概要
膝内障とは、何らかの原因で膝に損傷や障害が起こっているものの、確定診断が下されていない場合に使用される病名です。主な原因として、膝の関節内にある半月板、靱帯などの損傷や、そのほかの損傷・障害(膝蓋軟骨軟化症、関節内腫瘍など)が考えられます。
治療では、装具(サポーター)の使用や運動療法といった保存療法や、手術が検討されます。特に、損傷した前十字靱帯や半月板の中でも血流がない部分は自然に治癒することはまれなため、手術が必要となるケースも多いとされます。
原因
膝内障は大きく分けると“半月板損傷”、“靱帯損傷”、“そのほかの損傷や障害”の3つに分けられ、それぞれ以下のような原因が挙げられます。
半月板損傷
半月板は大腿骨と脛骨の間にある組織であり、膝を曲げ伸ばししたときにクッションのような役割をしています。そのため、ジャンプの着地時やスポーツ時の急激な方向転換などで膝に過度な負担がかかるとダメージを受けやすく、半月板損傷を引き起こします。
また、半月板は過度な負担がかかるスポーツなどをしていなくても、年齢を重ねて半月板が傷つきやすくなっていたり、生まれつきの半月板の異常があったりする場合は、通常の動作をしているだけでも半月板損傷を引き起こすことがあります。
靱帯損傷
膝関節には前十字靱帯、後十字靱帯、外側側副靱帯、内側側副靱帯の4つの靱帯があります。膝の靱帯損傷とは、膝に外力を受けることで、これらいずれか(もしくは複数)の靱帯が損傷することをいいます。
このうち、膝関節の外から内に向けて外力が加わることによる内側側副靱帯損傷の発生頻度が高いことが分かっています。また非常に大きな外力により、複数の靱帯に損傷が及ぶこともあります。靱帯損傷はきっかけにより、コンタクトスポーツなどで相手選手のタックルを受けて起こるような接触型損傷と、ジャンプ着地時や急な方向転換などで起こる非接触型損傷に分けられます。
膝の靱帯損傷を放置してしまうことで膝崩れ*を繰り返すと、半月板損傷が生じることもあります。
*膝崩れ:歩いているときなどに、急に力が抜けるように膝がずれる現象。
そのほかの損傷や障害
膝内障は半月板損傷や靱帯損傷以外にも、関節内遊離体、離断性骨軟骨炎、膝蓋軟骨軟化症、関節内腫瘍などの病気のほか、大腿四頭筋(太ももの筋肉)断裂などによって引き起こされることがあります。
症状
膝内障にはさまざまなけがや病気が含まれているため、症状も原因によって異なります。代表的な膝内障の症状としては以下のようなものが挙げられます。
半月板損傷
膝の痛みや引っかかるような感じなどが自覚症状として挙げられます。重症例では膝に水がたまったり、膝を動かせなくなる“ロッキング”が生じたりすることがあります。
靱帯損傷
靱帯を損傷した直後~数週間の主な症状は膝の痛みと可動域の制限です。
また膝関節内に血液がたまり、腫れ(血腫)が生じることもあります。痛みや腫れが引き、可動域制限が和らいだ後に膝のぐらつき(不安定性)が生じる例もあります。
そのほかの損傷や障害
たとえば、離断性骨軟骨炎では軟骨下の骨が壊死し、関節内に骨軟骨片が遊離することがあり、初期では運動後の違和感など以外は目立った症状がないとされています。しかし、進行すると痛みやロッキングが生じることがあります。
そのほか、膝蓋軟骨軟化症では走ったり階段を上ったりした際に、膝の裏や周りに鈍い痛みが生じることがあります。また、大腿四頭筋断裂では痛みや腫れ、歩行困難などが現れるケースもあります。
検査・診断
症状やけがをしたときの状況などから膝内障が疑われるときは、靱帯や半月板など膝関節内の状態を確認するために、X線やMRIなどの画像検査が必要となります。半月板や靱帯を確認する場合には、X線には映らないためMRI検査が有用とされています。
そのほか、関節内腫瘍などの病気が原因の場合には、組織を採取して顕微鏡で調べる生検を行う場合もあります。
治療
膝内障の治療方法は、原因となるけがや病気の種類によって異なります。
半月板損傷
半月板損傷と診断された場合はまず、運動療法、足底板の使用、ヒアルロン酸の関節内注射といった保存療法を行います。
保存療法により症状が改善しない場合などには手術を検討します。半月板損傷の手術には、損傷した部分を切除する切除術と修復術があります。切除術・修復術のいずれも、通常は関節鏡と呼ばれる内視鏡を用いて行われます。
靱帯損傷
発生頻度の高い内側側副靱帯損傷の場合、ギプスによる固定やサポーターをつけた訓練により回復を目指します。
前十字靱帯損傷の場合は、このような保存療法による治療は難しく、手術を検討することもあります。靱帯損傷の手術では、患者本人の腱を使った靱帯の再建術が適切と考えられています。
そのほかの損傷や障害
それぞれの原因により治療法は異なりますが、大腿四頭筋断裂では安静にしたりリハビリテーションを行ったりすることで回復を待ちます。関節内腫瘍では手術が検討されることがあります。
そのほか、膝蓋軟骨軟化症ではサポーターの使用や消炎鎮痛薬の投与などが行われます。
予防
膝内障にはさまざまな病気が含まれていますが、代表的な病気である半月板損傷や靱帯損傷の多くは転倒やスポーツ中の事故などによるけがが原因となっています。そのため、膝内障を予防するには膝関節に負担になるような動作を避けることが大切です。
また、膝の痛みや動かしにくさ、引っかかり感など何らかの症状が続くときは軽く考えず、できるだけ早めに医療機関を受診しましょう。
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