と呼ばれるようになります。

症状

扁桃周囲膿瘍では、のどの強い痛みや腫れ、38度を超える高熱などの症状がみられます。

扁桃周囲膿瘍では、左右差のある、のどの強い痛みが生じます。特に飲食物やつばを飲み込む際に強い痛みを感じるため、食事そのものが困難になる方もいます。痛みは耳にまで広がることもあります。

また、扁桃やその周辺にのたまった“膿瘍”が生じたり、赤く大きく腫れたりすることも特徴です。粘膜が腫れることにより、声の様子が普段と変わったり、のどの空気の通りが悪くなり息苦しさを自覚したりする方もいます。炎症が広がると首のリンパ節にも腫れを生じることがあるほか、周辺の筋肉に炎症が起こることで口が開きにくくなることもあります。また、口臭が生じたり、よだれが出やすくなったりすることもあります。

進行して、のどの空気の通り道が腫れて狭くなる(喉頭浮腫)、膿が首や胸にまでたまるようになる(深頸部膿瘍、縦隔膿瘍)と、命に関わることもあります。

検査・診断

扁桃周囲膿瘍が疑われる場合、視診やファイバースコープによってのどの観察が行われるほか、画像検査、血液検査、細菌培養検査などが検討されます。

口蓋扁桃は口を開ければ見える位置にあるため、まずは視診によって扁桃やその周囲の腫れ、赤みなどが確認されるのが一般的です。また、鼻や口からファイバースコープを挿入し、炎症の広がりなど喉の奥の状態が確認されます。検査でがたまっていそうな箇所(膿瘍)が分かれば、針を刺して膿を吸引することもあります。

膿瘍の有無や広がっている範囲を確認するため、造影剤を用いたCT検査やMRI検査などの画像検査も行われます。また、炎症の度合いを調べる目的で血液検査が実施されることもあります。

診療の過程で膿を採取することができたら、細菌培養検査が実施され、原因となる細菌の特定が行われることもあります。これによって、治療の際に用いる抗菌薬を選びやすくなる場合があります。

治療

扁桃周囲膿瘍と診断された場合、薬物療法とたまったを排出するための処置が行われることが一般的です。また、再発を繰り返す場合は、扁桃周囲膿瘍が落ち着いた段階で口蓋扁桃の摘出手術が検討されることもあります。

扁桃周囲膿瘍に対する治療

扁桃周囲膿瘍が生じた場合、原因となる病原体に合わせて抗菌薬が処方されることが一般的です。腫れが強い場合には、炎症を抑えるために併せてステロイド薬の投与も検討されます。治療薬は飲み薬として処方されたり、点滴で投与したりします。

たまった膿の部位や状況によって、針を刺して吸引を行う場合や、局所麻酔下で粘膜の一部を切開し、内部の膿を排出する処置を実施することがあります。

再発予防のための治療

扁桃周囲膿瘍の原因となる急性扁桃炎を年に4回以上繰り返す(習慣性扁桃炎)方や、扁桃周囲膿瘍を繰り返す方は口蓋扁桃を摘出する手術が検討されることもあります。この手術は“口蓋扁桃摘出術”と呼ばれます。

口蓋扁桃摘出術は全身麻酔下で行われ、開口器と呼ばれる器具で口を大きく開いたうえで、電気メスなどによって左右両方の口蓋扁桃を取り除きます。口蓋扁桃周囲にある血管を焼いたり、糸で縛ったりして止血することが一般的です。

入院期間は1週間程度で、手術時間は1時間前後といわれています。手術の合併症として、出血やのどの痛み、口内炎口角炎などを生じることがあります。

最終更新日:
2025年04月15日
Icon close
2025/04/15
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

「扁桃周囲膿瘍」を登録すると、新着の情報をお知らせします

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

実績のある医師をチェック

扁桃周囲膿瘍

Icon unfold more