たいばんいざん

胎盤遺残

最終更新日:
2023年06月14日
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2023/06/14
更新しました
2017/04/25
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概要

胎盤遺残とは、出産後に胎盤や卵膜(胎児を包んでいる薄い膜)の一部が子宮内に残ることを指します。胎盤遺残となると出産後の子宮の収縮が妨げられるため、出血が持続することが多く、ときに大量出血となることがあります。

また、産後の子宮内感染の原因になる可能性も少なくありません。経腟分娩後の大量出血の5~10%は胎盤遺残によるものとされています。

胎盤遺残は体外受精による妊娠、高年齢妊娠、流産手術の既往などで発症リスクが高まると考えられており、近年、胎盤遺残の発症頻度は増加しています。

原因

通常、胎盤は出産後5~6分ほどで子宮壁から剥がれて自然に娩出されますが、主に以下2つの原因で子宮内にとどまります。

剥がれた胎盤を娩出できない場合

正常に胎盤が剥がれても、子宮収縮が不十分で胎盤を娩出できないほか、胎盤が子宮から娩出される前に子宮口が閉じてしまい(胎盤嵌頓)、胎盤の娩出が妨げられることで起こります。

胎盤が正常に剥がれない場合

胎盤が正常に子宮壁から剥がれず、胎盤遺残となるケースも少なくありません。固着胎盤や癒着胎盤などにより、胎盤が子宮から剝がれにくいことによって起こります。

症状

胎盤遺残で生じる主な症状は出血です。胎盤が子宮から剥がれると胎盤に流れ込む血管が断裂して出血が生じますが、通常であれば出産後は子宮収縮によって血管も圧迫され、出血が抑えられます。しかし、固着胎盤や癒着胎盤によって胎盤の一部が遺残した場合には子宮収縮が妨げられることで出血量が増え、大量出血(産科危機的出血)の原因になることがあります。

出血の程度は子宮内に残った胎盤の状態によって異なります。子宮が過度に収縮することで子宮口が閉じてしまい、胎盤が娩出できなくなる胎盤陥頓の場合は、子宮内で出血が生じても体外へ排出されづらいため、見かけ上は出血がわずかであることも多くあります。

一方で、胎盤が子宮壁から剥がれない胎盤遺残では、胎盤全体が完全に子宮の壁に癒着している場合に出血をほとんど認めないこともあります。しかし、胎盤の一部が癒着している場合は、子宮収縮が妨げられるため胎盤剥離部からの出血が持続し、ときに大量出血となります。

出血のほか、胎盤遺残は子宮内感染を招きやすいといわれており、出産後の発熱や下腹部痛の原因にもなります。

検査・診断

胎盤遺残が疑われる場合は、超音波検査やMRI検査などの画像検査で、子宮内に胎盤が残っていないかを確認しますが、胎盤遺残があるかの判断が難しいことも実際には多くあります。胎盤が残っていると確認された場合には、遺残した胎盤組織への血流量などを確認することで、その後の管理法などを検討することがあります。

胎盤嵌頓の場合は、内診指で子宮口付近に剥がれた胎盤実質を触れる場合もあります。

治療

胎盤遺残の根本的な治療は、子宮内に残った胎盤や卵膜などを除去することです。

剥がれた胎盤を娩出できない場合

子宮が過度に収縮して子宮口が閉じてしまい胎盤を娩出できない場合は、子宮収縮を抑える薬剤を投与したうえで胎盤を取り出す処置を行うことがあります。子宮の収縮力が弱いことが原因で生じる胎盤遺残には、子宮底のマッサージや子宮収縮を促す薬剤を投与します。

胎盤が正常に剥がれない場合

胎盤が正常に剥がれない場合は、子宮内に手を入れて子宮壁から胎盤を剥がす“胎盤用手剥離術(たいばんようしゅはくりじゅつ)”が行われます。

産褥期の胎盤の部分的な遺残に対しては、出血量が少ない場合には自然剥離を期待して待機的管理を行うことがあります。そのほか、超音波観察下で胎盤鉗子を子宮内に挿入して遺残胎盤を除去する処置や、子宮鏡を子宮内に挿入し直視下に遺残する胎盤組織を剥がす“子宮鏡手術”が行われることがあります。これらの癒着胎盤での外科的な介入は大量出血の原因になることもあります。出血が止まらない場合や大量の出血が予測され、次の妊娠の希望がない場合などは子宮全摘出手術を行うこともあります。

胎盤が遺残する状態が続く場合には、感染症の合併リスクが上昇するため慎重な管理が必要です。

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