関節リウマチは、関節に炎症が起こり、痛みや腫れを生じる病気です。進行すると関節の変形や機能障害が引き起こされたり、全身の臓器に炎症が及んだりします。しかし、近年は治療が大きく進歩し、早期に適切な治療を行うことで寛解*を目指すことも可能になっています。今回は、関節リウマチの特徴や近年の治療について、岐阜県総合医療センター リウマチ・乾癬・膠原病診療部 兼 総合診療科 医長の岡田 英之先生にお話を伺いました。
*寛解:炎症や痛みが治まり、ほとんど症状が出ていない状態
関節リウマチは、免疫の異常によって全身の関節に炎症が起こり、痛みと腫れが生じる病気です。どこか特定の1箇所ではなく、複数の関節に腫れなどがみられるのが特徴です。発症初期には、手足の指や手首など比較的小さい関節に痛みや腫れ、こわばりが現れることが多くあります。しだいに肩や肘、膝などの大きな関節にも症状が出たり、さらに進行すると関節が変形して、見た目と関節の動きなどの機能の両面に障害を及ぼしたりすることもあります。
一般的には“関節の病気”というイメージが強いかもしれませんが、実は関節リウマチは“全身の炎症性疾患”です。慢性的な炎症により、肺の線維化*、腎機能の低下、糖などの代謝異常など、さまざまな臓器に影響が及ぶことがあります。また、まれではありますが、皮膚の湿疹や潰瘍、神経障害などを伴ったりすることもあります。
原因はいまだ特定されていませんが、遺伝的な要因に環境要因が加わることで発症すると考えられています。特に、喫煙は発症に関連する重要な要因の1つです。たばこを吸い続けると肺の中で変化が起こり、関節リウマチの発症に関わる抗CCP抗体**が作られやすくなることが分かっています。そのほか、歯周病や腸内細菌などの異常も発症に関与すると考えられています。
*肺の線維化:肺の間質という部分が厚く硬くなること
**抗CCP抗体:シトルリン化がみられるいくつかの蛋白質に対する自己抗体で、関節リウマチの約70~80%で陽性となる。
関節リウマチの治療には、主に基礎療法、薬物療法、リハビリテーション、手術というアプローチがあります。
基礎療法とは生活習慣の改善のことで、治療の基盤となります。たばこを吸っている方は、関節リウマチを悪化させないよう禁煙することが非常に大切です。前述のように、関節リウマチは代謝にも異常をきたす病気であり、糖尿病などのリスクも高まるため食生活の改善も重要です。ジャンクフードなどは控え、野菜や果物を多く取り入れた食事を心がけましょう。また、かぜなどウイルス性の感染症にかかると関節リウマチが悪化することがあるため、手洗いやうがいなど日常の感染症対策も重要です。
関節リウマチ治療の中心は薬物療法です。これは全世界でほぼ共通した方法で行われており、診療ガイドラインでの推奨に沿って段階的に進めます。
最初の段階で使用される第一選択薬は、メトトレキサートです。異常な免疫を抑えて、炎症を抑える効果が期待できます。経過を観察しながら、十分に効果が得られる量まで徐々に増量していきます。適切に使用することで約7割の患者さんで症状の改善がみられますが、肝臓や腎臓の機能障害、吐き気、下痢、口内炎などの副作用が生じることもあります。
副作用によって服用を続けるのが難しい方、服用はできても十分な量まで増量するのが難しい方などの場合は、次の治療ステップに進みます。特に、すでに関節が破壊されている、あるいは炎症反応を示す検査値が高く関節の症状がさらに悪化すると予想される場合などは、より強力な治療が必要になります。
次のステップで用いられるのは分子標的薬と呼ばれる薬で、大きく生物学的製剤とJAK阻害薬の2種類があります。
生物学的製剤は、生物から産生されたタンパク質などを利用して作られた薬で、炎症や関節の破壊を抑える効果が期待できます。投与は皮下注射または点滴で行います。 体への負担は少ないとされるものの、免疫を抑制する薬であるため、感染症にかかりやすくなることには注意が必要です。
JAK阻害薬は、JAK(ヤヌスキナーゼ)という酵素のはたらきを阻害することで、炎症や関節の破壊を抑える効果が期待できる内服薬です。生物学的製剤と同等かそれ以上の効果が期待できる一方、副作用には注意が必要です。肝機能障害、貧血、血中コレステロール値の上昇、帯状疱疹などが現れることがあります。
生物学的製剤とJAK阻害薬は、症状や副作用、患者さんが注射薬と内服薬のどちらを希望するかといったことを考慮して選択します。
これらによって寛解*を達成し、それを半年~1年程度維持できた場合は、薬剤を少しずつ減らしていきます。現在のところ、どのような順に減量していくか明確な基準はないため、患者さんのご希望を伺いながら話し合って決定します。私の場合は、より副作用の頻度が高いメトトレキサートを先に減量し、症状に変化がなければ生物学的製剤の投与間隔を延長しています。JAK阻害薬の場合は基本的に減量は行いません。
*寛解:治療によって関節痛などの症状が消失し、血液検査などの値も正常に戻った状態。痛みや腫れなどがない「臨床的寛解」、画像検査において関節破壊が進行していない「構造的寛解」、日常生活において支障をきたしていない「機能的寛解」の3つがある。
薬物療法の進歩により、最近は手術が必要になる患者さんは激減しています。しかし、関節の変形が進行して日常生活に大きな支障をきたしたり、中には関節が腫れることで骨と筋肉をつなぐ組織である腱が引っ張られて切れてしまったりする患者さんもいて、そうした場合には手術が必要になることがあります。人工関節に入れ替える手術や、骨の変形を矯正する手術などにより、生活の質(QOL)の改善が期待できます。また、関節の変形により足に難治性の皮膚潰瘍ができるのを防ぐ目的や、手の変形が気になる場合に見た目を整える目的で手術を行うこともあります。
リハビリテーション(以下、リハビリ)はとても重要です。患者さんから「関節が痛むときはあまり動かさないほうがよいですか」と質問を受けることがありますが、関節リウマチでは関節の機能や関節を支える周囲の筋肉を衰えさせないために、しっかりと動かしていただくことがとても大事です。必要な場合は近隣の医療機関でリハビリを受けていただくよう調整をしたり、ご自宅で無理のない範囲の運動を続けていただいたりするようにお伝えしています。
当院のリウマチ・乾癬・膠原病診療部では、それぞれの診療科の医師(総合診療科・整形外科・皮膚科・消化器内科)が連携して関節リウマチの患者さんの診療を行っています。整形外科にも関節リウマチを専門とする医師が在籍しており、主に手術を必要とする患者さんなどに対応しています。当診療部では各診療科の医師が共に患者さんの治療や支援の方針を検討する合同カンファレンス(会議)を毎月実施しているのも特徴です。たとえば、内科の私たちは整形外科の医師に画像診断における知見を共有していただいたり、整形外科で担当している患者さんへの薬の選択を内科の私たちに相談してくださったりと、診療科の垣根を越えて協力しながら診療にあたっています。
また、当院では関節リウマチのケアに携わる看護師が“日本リウマチ財団登録リウマチケア看護師”という資格を取得しています。専門知識を生かして患者さんに説明や指導をしたり、患者さんが診察室ではなかなか話しづらいことを丁寧にお聞きしたり、それぞれの職種が連携して患者さんのケアにあたっています。
診療において私が特に大切にしていることは2つあります。1つは、“患者さんと一緒に治療方針を決定する”ということです。医師が選択した治療法が患者さんの希望に沿わないものであれば満足していただくことはできないと思いますし、前向きに治療に取り組めなくなってしまうこともあるでしょう。だからこそ、患者さんとしっかりとコミュニケーションを取りながら、一緒に治療方針を検討していくことが重要だと考えています。たとえば、患者さんの中には「これ以上の治療は希望しません」とおっしゃる方もいらっしゃいます。その場合、症状の進行などのリスクは残りますが、患者さんとよく話し合ったうえで、次の治療のステップには進まないことなども一つの選択肢であると考えています。
もう1つは、より安全な治療を心がけることです。関節リウマチそのものは命に関わることは多くない病気ですが、治療が適切でなければ深刻な事態を招く恐れがあります。患者さんの状態、合併症や副作用の状況などを踏まえて、より安全性の高い治療を提供することが第一だと考えています。
近年の医療の進歩により、現在では“寛解”、つまり病気がない状態とほとんど変わらない生活を目指すことが可能になってきました。
もし日常生活の中で関節の痛みや腫れを感じて悩んでいたら、我慢せずに早めにお近くの医療機関を受診してください。ただの痛みだと思って放置していたら関節リウマチを発症していたという例もあるため、病気を見逃さずに早期治療につなげるためにも、ぜひ一度受診していただくのがよいと思います。そのことが、患者さんご自身のよりよい生活を守る第一歩になります。
岐阜県総合医療センター リウマチ・乾癬・膠原病診療部 兼 総合診療科 医長
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