原因
非典型溶血性尿毒症症候群は、免疫のはたらきを担う“補体”というタンパク質のはたらきがうまく制御できなくなることによって引き起こされる病気です。
“尿毒症症候群”という病気もありますが、その中の約1割が非典型、つまり補体に関連するタンパク質の異常によって起こるもので、その他の約9割は志賀毒素(ベロ毒素)を産生する腸管出血性大腸菌(もっとも有名な菌はO157)による感染によって発症します。
非典型であっても大腸菌の感染であっても、溶血性貧血、血小板減少、急激な腎機能悪化という3つの症状が現れるのは共通です。
補体の成分は細菌などの異物を体内から除去するはたらきがありますが、常に活性化されているわけではなく、必要なときだけはたらきます。非典型溶血性尿毒症症候群では、その制御が不能となってしまい、補体が過剰にはたらいて血管内に強い障害が現れて発症すると考えられています。
補体を調節するタンパク質の遺伝子の異常、またはそのタンパク質の機能を変えてしまうような自己抗体が背景にあり、感染、妊娠、臓器移植など免疫の状態が変化するようなイベントをきっかけに補体が過剰に活性化されて発症することが分かっています。
しかし、補体またはその調節に関わる遺伝子の異常が認められるのは全体の6割程度にとどまり、遺伝子検査を行って病的変異が見つからなくてもこの病気を否定できるわけではありません。補体の制御に関わる因子の機能を低下させる“ 抗H因子抗体”という自己抗体(自分自身の体の一部を攻撃するタンパク質)が産生されることがありますが、どのようにしてこの自己抗体が作られるようになるのかは解明されていません。
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