とうこつえんいたんこっせつ

橈骨遠位端骨折

同義語
コレス骨折,スミス骨折,橈骨遠位部骨折
最終更新日:
2024年10月17日
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2024/10/17
更新しました
2018/09/11
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概要

橈骨遠位端骨折とは、前腕を構成する骨の1つである“橈骨”が手首の付近(遠位端)で折れる骨折のことです。この骨折は多くの場合、転倒時に手をついたことで発生します。特に骨粗鬆症(こつそしょうしょう)という“骨がもろくなる病気”を患う高齢女性に生じやすく、骨折の中でも頻度が高いものの1つとして知られています。

症状は、骨折による痛みや腫れです。骨の位置がずれて変形が激しい場合には、周辺を走行する神経にダメージが加わり、手や指のしびれや動きにくさなどの症状を引き起こすこともあります。

治療としては、ギプスによる固定、手で骨を適切な位置に戻す“徒手整復(としゅせいふく)”などを行う保存的治療や、手術によって骨を固定する治療が行われます。

原因

橈骨遠位端骨折の主な原因は、転倒や転落などの外力によるものです。前腕は尺骨と橈骨という2本の骨で構成されており、親指側にある太い骨を橈骨と呼びます。この橈骨は通常、強くて硬い構造をしていますが、特定の状況下では骨折を起こすことがあります。

高齢者、特に閉経後の女性では、骨粗鬆症により骨がもろくなっていることがあり、軽い転倒で手をついただけでも橈骨の手首付近に骨折を生じることがあります。このような場合、日常生活での些細な事故でも骨折のリスクが高まります。

一方、若年層でも、高所からの転落、自転車やバイクの事故、交通事故など、強い外力が加わった場合には、橈骨遠位端骨折を起こす可能性があります。これらのケースでは、骨折部位の大きな転位を伴うような重症例も少なくありません。転位とは、骨折した骨片がずれて正常な位置からはずれることを指し、転位が大きいほど治療が難しくなります。

子どもの場合は、走って転んだりスポーツ中に転倒したりして、手をついた際に起こることが多いといわれています。

症状

橈骨遠位端骨折が発生すると、骨折部位に強い痛みが生じ、短時間のうちに腫れや発赤が現れます。手首の関節が正常に機能しなくなるため、手関節の動きが制限され、力を入れることが困難になります。

骨折の種類によっては、手首の形が変わることがあります。最も一般的な「コレス骨折」は、手のひらをついて転んだときに起こりやすく、骨が手の甲側にずれるため、手を横から見るとフォークを伏せたような形になります。「スミス骨折」は逆に、手の甲をついて転んだときに起こりやすく、骨が手のひら側にずれます。

場合によっては、骨折や腫れによって手首付近を走行する神経が圧迫されることがあります。特に正中神経が影響を受けて手根管症候群を発症すると、親指から薬指にかけての感覚低下やしびれ、さらには親指の運動障害が生じることがあります。

合併症

まれではありますが、“複合性局所疼痛症候群(ふくごうせいきょくしょとうつうしょうこうぐん)(CRPS)”という障害が続発することがあります。CRPSは通常の骨折痛とは異なり、非常に激しい痛みが特徴で、関節の硬直や骨の萎縮などの後遺症を伴う可能性があります。この状態は治療が難しく、長期的な管理が必要となることもあります。

検査・診断

橈骨遠位端骨折の診断は、主に症状と画像検査に基づいて行われます。転倒後の手首の変形、痛みの部位や強さ、腫れなどから骨折の可能性が高いことは外見からも推測できることが多いですが、正確な診断のためには病院での画像検査が必要です。

病院では、まずX線検査が実施されます。これはもっとも一般的な検査方法で、骨折の有無や骨の転位を明確に観察できます。しかし、複雑な骨折や関節内骨折の場合、X線検査だけでは不十分なこともあります。そのような場合、CT検査が追加で行われ、微細な骨折や関節面の状態を調べます。

治療

橈骨遠位端骨折の治療は、骨折の状態や患者の状況に応じて選択されます。転位が大きい場合、適切な治療を行わないと手首の変形や運動障害が残る可能性があるため、まず転位の修正を行います。治療方法は大きく保存的治療と手術治療に分けられます。

保存的治療

保存的治療は、骨折の転位が小さい場合や、手術のリスクが高い患者に対して選択されます。この方法では、麻酔下で医師が手で骨を元の位置に戻す“徒手的整復”を行います。整復後、数週間ギプスで固定し、骨の癒合を促します。固定期間は通常4〜6週間程度ですが、患者の年齢や骨折の状態によって異なります。また、痛みや腫れを軽減するために、消炎鎮痛薬の内服などの対症療法も併せて行われます。

手術治療

手術治療は、転位が大きい骨折や、関節内骨折、骨片が多数ある場合など、保存的治療では十分な整復や位置の保持が難しい場合に選択されます。

主な手術方法には以下のようなものがあります。

鋼線固定

X線を見ながら細い金属の針(鋼線)を刺して骨を固定する方法です。比較的患者への負担が小さい方法ですが、固定力はやや弱めです。

創外固定

骨に直接ピンを刺し、それを体の外側にある器具で固定する方法です。重度の骨折の場合に用いられることがあります。

プレート固定

多く用いられる方法で、骨折部にプレートを当て、そこにネジを固定します。このプレートは骨とネジがしっかりとかみ合う構造になっており、強固な固定が可能です。また、早期からのリハビリテーションが可能になるため、手首の機能回復に有利とされています。

手術後は、状態に応じて早期からのリハビリテーションが開始されます。これにより、関節の拘縮*を防ぎ、手首の機能回復を促進します。

*拘縮:関節や筋肉が硬くなり、動きが制限される状態のこと。けがや手術後など長期間動かさない場合に起こりやすい。

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