概要
股部白癬は、白癬菌(皮膚糸状菌)が外陰部から内股に感染して起こる皮膚疾患で、“いんきんたむし”と呼ばれることもあります。
白癬菌は家族内などで人から人に感染することが多く、足に足白癬を起こすことがよく知られており、足など体のほかの部位に由来する白癬菌が股に付着、感染することで股部白癬が発症します。
股部白癬を発症すると感染部位に環状の発疹(輪を描くように周囲に広がる発疹)ができ、強いかゆみが生じます。かきすぎて痛みを伴う場合もあります。多くは夏場に発症します。
股部白癬は男女どちらにもみられる病気ですが、陰嚢と大腿部の間に湿気がこもりやすい男性に高頻度でみられます。
原因
股部白癬の原因は、白癬菌(皮膚糸状菌)のうち、主にトリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)という菌によって起こります。
白癬菌はケラチンと呼ばれる皮膚の最外層の構成タンパク質を栄養にして発育できる真菌で、皮膚や毛、爪にも感染します。股部白癬は、こうした白癬菌が鼠径部やその周辺に感染して発症したものです。
白癬は家庭内での感染のほか、銭湯やサウナなどの浴場の床や白癬菌に感染したペットなどの動物からうつることがありますが、股部白癬は外部から直接接触感染するのでなく、足白癬、爪白癬などほかの部位に由来する白癬菌が外陰部周辺に付着、感染することで発症すると考えられています。
以前は衣類の共有などでうつしあうことが想定されていましたが、最近は清潔志向が進み、頻度は少なくなってきました。股部白癬は男女どちらにも生じますが、陰嚢と大腿部の間に湿気がこもりやすい男性でより多く発症します。また、気温が高い地域・季節や、通気性の悪い服装、肥満の人は股部白癬のリスクが高くなります。
症状
股部白癬の主な症状はかゆみを伴う発疹です。かゆみは強いことが多く、かきすぎて表面をかき破ってしまい、痛みを伴うことがあります。
発疹は赤く少し盛り上がってだんだん環状に広がってきます。この環状に赤くなった部分に角質がはがれたもの(鱗屑)が付いてきます。環状の発疹が広がると中心部は炎症が治まりますが、皮膚が少し硬くなり、色素沈着がみられ、うす黒くなります。鼠径部、下腹部、臀部、太ももの内側へと広がる場合がありますが、陰嚢はあまり侵されることはありません。陰嚢がかゆい場合の多くは陰嚢湿疹で、下に述べる検査法で菌も見当たりません。
治療
股部白癬の治療は、抗真菌薬の外用剤(塗り薬)による治療が中心となります。主に用いられている外用剤にはクリーム剤や軟膏剤があります。外用薬は即効性があり、通常は1週間程度の外用でもかゆみ、発赤とも改善します。完治には2週間の外用が望まれます。
一方で、内服薬が使われることもあります。たとえば高齢者で患者自身が外用剤を塗布することが難しそうな場合、病巣が広い場合、あるいは爪白癬や足白癬があり、再発の防止もかねてほかの部位の白癬も治療する場合などです。
予防
股部白癬などの白癬は、白癬菌が皮膚に長時間付着することで感染します。皮膚に一時的に付着しても乾燥して白癬菌が剥がれ落ちると感染を起こさないため、皮膚の清潔を保ち、風通しをよくしておくことが大切です。
特に公衆浴場を使用した場合や、家庭内に白癬患者がいる場合は白癬菌に触れるリスクが高くなるため、清潔と乾燥を心がけるようにしましょう。治療中は患部の清潔を保ち、風通しをよくして湿気がたまらないようにすることが大切です。
そのほか、白癬菌が付着する可能性があるタオルなどの共用は避け、使用ごとに洗濯するようにしましょう。股部白癬は一般に治療がはじまるとかゆみも比較的速やかに改善しますが、足白癬、爪白癬などほかの部位の白癬があると再発が懸念されます。そのため医療機関を受診し、足白癬、爪白癬の治療をしておくことが肝要です。
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