概要
持続勃起症とは、「性的刺激・性的興奮と無関係である勃起が4時間を超えて持続している状態」と定義されます。おもに(1)虚血性持続勃起症と(2)非虚血性持続勃起症に分類されます。前者はペニスの海綿体と呼ばれるスポンジ状の組織から静脈血の流出が障害され、低酸素状態に陥った状態です。時間とともに組織障害が進行するため、緊急処置が必要となります。後者は海綿体の内部の酸素化が保たれているため緊急処置を必要としないことが多いです。
原因
虚血性持続勃起症
日本では、抗精神病薬やα遮断薬、過量の勃起改善薬(タダラフィル)の内服や、アルプロスタジルの海綿体注射など、白血病、悪性リンパ腫、悪性腫瘍の海綿体への転移などが報告されています。海外では、鎌状赤血球症とよばれる、赤血球の変形によって血液の流れが悪くなってしまうことによるものも多く見られます。
非虚血性持続勃起症
おもに外傷、とくに股間(会陰部)の打撲によって陰茎海綿体の動脈が破綻し海綿体内に動脈血が流入することによって起こります。日本では、虚血性持続勃起症より多いとされています。
症状
虚血性持続勃起症
完全勃起の状態であり、時間経過とともに強くなる痛みを伴います。4時間を超えて持続した場合はすみやかに受診する必要性があり、6時間を過ぎると少しずつ組織障害が進行するため、勃起障害(ED)に陥ってしまう可能性があります。
非虚血性持続勃起症
勃起は不完全な状態で、陰茎の硬さも完全ではなく、痛みを伴いません。
検査・診断
虚血性持続勃起症
陰茎海綿体から採血を行い、血液中に酸素や二酸化炭素などのガスが溶けている量(分圧:1気圧あたりに気体が溶けている量)の測定(血液ガス分析)を行います。虚血性持続勃起症では酸素分圧が低く、二酸化炭素分圧が高い、静脈血の所見がみられます。また、カラードプラーエコーでは海綿体の動脈の拍動がなく、海綿体内の血流を認めません。
非虚血性持続勃起症
股間(会陰部)を圧迫することで勃起の消失がみられる(compression sign)現象があります。また、陰茎海綿体内の血液ガス分析では、虚血性持続勃起症と異なり、酸素分圧が高く、二酸化炭素分圧が低いという動脈血の所見がみられます。カラードプラーエコーでは、損傷部での血流の乱流が確認できます。
損傷血管の確認のための動脈の血管造影検査は推奨されず、診断確定後に損傷血管をふさぐ(塞栓する)ときに同時に行われます。また、CTアンギオグラフィー(血管撮影)も損傷血管の確認のため有効な検査のひとつです。
治療
虚血性持続勃起症
診断が確定したら、すみやかな治療を必要とします。
- 海綿体に注射針を刺し、血液を抜きます。改善なければ冷たい生理食塩水で海綿体内を洗浄します。
- 血管を収縮させる薬剤(交感神経作動薬)を海綿体内に少しずつ投与します。
時間が経過すると、海綿体内の血液が固まってしまい、上2つの方法では治療困難となるため、シャント手術とよばれる、陰茎海綿体の血液を亀頭に逃がす方法が必要になります。
よく行われるのは亀頭から陰茎海綿体に針を刺すWinter法や、亀頭に局所麻酔をして、亀頭からメスを陰茎海綿体に向かって貫通させ、90度回転させて引き抜いて血の塊を絞り出してから亀頭を縫う、Tシャント法などの経皮的遠位シャント法と呼ばれる方法です。
非虚血性持続勃起症
虚血性持続勃起症と異なり、陰茎海綿体内の血流が保たれているため緊急での治療を必要としません。おもに損傷部位の圧迫をしたり、冷やしたり、止血剤の内服などで経過をみます。経過をみる期間は特に決まっていませんが、改善がみられない場合は血管造影検査を行い、損傷血管の塞栓をおこないます。
血管をふさぐ物質として、自分の血液の塊(自己血餅)やゼラチンスポンジなどの一時塞栓物質と、コイルやポリビニルアルコールなどの永久塞栓物質があります。
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