はいきゅうちゅうしょう

肺吸虫症

別名
肺ジストマ症
最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

肺吸虫症とは、肺に寄生する虫によって引き起こされる病気です。肺ジストマ症と呼称される場合もあります。

寄生虫にはいくつものタイプが知られていますが、日本では宮崎肺吸虫とウェステルマン肺吸虫が多いです。国内における発生頻度は、年間50例ほどであると推定されています。原因となる寄生虫は食用のサワガニやイノシシ肉に存在しており、調理不十分のまま摂取すると感染することがあります。

肺吸虫症を発症すると、咳や血痰、胸痛などの症状が現れます。画像検査上腫瘤(しゅりゅう)性病変をみることも多く、悪性疾患との鑑別を行うことも求められます。
治療方法としては、寄生虫に効果のあるプラジカンテルなどが使用されます。肺吸虫症は感染経路が特徴的であるため、予防のためには調理状況の把握できる食物を摂取することが重要です。

原因

肺吸虫は、サワガニやイノシシの筋肉などに寄生しており、これらを調理不十分な状態で経口摂取することで、人に感染します。

人の体内に入り込んだ寄生虫は、消化管の中で成長します。その後、消化管の壁を突き破って腹腔内へと入り込み、横隔膜を介して肺へ到達します。肺に入り込んだ寄生虫は、さらに成熟し感染症状を引き起こします。また、肺以外に脳や筋肉にも侵入します。

症状

肺吸虫症では、肺吸虫の寄生先臓器に関連した症状を引き起こします。

その名前から推察される通り肺に寄生することが多いため、慢性的な咳や血痰、胸痛、呼吸困難、発熱といった肺炎症状を呈します。胸水の貯留や、気胸をみることもあります。こうした合併症があると、呼吸困難や胸痛は増強されます。肺吸虫症に関連した肺症状は、肺結核にも類似しています。

肺吸虫は肺以外の組織にも侵入しうることが知られており、ターゲットとなった臓器に関連した症状が引き起こされます。特に脳に侵入した際は重篤になりやすく、頭痛や視力障害、けいれんなどの合併症を引き起こすことになります。

検査・診断

肺吸虫症の診断は、問診にて原因食物の摂取状況を確認することから行われます。具体的には、調理不十分な状態でのサワガニやモズクガニ、イノシシ、シカ肉の摂取などがないかどうかを確認します。
肺吸虫症は寄生虫により引き起こされる病気であるため、血液検査を行うと白血球のなかでも好酸球と呼ばれる細胞の増加が確認されることがあり、肺吸虫症を疑う一つのきっかけになります。

肺吸虫症は呼吸器症状を伴う疾患であるため、胸部単純レントゲン写真やCT検査が行われます。胸水や気胸に加えて、腫瘤性病変が確認されることもあります。
臨床症状が慢性的に持続している場合には結核に類似した症状を呈します。そのため、結核を除外するための検査(血液検査や喀痰検査)も重要です。また腫瘤性病変は悪性腫瘍との鑑別が必要となり、状況に応じて生検検査も考慮されます。

最終診断は、便や痰等を用いて寄生虫の卵や虫体を確認することからなされます。
また、人の体内で免疫反応が生じて、寄生虫に対する抗体が産生されることから、これらの検出を通して診断の根拠とすることもあります。
 

治療

肺吸虫症では、プラジカンテルなどの寄生虫に効果を示す薬剤にて治療を行います。肺結核の治療を受けているにもかかわらず効果を示さない場合に、実は肺吸虫症が原因となって呼吸器症状が引き起こされているといったこともあります。この場合でも寄生虫に対する治療薬を使用することで、治癒を期待できます。

サワガニ、イノシシ肉など、および虫卵に汚染された土壌で育てられた野菜などの摂食で感染するため、寄生虫の感染性がなくなる形で食材を調理することが、感染予防の観点からは重要となります。

具体的には、冷凍処理(-27℃、24時間以上)や加熱処理(75℃、1分)などが推奨されています。また、調理状況が不明の場合には、そもそも食材摂取をしないことも感染予防には重要です。
 

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