モザイクプラスティ術は、若年層でかつ損傷の小さい限局性の軟骨欠損に適しているとされています。滋賀医科大学医学部附属病院・病院長の松末吉隆先生に、モザイクプラスティ術の適用の実際についてお話を伺いました。
軟骨欠損の大きさは1~4平方cmが望ましく、年齢は若年層ほど良好な結果が得られやすく、40歳以上には適さないとされています。
モザイクプラスティ術を実施する対象の最も多い症例は、若年者の離断性骨軟骨炎とスポーツによる外傷性骨軟骨炎ですが、必ずしも40歳を超えるとできないというわけではありません。たとえば骨壊死症。この病気は40歳~70歳代で多く発症し、最も多いのが一番50~60歳代です。骨壊死症については、「培養軟骨移植」の適応に当たらない病気のため、欠損部が大きい場合は、人工関節置換術も考えられます。しかし、人工関節は自分の骨を切除し、じん帯も正常な状態では残らないため、スポーツをするのが難しくなります。そこで、「まだまだゴルフがしたい」「山に登りたい」と思っていらっしゃる活動的なの患者さんで65歳までの方であればモザイクプラスティ術を行うケースがあります。
中高年になって膝が痛む病気の中で最も多いのが変形性膝関節症です。これは、加齢、肥満、けがなどによって関節の軟骨がすり減り、さらに骨が変形し痛みを生じる病気です。初期の変形性膝関節症の患者に対し、モザイクプラスティ術を実施している医師の方もおられますが、私はそれには賛同しません。加齢とともにさらに悪化し、当初は限局性があっても広がっていく可能性があるためです。
欠損の大きさが4平方cm以下で、40歳以上には適さないとされていますが、年齢で区切っているわけではなく、4平方cm以上でも適用がないわけではありません。ただ乱用は慎むべきだと思います。あくまでもモザイクプラスティ術においては、軟骨を採取する部分において障害を絶対に起こさない程度に控えめに取ることです。加えて埋め込んだところへの効果がプラスに出るというケースに限ってという考えを貫いています。
治療成績は、とくに離断性骨軟骨炎では約90%に良好な成績が得られていますが、本来は十分治せない変形性関節症に拡大している場合は、予後が思わしくないこともあります。
関節鏡を使うため、傷口が最小限に抑えられることが最大の利点です。また、小さな欠損において採取された欠損部位の障害が軽微であること、比較的ハビリテーションの開始が早いことなどが挙げられます。一方、欠点としては、手技の習得に時間が必要であること、専用の器具が必要であること、大きな欠損については限界があることなどが挙げられます。
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