概要
胃肉腫とは、胃にできる悪性腫瘍(がん)のことです。
胃の壁はいくつかの層があり、がんは、一番内側の層である粘膜からできる上皮性がんと、粘膜以外の細胞からできる非上皮性がんに分けられます。胃肉腫は後者にあたり、胃にできる悪性腫瘍のうち、約5%程度の非常に珍しいがんです。40~60代の方に発生しやすく、男性にやや多いという傾向があります。
胃肉腫には、さまざまな種類があります。もっとも多いのは、胃のリンパ組織ががん化する悪性リンパ腫で、そのほかは粘膜の下の間葉系細胞ががん化するもので、代表的なものは平滑筋肉腫です。
それぞれの特徴は次の通りです。
悪性リンパ腫
潰瘍やびらん(ただれること)などを生じやすく、多発性のことが多いです。胃がんとの区別がつきにくいことも多々あり、詳しい検査が必要になります。
平滑筋肉腫
無症状のことが多く、肝臓への転移を起こすことがありますが、リンパ節の転移は悪性リンパ腫より起こしにくいです。
原因
胃肉腫の原因はまだ解明されていません。遺伝子に何らかの突然変異が生じ、細胞が異常に増殖することが原因だとする説もありますが、胃がんの原因にもなるピロリ菌の感染や暴飲暴食、喫煙などの生活習慣が関わっているという説もあります。
胃肉腫の種類として、胃のリンパ組織ががん化する悪性リンパ腫がもっとも多く、そのほかは粘膜の下の間葉系細胞ががん化するもの(代表的なものは平滑筋肉腫)があります。
症状
胃肉腫の症状には、食欲不振や吐き気、上腹部痛、体重減少といった一般的な消化器症状が生じます。また、腫瘍から出血が起こっている場合には、貧血やタール便(黒色便)などの上部消化管出血と共通した症状が現れます。これらは胃肉腫に特徴的なものではないため、自覚症状から胃肉腫と診断するのは難しいといえます。
腫瘍が大きくなると、体の外からでも触れるようになり、他の臓器が圧迫されることで便秘や膨満感などの不快な症状も出てきます。特に平滑筋肉腫は無症状のことが多く、このように進行した状態で初めて病院を受診する方も少なくないといわれています。
検査・診断
有用な検査は内視鏡検査です。内視鏡で直接胃の中をみることで、腫瘍の存在を確認することができます。胃肉腫の確定診断には、病理学的に肉腫の組織を断定する必要があります。内視鏡では、検査と同時に病変部の組織を取って病理検査をすることもできます。悪性リンパ腫は潰瘍をつくりやすいため病変を発見しやすいでしょう。
一方、平滑筋肉腫は初期のころには、病変が胃の粘膜の下にあり、通常の内視鏡では見逃されることがあります。このような場合は、内視鏡エコー検査で粘膜下の病変の有無を判定することになります。平滑筋肉腫は確定診断がなされないまま手術で切除し、手術後の組織検査で確定するケースもあります。また、内視鏡で病変が発見できない場合、上部消化管造影検査がおこなわれることもあります。造影検査で粘膜下からの圧排を発見することが可能です。
転移の有無などを検査する際には、腹部超音波検査や造影CT検査(エックス線を使って身体の断面を撮影する検査)をおこなって全身をチェックします。
治療
胃肉腫の種類によって、治療法は大きく異なります。悪性リンパ腫と平滑筋肉腫の治療法はそれぞれ次の通りです。
悪性リンパ腫
抗がん剤治療がおこなわれます。また、悪性リンパ腫のなかでもMALTリンパ腫とよばれるものはピロリ菌の除菌を行い、Hodgkinリンパ腫とよばれるものは放射線治療が適応されます。いずれにせよ、内視鏡での組織検査でリンパ腫の種類を調べる必要があります。
平滑筋肉腫
大きさが2~3cm未満の大きさでは、内視鏡でのレーザー照射療法やエタノール局注療法がおこなわれます。それ以上の大きさでは外科的な切除が適応となります。腫瘍の部分だけを切除して、胃を残すことが多いですが、腫瘍の場所によっては胃自体を大きく切除しなければならないこともあります。
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