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一人ひとりに寄り添う関節リウマチ治療――患者さんが送りたい人生を送れるように

一人ひとりに寄り添う関節リウマチ治療――患者さんが送りたい人生を送れるように
瀬戸口 京吾 先生

地方独立行政法人東京都立病院機構 東京都立駒込病院 膠原病科 部長

瀬戸口 京吾 先生

目次
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関節リウマチは、免疫の異常によって関節に炎症が起こり、痛みや腫れ、こわばりなどが現れる病気です。かつては、進行すると寝たきりになるともいわれていましたが、現在は治療薬の進歩により、早期に診断して適切な治療を行うことで症状のコントロールを目指せるようになっています。

都立駒込病院膠原病科 部長の瀬戸口 京吾(せとぐち けいご)先生は「患者さんが送りたい人生を送れるようサポートしたい」とおっしゃいます。瀬戸口先生に、関節リウマチの治療や診療において大切にされている思いについて、詳しくお話を伺いました。

関節リウマチ自己免疫疾患の1つで、本来は外敵から体を守るはずの免疫システムが誤って自分自身の関節を攻撃し、炎症を引き起こす病気です。原因ははっきりとは分かっていませんが、関節リウマチになりやすい遺伝的要因を持つ方が、特定の環境要因にさらされることで発症すると考えられています。中でも“喫煙”は重要な環境要因の1つです。

典型的な症状には、関節の痛みや腫れ、こわばりなどがあります。進行すると関節の変形や破壊が進み、日常生活に支障をきたすこともあります。また、関節だけにとどまらず、皮膚や肺などの全身に症状が起こる可能性があることも、関節リウマチの特徴です。

関節リウマチの診断は、診察だけでなく、血液検査や画像検査などを総合的に組み合わせて行います。関節の痛み・腫れといった症状だけでは、関節リウマチと診断することはできません。他にもさまざまな原因で似た症状が起こるため、それらの病気ではないことを慎重に見極める必要があります。

たとえば、はじめに見極めるべき病気として、感染による関節炎が挙げられます。関節リウマチの治療では主に免疫を抑える作用のある薬を使用するのに対して、感染症に起因する関節炎の場合には抗生物質などで病原体を退治する治療が必要となります。感染症を見逃してリウマチの治療をしてしまうと悪化のリスクがあるため、関節液を採取して原因菌がないかを調べるなどして、慎重に検査を進めていくことが重要です。そのほか関節に痛みや腫れが生じる病気として、痛風やヘバーデン結節が挙げられます。ごくまれですが、傍腫瘍症候群(ぼうしゅようしょうこうぐん)といって悪性腫瘍の影響で関節症状が現れる場合もあります。

他の病気との鑑別においては、症状が現れているのが1つの関節だけか、複数の関節かが1つのポイントとなります。関節リウマチでは複数の関節に炎症が起こることが多く、1つの関節だけに痛みや腫れがある場合には、別の病気である可能性を考慮します。また、手指の一番先の関節(DIP関節)だけが腫れている場合は、関節リウマチではなくヘバーデン結節の可能性があります。ただし、DIP関節の腫れの場合も、乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)など別の病気が隠れていることもあるため、皮膚症状なども含めて確認することが重要です。

写真:PIXTA
写真:PIXTA

関節リウマチの治療法には基礎療法、薬物療法、リハビリテーション、手術があります。

関節リウマチの治療を進めるうえでは、生活習慣の見直し・改善を行う基礎療法が大切です。特に禁煙は必須です。たばこを吸い続けていると、関節の炎症が進みやすくなるだけでなく、薬の効きが悪くなることも分かっています。たばこを吸っている患者さんには禁煙していただいてから治療を進めるようにしています。

また、薬の効果が現れにくい患者さんにお話を伺うと、ストレスや睡眠不足で日常生活に負荷がかかっていると考えられるケースがよくあります。十分な睡眠時間を確保し、体に大きな負担をかけすぎない生活を心がけることが大切だと考えます。

食事については、関節リウマチだからといって特定の食品を制限するということはありません。ただ、辛いものの取り過ぎなどで消化管に負担がかかると、薬の吸収に影響する可能性があります。消化管に負担をかけない食生活を意識していただくのがよいでしょう。

また、体を動かさずにいると、関節が固まりやすくなるため、1日1回でもよいので関節を曲げ伸ばしするなど、痛みのない範囲で体を動かすようにお伝えしています。

関節リウマチ治療の中心となるのは薬物療法です。昔は、痛み止め(消炎鎮痛薬)やステロイドによる対症療法が中心でした。しかし現在では、関節リウマチを免疫の異常によって炎症が起こる病気と捉え、炎症や免疫反応を適切に調整する薬物療法が治療の中心になっています。痛み止めは、痛みがつらいときに使うこと自体は問題ありませんが、関節リウマチの進行を抑えることはできません。現在は、治療薬の進歩により、多くの患者さんで症状や病気の進行を抑え、寛解*を目指すことが可能になっています。具体的な薬剤の選択はガイドラインに沿って行われ、まずメトトレキサートを用い、効果が不十分な場合や何らかの理由で使用が難しい場合には、生物学的製剤やJAK阻害薬を検討します。

*寛解:治療により炎症が治まり、ほとんど症状が出ていない状態。

メトトレキサート

第一選択薬は、抗リウマチ薬のメトトレキサートです。元々は抗がん薬として開発された薬ですが、これを少量用いることで免疫反応を抑制し、炎症による痛みや腫れなどの症状を軽減する効果が期待されます。当院では、関節リウマチと診断されたらできるだけ早く炎症を抑え込むために、患者さんの状態をみながら週の投与上限である16mgまで増やし、その後定期的に効果を確認しています。

メトトレキサートの服用上の注意点は、週に1〜2日だけ服用することです。誤って毎日飲むなど過剰に服薬してしまうと、重い副作用につながる危険があるため、事前に服用方法をしっかりと理解していただくことが重要です。また、メトトレキサートを使う際は、副作用を軽減する目的で葉酸製剤を併用するのが一般的です。なお、葉酸製剤とメトトレキサートを同時に服用するとメトトレキサートの効果が減弱してしまうので、基本的にはメトトレキサートを飲んだ翌日または翌々日に葉酸製剤を服用します。

生物学的製剤、JAK阻害薬

メトトレキサートで十分な効果が得られない場合や、副作用などで使用が難しい場合には、生物学的製剤やJAK阻害薬を検討します。どちらも炎症を引き起こしている異常な免疫のはたらきを抑える高い効果が期待できる薬ですが、感染症リスクが高まる点には注意が必要です。

生物学的製剤は炎症を引き起こす特定の物質のはたらきをブロックするもので、皮下注射や点滴によって投与します。一方、JAK阻害薬は飲み薬です。細胞の中で炎症のシグナルが伝わるのを効率よく抑える作用があり、毎日服用します。

どの薬を選ぶかは、炎症反応の強さや患者さんの全身状態、通院のしやすさなどによって変わります。病気の状態だけでなく、患者さんの生活背景も踏まえながら、より適した治療を選ぶことが大切です。

関節が変形して日常生活に支障をきたしている場合には手術を検討します。薬物療法の進歩によって関節破壊の進行が抑えられるようになり、膝など大きな関節の手術は昔に比べて減ってきています。一方で、手足の指など小さな関節の手術はあまり減っていない印象です。手指の変形が進んで動かしづらい、足指の変形で歩きにくいといった場合には、機能の改善を目的に早めに手術を検討したほうがよい場合もあります。

当院では膠原病科と整形外科とで連携し、手術の必要性を判断しています。状況に応じて、より専門性の高い手術を行うことのできる医療機関を紹介することもあります。

関節リウマチ診療において当院で力を入れていることは関節超音波(エコー)検査です。関節の症状を訴えて受診された方には関節超音波検査を行い、炎症の有無や程度を細かく確認しています。X線検査では骨や関節の障害を確認することはできますが、炎症の様子を捉えることはできません。関節超音波検査でX線検査では分からない炎症を直接観察することで、より確実性の高い診断につながります。また、診断だけでなく、治療の効果判定を行ううえでも非常に有用です。

写真:PIXTA
写真:PIXTA

私は「関節リウマチのために患者さんの生活が損なわれないようにしたい」という思いで日々の診療にあたっています。その方が望む生活を送れるよう、仕事に行くことがつらい、日常の動作が制限されるといった困り事がある場合には、治療によってそこを少しでも改善できないかを考えます。

その際、病気の状態だけでなく、患者さんの生活背景も含めて治療を検討する必要が生じることもあります。関節リウマチは長く付き合っていく必要がある病気のため、治療にかかる経済的負担が大きいと感じる方も少なくありません。患者さんが少しでも安心して治療を受けられるよう、病気の状態、生活状況、治療費に関することなどをよく話し合ったうえで治療を行うことを大切にしています。

患者さんにはそれぞれの生活があり、大事にしていることがあります。そうした患者さんの声に耳を傾けることの大切さを感じた例があります。

ある60代の患者さんは当初、メトトレキサートによる治療に前向きではありませんでした。その理由についてじっくりお話を伺うと、大好きなワインを飲めなくなることへの寂しさが理由であることが分かりました。メトトレキサートは肝機能障害の副作用が起こり得ることから、服用中はなるべく飲酒を控えたほうがよいためです。そこで「まずは1か月だけワインを控えて薬を始めてみましょう」と提案し、メトトレキサートによる治療を開始しました。現在も血液検査で肝機能を確認しながら、メトトレキサートで病気をコントロールされていらっしゃいます。患者さんが治療をためらうとき、その裏にある患者さんの思いに耳を傾けることの大切さを教えてくれたエピソードです。

かつて、関節リウマチは発症すると寝たきりになる恐れがあるともいわれる病気でした。しかし現在では、血液検査で抗CCP抗体*を調べることで早期発見ができるようになったことに加えて、医療の進歩によって適切な治療ができる時代になってきています。そして早期に十分な治療を始めることが、関節の破壊を未然に防いで病気をコントロールするための重大な鍵となります。これを“Window of opportunity(治療機会の窓)”と呼びます。

これを逃さないよう、関節の痛みや腫れで悩んでいる方は我慢せずに、なるべく早く医療機関を受診していただきたいと思います。まずは近くの整形外科などを受診してください。血液検査などでリウマチの疑いがあれば、専門の医療機関を紹介してもらえると思います。

*抗CCP抗体:関節リウマチに特異性が高い自己抗体。関節症状があって抗CCP抗体が陽性なら関節リウマチの可能性が高いとされる。

提供:大正製薬株式会社

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