概要
横隔膜麻痺とは、呼吸運動をする際に重要な筋肉である横隔膜が麻痺を起こした状態を指します。横隔膜は左右両側に2つ存在しており、片方の横隔膜のみが麻痺することもあれば、両側の横隔膜が麻痺してしまうこともあります。
麻痺が片方である場合、自覚症状がなく無症状のまま経過することがあります。麻痺が両側である場合には、呼吸障害が現れます。治療としては、呼吸補助と、原因に対する治療が行われます。
原因
横隔膜麻痺の原因はひとつではなく、多種多様なものが原因となりうることが知られています。たとえば、以下のような例ががあります。
・交通事故などによる頸髄損傷
・神経疾患:多発性硬化症など
・ミオパチー:筋肉自体に問題がある病気の総称
・横隔神経障害:手術などで傷つけてしまうことや、大動脈瘤などが原因となる
・ウイルス感染症
・肺がんなどの悪性腫瘍の浸潤
などが挙げられます。
症状
横隔膜麻痺では、片側性なのか両側性なのかによって症状が異なります。
片側の横隔膜麻痺
自覚症状がなく無症状のまま経過することがあります。この場合、健康診断など別の理由で胸部レントゲン写真を撮影された際、偶発的に横隔膜麻痺を指摘されます。
両側の横隔膜麻痺
呼吸障害が現れます。横隔膜は息を吸ったり吐いたりする呼吸運動に際してとても重要な筋肉であるため、横隔膜が麻痺をすることで正常の呼吸活動が阻害されてしまいます。そのため、息苦しくなり、程度が強い場合には自分自身の意志で呼吸することができなくなってしまうこともあります。
検査・診断
横隔膜麻痺は、胸部レントゲン写真をきっかけに疑われることがあります。レントゲン写真上、息を吸ったり吐いたりすることで横隔膜の位置が変化するのが正常ですが、麻痺を起こした横隔膜ではこうした位置の変化が生じなくなります。
横隔膜麻痺では、原因となる病気を検索するための検査を行うことも大切です。なかでもがんなどの有無を確認することは大切です。たとえば、肺がんが疑われる際には、胸部を含めたCT検査、気管支鏡検査、疑わしい病変部位から組織を採取して顕微鏡で検査をする病理検査などが行われます。実際にどのような検査を行うかは、病歴や身体所見、随伴する症状などから選択します。
治療
横隔膜麻痺の治療は、呼吸補助と、原因に対する治療に大きく分かれます。
呼吸サポート
片側の横隔膜麻痺では呼吸障害を来さないこともあり、呼吸に関する治療は必要とされないこともあります。しかし、両側の場合には特に呼吸障害が生じる可能性が高まるため、必要に応じて、非侵襲的陽圧呼吸療法、挿管による人工呼吸管理などが行われます。その他、横隔膜ペーシングと呼ばれる電気刺激による呼吸補助が行われることもあります。
原因に対する治療
たとえば、肺がんが原因の場合には、手術療法、化学療法、放射線療法などが、胸部大動脈瘤が原因の場合には手術などが検討されます。
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