概要
耳せつとは、外耳道にできるおできのことであり、急性化膿性限局性外耳炎(限局性外耳炎)とも呼ばれます。外耳道は耳の穴から鼓膜までの音の通り道のことですが、外耳道の外側3分の1の部分には皮脂腺や毛包が多く存在し、細菌や真菌感染を起こしやすい部位です。
耳せつは、主にこの外耳道の外側3分の1の部位に何らかの感染が生じ、膿が溜まった状態になったものです。
症状の程度はさまざまですが、悪化すると大きな膿瘍を形成したり、周辺のリンパ節に炎症が波及して、頚部リンパ節炎を生じたりすることもあるため注意が必要です。
特に、糖尿病などの免疫力が低下している方では重症化する傾向があります。
原因
耳せつは耳かきなどによる外耳道内の物理的な外傷や、整髪剤や水などによって外耳道の皮膚に刺激が加わり、そこに細菌や真菌が感染することで生じます。
主な原因菌は黄色ブドウ球菌ですが、緑膿菌や連鎖球菌、アスペルギルスなどの真菌類が原因になることもあります。
外耳道は皮脂腺が発達しており湿潤な環境であるうえに、耳垢が溜まりやすく、細菌が繁殖しやすい環境であるといえます。そのため、細菌感染が生じると炎症が生じて、膿を溜めやすい性質があるのです。
症状
一般的には、耳の内部の痛みや熱感、腫れが生じます。痛みは耳せつができる部位によって異なり、より鼓膜に近いほうにできると痛みが強くなります。また、痛みが放散して頭痛や歯痛を感じることもあります。
腫れがひどくなると、外耳道全体を塞ぐことがあり、鼓膜への音の伝達が妨げられるため、音の聞こえにくさや自分の声がこもって聞こえるように感じることもあります。
また、耳周囲の耳介リンパ節や頚部リンパ節に炎症がおよんでリンパ節炎を生じることがあり、リンパ節の腫れや発赤ばかりでなく発熱や倦怠感などの全身症状を伴うこともあります。
耳せつは適切な治療を行えば、通常一週間程度で治ります。しかし、重度な糖尿病やステロイド、抗がん剤などの薬物の影響で免疫力が大幅に低下している場合には、重症化して膿瘍を形成したり、外耳道の近くにある頭蓋骨に炎症が及んで骨破壊や骨髄炎を生じたりすることも考えられます。
しかし、衛生環境や医療資源が整った日本ではそこまで重症化する耳せつは非常にまれであるといえます。
検査・診断
耳せつの診断には、外耳道内に発赤や腫れがあるかどうかの視診が重要になります。
多くの場合で、耳鏡などの特殊な医療器具を使用しなくても鏡で観察することが可能です。押して痛みがある腫れの多くは耳せつと診断されます。
治りにくい耳せつの場合には、使用する抗生剤を決定するために、外耳道の分泌物を採取して培養検査を行うことがあります。
炎症がリンパ節や周辺の骨組織へ波及していることが考えられたり、膿瘍を形成していたりする場合には、レントゲン検査やCT検査などの画像検査が行われ、周辺臓器への波及の評価が行われます。
治療
耳せつは溜まった膿が排出されれば自然と治ることもあります。しかし、放置しておくと炎症が悪化することもあるので注意が必要です。
一般的には、抗生剤の内服や抗生剤入りの塗り薬、点耳薬によって治療が行われます。また、外耳道内を清潔に保つために洗浄が行われ、膿の排出を促すために温熱パッドの使用や綿球などによる外耳道の圧迫が行われることもあります。
痛みが強い場合には消炎鎮痛剤の内服が検討されます。また、腫れが大きい場合や膿瘍を形成している場合には、耳せつを切開して膿を人工的に排出させる方法が取られることもあり、重症度によって治療方法は大きく異なります。
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