概要
4p欠失症候群は、ウォルフ・ヒルシュホーン症候群とも呼ばれ、4番染色体短腕末端を含むある程度の領域の欠失によって引き起こされる病気です。希少疾患で、発症頻度は出生5万人に対し1人程度といわれています。
症状は特徴的な顔立ち、成長障害、知的障害、精神運動発達遅滞、難治性てんかん、骨格異常、難聴など多岐にわたります。
4p欠失症候群の患者の過半数は、4番染色体短腕末端が突然変異により欠失することで発症しますが、両親のどちらかが持つ均衡型転座(4番染色体短腕末端と別の染色体末端との間で染色体の入れ替えが生じて結合された状態)に由来している場合もあります。
治療は、認められる症状によって異なります。たとえばけいれん発作には抗てんかん薬による薬物療法、先天性心疾患に対しては外科手術など、発達の遅れに対しては理学療法や言語療法などの療育的支援が行われます。
原因
4p欠失症候群は、4番染色体短腕末端の欠失によって生じます。
ヒトは23対、合計46本の染色体を持っています。同じ番号の染色体がそれぞれ2本ずつ大きい順に1番から22番まで番号が決められており、それ以外に性別を決める性染色体が2本あります。染色体は動原体(セントロメア)と呼ばれる部分でくびれた形をしており、その動原体を境に長いほうを長腕、短いほうを短腕といいます。
4p欠失症候群の場合、4番染色体の短腕(中でもFGFR3、LETM1、NSD2が位置する 4p16.3領域と呼ばれる部分)に欠失があり、本来あるべき遺伝子の機能が失われることでさまざまな症状が引き起こされると考えられています。ただし、欠失の範囲や症状は人によってさまざまです。
症状
4p欠失症候群の患者は、前に突き出た額、離れた目、平たい鼻、小さいあごなど、特徴的な顔立ちをしています。症状としては、胎児期から始まる成長障害、筋緊張低下、精神運動発達遅滞、知的障害が挙げられ、程度に差はありますが、全ての患者にみられるといわれています。また、てんかん重責もよくある症状で、先天性心疾患がみられる場合もあります。
4p欠失症候群はほかの病気を合併することも多く、顔面非対称や難聴、眼瞼下垂(まぶたが下がる病気)、脳形態異常、唇裂口蓋裂などがみられる場合もあります。
検査・診断
身体的な特徴から4p欠失症候群が疑われる場合、血液を用いた染色体検査が行われます。染色体ギムザ染色法、FISH法などもありますが、2021年に保険適用になったマイクロアレイ染色体検査では欠失の有無と同時に欠失サイズも明らかにすることができ、ほかの染色体が絡んだ不均衡転座も診断可能です。
治療
症状に対する薬物療法や外科的治療、療育的支援が行われます。
たとえば、けいれん重責に対しては抗けいれん薬の投与を行います。摂食障害があれば嚥下訓練を実施したり、胃ろうを造設する外科的治療を行ったりします。また、心疾患がある場合には、薬物療法や手術が検討されます。
精神発達の遅れに対しては、理学療法や作業療法、言語療法などの療育的支援を行います。
4p欠失症候群では多領域にさまざまな合併症が生じることから、眼科、耳鼻咽喉科、循環器内科、整形外科などさまざまな診療科が協力して治療にあたります。
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