インタビュー

モザイクプラスティ術の適用

モザイクプラスティ術の適用
松末 吉隆 先生

滋賀医科大学 前副学長・理事(医療等担当)、滋賀医科大学医学部附属病院 前病院長

松末 吉隆 先生

この記事の最終更新は2016年04月06日です。

関節軟骨欠損や離断性骨軟骨炎などの治療法である「関節鏡下モザイクプラスティ術」は限られた欠損や損傷において行われる手術法です。具体的にどのような症状に対して有効であるのか。滋賀医科大学医学部附属病院・病院長の松末吉隆先生にお話を聞きました。

 ひざの関節軟骨が損傷する病気には外傷性の軟骨欠損症、離断性骨軟骨炎、それに軟骨壊死などがあります。離断性骨軟骨炎は、外部からの衝撃で軟骨と骨が関節にはがれ落ちてしまう病気で、成長期の小中学生で多く発症します。軟骨壊死は、骨の中の細い血管が詰まることで血液が流れなくなり、軟骨細胞が死んでしまう病気です。これらの軟骨の損傷状況に応じて手術法を使い分けています。

欠損面積が1~1.5平方cmの場合、「骨穿孔術(マイクロフラクチャー法)」を行います。これは、軟骨の欠損部分を骨髄から出血する程度まで薄く削り、アイスピックのようなもので3~4mm間隔で小さな孔を複数開ける方法です。骨髄から未分化の間葉系細胞由来の線維性軟骨によって欠損部が修復されます。

また、4平方cmより大きくなると「培養軟骨移植」といって、自分の軟骨組織の一部を採取し、試験管の中で培養することによって軟骨組織を再生させ、これを損傷部分に移植する方法を用います。これは、広島大学病院の整形外科医である越智光夫教授が世界で初めて開発した方法です。保険適応もなされており、適用は離断性骨軟骨炎、軟骨欠損などで4平方cm以上の損傷が対象となりますが、軟骨壊死は対象外です。

この間の、1.5~4平方cmの損傷に対しては「モザイクプラスティ術」を行います。

 移植した骨軟骨片はそのすき間から再生してくる線維性軟骨との複合体により欠損部位が修復されます。損傷部の大きさに応じて複数の骨軟骨柱(通常5mm以下)を採取し、移植した部分がモザイクのような形状になることから、ハンガリー人の医師らによりこの術名がつけられ、現在では限局性の骨軟骨欠損の治療の標準的方法となっています。ただ、損傷部と同じ面積の新たな軟骨の欠損部が生じてしまうため,適応できる欠損のサイズには限りがあります。

 適応例としては、離断性骨軟骨炎、じん帯や半月板損傷に伴う軟骨欠損症、軟骨壊死などのほかに、膝蓋骨軟骨骨折膝蓋軟骨軟化症、初期の関節症などが対象となります。特に離断性軟骨炎はよい適応で、約90%に良好な中期成績が得られています。

 

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