インタビュー

網膜剥離の症状

網膜剥離の症状
大路 正人 先生

滋賀医科大学眼科学講座 教授

大路 正人 先生

この記事の最終更新は2016年04月15日です。

網膜剥離にはその前兆となる症状があります。代表的なものは「飛蚊症」「光視症」です。進行すると視野欠損や視力低下が生じ、放置すると失明にもつながります。それぞれの症状について網膜硝子体疾患のスペシャリストである滋賀医科大学眼科学講座教授の大路正人先生に解説をしていただきました。

目の中に繊維のようなごみや膜状の濁りがゆらゆら浮かんで見える「飛蚊症」の症状が現れることがあります。眼球の動きについてまわり、まるで蚊が飛んでいるように見えることからこのように呼ばれます。孔ができたときに生じた血液や、網膜色素上皮細胞の一部が硝子体の中に散ってしまうことでそのように見えます。今までなかったごみや濁りが突然現れたり、あるいはもともと出ていたのがある日突然たくさん現れたりした時には要注意です。

チカチカとした光の点滅を感じたり、暗い部屋で突然稲妻のような光が見える症状が出る「光視症」も、網膜裂孔が生じたときによく現れる症状です。硝子体が網膜を引っ張る際の刺激が、視覚信号(光)として認識されるためです。光視症が出たからといって網膜剥離である可能性は多くはありませんが、飛蚊症に加えて光視症を感じた場合、網膜剥離に進行する可能性がありますので、注意が必要です。

剥離した網膜は感度が低下します。そのため剥離部分に対応する視野が見えなくなる「視野欠損」という症状が現れます。多くは網膜の上のほうの側からはがれてくることが多く、その場合は下のほうの視野が欠けてきます。一方下の側にある網膜が剥離すると上方の視野が欠けます。周辺部から欠損が起こるため気付かないこともありますが、剥離が広がってくると欠損が真ん中に及んできます。

視野欠損が真ん中の「黄斑(おうはん)」にまで及んでくると一気に視力が低下します。というのも、網膜の中央にある黄斑はほかの部分の網膜に比べて視機能が格段によく、物を見る要の部分だからです。このため剥離が黄斑にまで広がると視力が急に低下し、さらにひどくなると失明してしまいます。物がゆがんで見える「変視症(へんししょう〉」を自覚することもあります。

 中高年者に多い「裂孔原性網膜剥離」の場合、硝子体の液化が進行しているために比較的短い間に剥離が進行します。飛蚊症の自覚も強く、視野欠損も急速に進行するのが特徴です。若い人に多い、格子状網膜変性でできた円孔が原因の網膜剥離は、ゼリー状の硝子体がしっかり残っているため網膜がはがれにくく、多くの場合に進行はゆっくりです。網膜剥離の発症頻度は年間で1万人に1人程度です。

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