概要
膝内障とは、膝関節内にある半月板、靭帯、関節軟骨などの損傷や滑膜性疾患(滑膜ヒダ障害、骨軟骨腫症など)など、関節内に病変がある障害の総称です。
膝内障という言葉は、過去には膝関節の曲げ伸ばしがスムーズにできない嵌頓症状を示す一連の病気の病名として、医療現場で使われていました。その後、膝内障の解明が進み、膝内障の多くは「半月板損傷」や「靭帯損傷」などにより成り立っていたことがわかりました。
そのため、現在では膝内障という言葉は、検査などによって半月板損傷や靭帯損傷という正式な診断がつけられる前に、「何らかの膝関節内構成体の障害や損傷」を表すものとして一時的に使用されています。このような背景から、ここでは膝内障の多くを占める半月板損傷や靭帯損傷について、詳しく解説していきます。
半月板損傷とは、太ももにある大腿骨とすねの脛骨の関節軟骨の間にある「半月板」に断裂が生じることを指します。半月板は膝関節を安定させたり、衝撃を和らげたりする役割を担っています。この半月板が加齢や外傷など、さまざまなきっかけで損傷することにより、膝の曲げ伸ばしや歩行などに困難が生じます。ときには、膝が動かなくなる、動かそうとすると激痛が生じるといった陥頓症状「ロッキング」が起こることがあります。
膝関節を支える靭帯の損傷は、半月板損傷と共に起こることも、単独で起こることもあります。膝関節には4つの靭帯があり、外力が加わる向きにより損傷が生じやすい靭帯も異なります。スポーツ活動中などに生じた靭帯損傷を放置してしまうと、二次的に半月板損傷が起こることもあるため、すみやかな医療機関の受診と適切な治療が大切です。
原因
半月板損傷
半月板損傷は、一度の外傷(けが)によって生じるケースと、加齢に従い変性した半月板に何らかの外力が加わって生じるケースがあります。前者のきっかけの一例としては、スポーツ活動中や交通事故の際などに膝をひねることが挙げられます。後者の例は、40歳以上の方に起こりやすいといわれています。関節軟骨のざぶとんの役目をする半月板は、加齢に伴い変性し、傷つきやすくなります。そのため、小走りしようとしたり、車から降りようとしたりする際に、膝に体重がかかった状態で膝をひねるなどの軽微な外力で半月板に損傷が生じることがあります。半月板の損傷形態は、縦断裂・横断裂・水平断裂・変性断裂など多様です。
靭帯損傷
膝関節には以下4つの靭帯があります。靭帯損傷とは、膝に外力を受けることで、これらいずれか(もしくは複数)の靭帯が緩んだり断裂したりすることをいいます。
- 前十字靭帯
- 後十字靭帯
- 外側側副靭帯
- 内側側副靱帯
このうち、膝関節の外から内に向けて外力が加わることによる内側側副靱帯損傷の発生頻度が高いことがわかっています。また非常に大きな外力により、複数の靭帯に損傷が及ぶこともあります。靭帯損傷はきっかけにより、コンタクトスポーツで相手選手のタックルを受けて起こるような接触型損傷と、ジャンプ着地時や走行中の急なターン時など膝で踏ん張った際などに起こる非接触型損傷に分けられます。膝の靭帯損傷を放置してしまうことで、半月板損傷が生じることもあります。
症状
半月板損傷
膝を曲げ伸ばししたときの痛みやひっかかるような感じが、自覚症状として挙げられます。重症例では膝に水が溜まって腫れる「関節水症」がみられることや、膝を急に動かせなくなる「ロッキング」を呈することがあります。
靭帯損傷
靭帯を損傷した直後~数週間の主な症状は膝の痛みと可動域の制限です。また膝関節内に血液が溜まり、腫れ(関節血症)が生じることもあります。強い痛みや腫れが引き、可動域制限が和らいだ後に、膝のぐらつき(不安定性)が生じる例もあります。
検査・診断
問診時に、ご自身の症状を詳しく伝えましょう。患者さんの自覚症状や、診察所見により半月板損傷の可能性があると疑われる場合に、MRI検査が行われます。※半月板、靭帯、関節軟骨は単純X線(レントゲン)検査では写りません。
膝関節内には、内側半月板と外側半月板があります。MRI検査では、このうちどちらの半月板に変性や断裂が生じているのかを確認することができます。またMRI検査により、靭帯損傷の診断も行うことができます。
冒頭にも記したように、膝内障は検査により診断がつく前の段階にのみ使われる言葉ですので、これらの検査後には、「内側半月板損傷」や「膝前十字靭帯損傷」など、正確な確定診断に基づく病名がつけられます。
治療
半月板損傷
リハビリテーションや抗炎症薬の処方などの保存療法を行います。保存療法により症状が改善しない場合には手術を検討します。半月板損傷の手術には、損傷した部分を切除する切除術と縫い合わせる縫合術があります。切除術・縫合術いずれも、通常は関節鏡と呼ばれる内視鏡を用いて行われます。
靭帯損傷
発生頻度の高い内側側副靱帯損傷の場合、ギプスによる固定やサポーターをつけた訓練により修復を目指します。前十字靭帯損傷の場合は、このような保存療法による治療は難しく、患者さんの活動性によっては手術を検討する場合もあります。一般的に行われている靭帯損傷の手術は、患者さんご本人の腱を使った靭帯の再建術です。
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