治療
現在のところ、筋萎縮性側索硬化症を根本的に治す薬はなく、筋萎縮性側索硬化症の進行を遅らせる効果が期待できる薬が投与されます。これまでは、リルゾール(内服薬)やエダラボン(点滴薬)という薬が使用されており、2023年3月にはエダラボンの内服薬が保険適用となりました。エダラボンは、筋萎縮性側索硬化症の原因の1つと考えられる酸化ストレスを減らす作用があるといわれていますが、点滴のために通院や入院が必要で患者の負担が大きいことが課題となっていました。エダラボンの内服薬の保険適用によって治療の選択肢が増え、患者の負担が減ると期待されています。
そのほか、体が思うように動かないことや、病気に対する不安などによって睡眠障害が伴う場合には睡眠薬や抗不安薬が処方されます。
筋肉や関節の痛みがある場合には必要に応じてリハビリテーションが行われるほか、QOL(生活の質)を維持するために、構音障害に対しては新たなコミュニケーション手段の習得、嚥下障害に対しては飲み込みやすい食事の工夫など、家族の協力も必要になります。
嚥下障害が進行した場合には、胃に管を通して栄養を直接注入する(胃ろう)、鼻から管を入れて流動食を補給する(経鼻胃管)、点滴で栄養補給をするなどの処置が検討されます。
呼吸不全が進めば、人工呼吸器の導入を検討します。人工呼吸器には、鼻マスクによる非侵襲的陽圧換気(NPPV)と気管切開下陽圧換気(TPPV)があります。換気効率はTPPVが優れますが、患者への負担は大きく(侵襲的)、現状では導入すると取り外しは困難です。
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