ずがいていしゅよう

頭蓋底腫瘍

最終更新日:
2020年08月21日
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2020/08/21
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概要

頭蓋底腫瘍(ずがいていしゅよう)とは、頭蓋底(頭蓋骨(ずがいこつ)の底部)に発生する腫瘍のことです。1つの病名ではなく、頭蓋底にできる腫瘍全てを指します。脳腫瘍には150以上の種類があるとされており、もっとも多いのは髄膜腫などの“良性”タイプですが、脊索腫(せきさくしゅ)などの“中悪性”と呼ばれるタイプのものや転移性腫瘍などの“悪性”タイプのものまで、さまざまな腫瘍が頭蓋底に発生する可能性があります。

また、目や鼻、耳など頭蓋底に近い部分にできた腫瘍が広がって、頭蓋底にまで及んだ状態のものも頭蓋底腫瘍の一部とされており、症状や進行の速さ、死亡に至るリスクなどは腫瘍の種類によって異なります。

頭蓋底腫瘍は頭蓋骨の奥底に発生するため、手術や放射線治療を行うと正常な脳や神経にもダメージが及ぶ危険が高く、これまで治療が難しい病気と考えられてきました。しかし、近年では、頭蓋底の解剖学的な微細構造の理解が進み、手術用顕微鏡や手術器具、神経モニタリングの発達によって頭蓋底へより安全に到達する方法が開発され、以前は治療が極めて困難であった頭蓋底腫瘍の手術が可能となりました。

また、周囲の組織へのダメージを最小限に抑えて頭蓋底部まで挿入可能な“神経内視鏡”や、特定の部位のみに焦点を当てて放射線を照射できる“ガンマナイフ”などの治療方法が普及したことにより、治療の適応範囲が拡大されています。

原因

頭蓋底腫瘍は頭蓋骨の底部に発生する腫瘍の総称であり、腫瘍のタイプによって発症原因は大きく異なります。遺伝子の変異などによって脳や脳周辺の組織が異常増殖することによって引き起こされると考えられていますが、多くの脳腫瘍の発生メカニズムは明確には解明されていません。

また、高齢者が増えたことに伴い、肺や大腸にできたがんが脳へ転移して発生する“転移性腫瘍”も増えているとされています。

症状

頭蓋底腫瘍の症状は腫瘍ができる部位や腫瘍のタイプによって大きく異なりますが、代表的な症状には次のようなものが挙げられます。

頭痛や吐き気

頭蓋骨は脳を守るため、非常に硬い性質をしています。通常、脳は頭蓋骨の中で髄液と呼ばれる液体に浮かぶように存在していますが、頭蓋底に腫瘍ができると頭蓋骨内部の圧力が高まり、脳が圧迫されて頭痛や吐き気などの症状を引き起こすことがあります。

目や耳などの異常

脳からは、目や耳の機能、顔面筋の動き、飲み込みや発声といった機能を司る“脳神経”が分岐しています。頭蓋底にはこれら脳神経が頭蓋骨の内部からそれぞれの器官に出発する出口が集中しているため、腫瘍によって脳神経にダメージが加わることがあります。

その結果、ダメージを受ける神経によって視力の低下、視界のぼやけ、視野の欠損、顔面の麻痺・しびれ、聴力低下、声のかすれ、嚥下(えんげ)障害などさまざまな症状が現れるのが特徴です。

運動神経麻痺

頭蓋底周囲の脳が腫瘍によってダメージを受けると、発症部位によっては運動神経や感覚神経麻痺が引き起こされることがあります。そのため、片方の手足に麻痺やしびれが生じることも少なくありません。

検査・診断

頭蓋底腫瘍が疑われたときは次のような検査が行われます。

頭部CT、MRI検査

頭蓋底腫瘍に限らず、脳内の腫瘍が疑われるときは頭部CTを第一に行います。特に、頭蓋底腫瘍は頭蓋底という骨の中に浸潤して発育することから、骨構造の変化や変形、正常構造との比較のための高精細CT検査は必須になります。

CTは脳内に発生した腫瘍を分かりやすく描出することができますが、腫瘍の種類やタイプを推測するには造影MRI検査が必要です。

頭蓋骨X線検査

頭蓋底腫瘍では頭蓋底の骨に変形を引き起こすことがあるため、一般的にはCTやMRI検査と同時に頭蓋骨X線検査を行います。

治療

頭蓋底腫瘍の治療では大きく分けると手術と放射線療法が行われます。

上でも述べたとおり、頭蓋底腫瘍は脳の奥底に発生する腫瘍であるため、頭蓋骨の一部を外して脳を露出させ、腫瘍を切除するといった一般的な“開頭手術”を行うと、腫瘍に至るまでに正常な脳や神経などにダメージを与えてしまう可能性があります。頭蓋底腫瘍は大きく前頭蓋窩、中頭蓋窩、後頭蓋窩に分けられ、それぞれに対してさまざまなアプローチを組み合わせた手術を行います。

いずれのアプローチも、皮膚を切開し、手前に存在する筋肉を外して骨を削り、脳を除けることでその深部に存在する腫瘍に到達しますが、もっとも重要な構造である脳にいかに負担をかけずに頭蓋底に進入するかがポイントなり、適切なアプローチの選択に加えて、各種神経モニターや術中ナビゲーションを駆使して合併症の低い手術を目指します。狭い術野からでも効果的に腫瘍摘出を可能にする神経内視鏡は非常に有用です。

このため、現在では、脳内に内視鏡を挿入して腫瘍を切除する“神経内視鏡治療”が行われることもあります。また、下垂体腫瘍など腫瘍のある部位によっては、鼻の穴から医療機器を挿入して腫瘍を切除する手術が行われることもあります。

一方、放射線治療は病変部位のみに放射線を集中的に照射することができる“ガンマナイフ”と呼ばれる治療が行われることが多くなっていますが、脳腫瘍の中には放射線治療がほとんど効かないタイプのものもあるため、全てのケースで放射線治療が行われるわけではありません。

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