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肺胞蛋白症

最終更新日
2017年04月25日
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2017/04/25
掲載しました。

概要

肺胞蛋白症とは、肺の中にサーファクタント由来物質が過剰に蓄積してしまっている病気です。サーファクタントとは正常な肺にもある物質ですが、サーファクタントを適正に処理できなくなる結果、肺胞蛋白症が発症します。

肺胞蛋白症は、発症要因に応じていくつかに分類されていますが、なかでも先天性肺胞蛋白症と自己免疫性肺胞蛋白症と呼ばれるものは難病指定を受けています。自己免疫性肺胞蛋白症は、肺胞蛋白症全体の9割を占めるほどの疾患であり、50歳代を発症ピークとすることが報告されています。

原因

呼吸に連動して、肺は膨らんだりしぼんだりします。完全にしぼんでしまうと正常な呼吸活動ができなくなってしまうため、肺が完全にしぼんでしまわないような仕組みが肺には備わっています。その仕組みとは「サーファクタント」と呼ばれる界面活性物質です。この界面活性物質が存在することで肺の形態は保たれています。サーファクタントは、肺に存在するⅡ型肺胞上皮細胞と呼ばれる細胞によって分泌され、肺胞マクロファージと呼ばれる細胞によって肺の中で適切な量になるように調整されています。この調整過程には、GM-CSFと呼ばれる物質の関与も重要です。

肺胞蛋白症は、サーファクタントの量がうまく調整できなくなってしまい、肺の中にサーファクタント由来物質が貯留してしまうことから発症します。サーファクタントの量が調整できなくなる原因に、調整過程に関与するGM-CSFに対しての抗体が産生されてしまうことが挙げられます。

症状

肺胞蛋白症に罹ると、うまく酸素が身体に取り込まれなくなるので呼吸困難を呈することがあります。そのほか、咳や痰、発熱、体重減少などの症状がみられることもあります。ただし障害の程度によっては、無症状で経過することもあります。この場合、健康診断やその他の理由で撮影された胸部単純レントゲン写真、胸部CT写真をきっかけにみつかることがあります。

病気の発症時期は、病気のタイプによって異なります。先天性のものでは生後早い段階で呼吸障害がみられることがありますが、自己免疫性肺胞蛋白症では5成人以降に症状が現れ、50歳代がピークになります。症状の程度は人によってさまざまであり、症状が自然に改善することも少なくありません。ただし、なかには日常生活に大きく支障をきたすほどの呼吸障害を呈する方もいます。また、感染症の併発などをきっかけとして亡くなってしまうケースもあります。

検査・診断

肺胞蛋白症を診断するためには、胸部単純レントゲン写真やCTといった画像検査で特徴的な変化を確認することが大切です。また、血液検査をおこなうこともあります。肺のなかにサーファクタント由来物質が蓄積していることを確認するために、実際に肺の組織を採取して顕微鏡で観察することや気管支鏡検査を通して得られた検体を用いて、特徴的な変化を確認することもあります。先天性肺胞蛋白症では、原因となりうる遺伝子の異常を検索するための遺伝子検査も行われます

治療

肺胞蛋白症は、症状が悪化することなく経過することもあります。また、自然に改善することもあります。そのため、症状が強くない場合には、去痰薬などの症状に応じた対症療法薬を内服しつつ注意深く経過観察をします。

肺胞蛋白症による症状が強く現れている場合は、肺の中に多くのサーファクタン由来物質が蓄積している状態です。これを取り除くために、全身麻酔下で肺の中を洗浄する方法が選択されます。先天性肺胞蛋白症に対しては、異常遺伝子によっては骨髄移植が選択されることもあります。肺胞蛋白症で酸素がうまく取り込めない場合には、在宅酸素療法が選択されることもあります。

また、感染症をきっかけとして呼吸状態が悪化することがあるため、手洗い・うがいを行うことが大切です。そのほかにも、インフルエンザワクチン肺炎球菌ワクチンの接種、禁煙なども重要な治療方法の一環です。

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