概要
首には多くのリンパ節がありますが、通常は体表からリンパ節を触れることはありません。しかし、リンパ節が大きくなって1cm以上になると体表から触れるようになります。そのような状態を頸部リンパ節腫脹と呼びます。
リンパ節は、リンパ液を濾過する器官であり、リンパ液の中を流れてきた細菌やウイルス、がん細胞などを捕らえて攻撃する作用を持ちます。また、リンパ液に乗ってがんが転移しやすいのもリンパ節の特徴であり、リンパ節自体が悪性化する病気もあります。
頸部リンパ節はこのような一般的なリンパ節と同様の性質を持ち、腫大する原因はさまざまです。特に治療の必要がないこともあれば、生命に関わる重篤な病気が原因となっていることもあるため、注意が必要です。
原因
頸部リンパ節が腫大する原因としては、治療の必要がないものから速やかに治療を行わなければならないものまで多くのことが考えられます。
感染症
細菌やウイルスが入り込むことでリンパ節が反応性に大きくなります。麻疹や風疹ウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルス、結核菌などが原因となります。単なる上気道炎や虫歯でも頸部リンパ節腫脹が生じることがあります。
急激に腫大し、感染症が軽快すると徐々に小さくなるのが特徴です。腫大を繰り返すとリンパ節内が瘢痕化して元に戻らないこともありますが、大きな問題はありません。
がんの転移
頸部リンパ節はがんの転移が起こりやすい場所ですが、頸部リンパ節腫脹において、がんの転移が原因となっている場合は高くありません。
リンパ節のがん
頸部リンパ節自体ががん化したものです。悪性リンパ腫やリンパ管腫などが挙げられます。
川崎病
乳幼児に好発する病気で、発症メカニズムは解明されていません。高頻度で片側性の頸部リンパ節主張を来たすのが特徴です。
症状
頸部リンパ節腫脹の症状は原因によって大きく異なり、丁寧な問診が診断の鍵となります。
感染症
リンパ節が急激に大きくなり、重症の場合にはリンパ節自体が発赤して熱感、痛みを伴います。リンパ節内や周囲に膿の塊を形成して、膿が出てくることもあります。全身症状としては発熱や咽頭痛、頭痛などが現れます。
結核や梅毒などの長い経過を辿る感染症では、リンパ節は徐々に大きくなり、大部分は痛みがありません。
がんの転移、リンパ節のがん
リンパ節は徐々に腫大し、痛みを伴いません。正常なリンパ節は触れると可動性がありますが、この場合には可動性が失われるのが大きな特徴です。全身症状としては、がんに伴う体重減少や痛みの他に、原発巣に特有の症状が現れることもあります。
川崎病
頸部リンパ節腫脹の他にも高熱や目の充血、イチゴ舌、全身の発疹などが現れます。適切な治療を行わないと冠動脈瘤や腎不全などの重篤な合併症を生じることがあります。
検査・診断
頸部リンパ節腫大では、さまざまな検査を行うことで原因を特定します。
画像検査
頸部の造影CT検査や超音波検査などの画像検査では頸部リンパ節腫大の程度や位置などを正確に評価することが可能です。また、他臓器のがんや他の部位のリンパ節腫大を調べるために全身CT検査が行われることが一般的です。
血液検査
血液検査では、炎症反応やIL-2レセプターなどの腫瘍マーカーの評価を行います。また、場合によっては甲状腺ホルモンなどを調べて、内分泌疾患がないかを確認することもあります。
生検
リンパ節に針を刺して組織の一部を取り出し、病理検査を行います。患者さんの体への負担が大きい検査ですが、リンパ節腫大の正確な原因が特定できます。
すべての例に行うわけではなく、血液検査や画像検査などから悪性リンパ腫や結核が疑われるときに行います。特に悪性リンパ腫では、病型を定め、治療方針を決定するうえでも大切な検査です。
治療
感染症によるもの
治療を必要とせず、自然に治ることがほとんどです。しかし、リンパ節自体に炎症が及んで、発熱や痛みを伴う場合には、抗生物質や鎮痛薬が投与されることもあります。
がんの転移やリンパ節のがんによるもの
がんの治療を行います。がんの転移では、原因となるがんの手術や抗がん剤治療、放射線治療を行います。また、悪性リンパ腫をはじめとしたリンパ節自体のがんの場合は、手術によって取り除くことは一般的ではなく、多くは抗がん剤治療を行います。
川崎病によるもの
ガンマグロブリン大量療法とアスピリンの投与が行われます。しかし、治療効果には個人差があり、適切な治療を行っても大きな冠動脈瘤ができてしまうことがあり、治療後も定期的な心エコーなどの検査が必要となります。
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