かいりせいどういつせいしょうがい

解離性同一性障害

同義語
解離性同一症
俗称/その他
多重人格障害
監修:

概要

解離性同一性障害(解離性同一症)は、1人の人間の中に、複数の異なる人格が生じる病気です。以前は“多重人格”と呼ばれることもありました。“解離性障害(解離症)”という病気に含まれる種類の1つとされています。解離性障害とは、大雑把に表現すると、記憶や思考、感情、意識、自己同一性(アイデンティティ)などのコントロールが難しくなる病気です。

解離性障害でみられる解離性健忘(かいりせいけんぼう)などの症状が生じるほか、同一性に関わる症状として、2つ以上の異なる人格が生じることが特徴です。異なる人格の現れ方などには個人差があり、それぞれの人格の間でお互いを認識しているか、記憶が引き継がれているかなどに違いがみられます。治療としては環境の調整や精神療法が行われるほか、薬物療法が行われることもあります。

原因

解離性同一性障害は虐待やネグレクトを受けるなど幼少期に過剰な苦痛を伴う体験(トラウマ)を長期間にわたって経験することや、短期間のストレスであったとしても親との死別や自身の重い病気などによる耐えがたいストレス体験が原因で発症します。

発症メカニズムには不明な点が多々ありますが、さまざまな記憶、感情、知覚など通常であれば常に同じ人格として持っているべきものを、強い苦痛体験によって心や気持ちが壊れないよう自分の中から無意識のうちに切り離すようになり、それが継続することで同一人物の中にまったく別の人格が存在するようになると考えられています。

症状

解離性同一性障害は過去に“多重人格”と呼ばれていたこともあり、その名のとおり同一人物の中に考え方、口調、態度、行動などがまったく異なる別の人格が複数存在するようになる病気です。1つの人格が現れている際の記憶や知覚は別の人格に引き継がれないこともあるため、この病気では過去の一定期間の記憶がまったくない、日々の動作に必要な知識を思い出せないといった“健忘”と呼ばれる症状が現れやすくなります。また、自身にはまったく記憶がない行動を他者から指摘されたり、後々に証拠となるものを発見したりすることも少なくありません。

なお、同一人物の中の別人格の現れ方には、明らかな別人格であると誰の目にも明らかな“憑依型”と明らかではない“非憑依型”というタイプがあります。複数の人格同士がそれぞれ互いの存在を認識する場合は、複数の人格の声が同時に聞こえるなどの混乱を引き起こすことも少なくありません。また、突然別の人格が現れてその場にふさわしくない行動を取るなど円滑な社会生活に支障をきたす症状が目立つこともあります。

また、解離性同一性障害は過去の体験の影響などにより、PTSD心的外傷後ストレス障害)やうつ病、不安症(不安障害)などほかの精神疾患を併発し、自傷行為を繰り返したり薬物依存に陥ったりするケースが多いことも知られています。

検査・診断

解離性同一性障害は、画像検査や血液検査などの客観的な検査のみで診断が下せる病気ではありません。経験豊富な医師が繰り返し診察を行い、日常のエピソードや過去の記憶、体験などから総合的に診断します。

また、統合失調症などほかの精神疾患と似たような症状が現れることもあるため、鑑別のために種々の心理検査や頭部CT、MRIなどの画像検査、血液検査などが行われることがあります。

治療

解離性同一性障害の治療は、まず専門家による症状の評価と診断を受けることから始まります。そのうえで、解離性症状を悪化させる原因を可能な範囲で取り除いていくことが必要になります。それと同時に各人格が自由に話せる環境を提供することが症状の改善につながります。複数存在する人格を1つに統合することを治療の目標とする場合もありますが、多くの場合は完全な統合は難しく、複数の人格同士を協調させて日常生活への支障を抑えることを目標にカウンセリングをメインとした精神療法が行われます。そのため、治療も長期間にわたることが多いのが現状です。

また、この病気にはPTSDや、うつ病などのほかの精神疾患が合併することが多いため、それらの症状を改善するために抗うつ薬、抗不安薬などを用いた薬物療法を行うことがあります。

予防

解離性同一性障害の多くは幼少期の過剰な苦痛体験が発症の原因と考えられています。そのため、幼少期に安心した環境で生育されることも大切です。

また、上述したように日常の中ですっぽりと記憶がない空白期間がある、身に覚えのない出来事があるなど、解離性同一性障害が疑われる症状があるときは、できるだけ早めに専門の医療機関に相談しましょう。

最終更新日:
2025年05月12日
Icon close
2025/05/12
掲載しました。

「解離性同一性障害」を登録すると、新着の情報をお知らせします

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

実績のある医師をチェック

解離性同一性障害

Icon unfold more