概要
トルエン中毒・シンナー中毒とは、塗料を塗りやすくするために使用されるシンナー及びその主成分であるトルエンによって引き起こされる中毒を指します。有機溶剤中毒の一種です。換気を十分に行わずに作業をすることや、遊び半分でシンナーを吸い込むことで発症することがあります。発症すると、頭痛や吐き気、判断力の低下などを生じ、暴露量が多い場合には、意識が消失することもあります。
原因
トルエン・シンナーを過剰に体内に取り込むことで発症します。シンナーは塗料を溶かす溶剤として使用されており、成分としてトルエンを含んでいます。
トルエンやシンナーを吸い込むと中毒を起こす危険性があることから、シンナーには香料が含まれており、環境中のシンナーの濃度が上昇した場合に察知できるよう工夫されています。
換気が不十分な部屋でトルエンやシンナーを吸い込む、といった状況において中毒が生じます。目や皮膚などに影響を及ぼすこともあります。
また、トルエンやシンナーは消化管からも吸収されやすく、誤って飲み込むことでも中毒を生じる危険性があります。
症状
原因物質に暴露されると、急性期の症状が出現します。中枢神経に影響を及ぼすことから、頭痛や吐き気、ふらつき、判断力の低下、歩行障害などが出現します。暴露量が多い場合には、意識消失を来たし、最悪の場合死に至ることもあります。
肺や心臓などの臓器が影響を受けることもあります。肺炎を起こすと咳や発熱、呼吸困難などが、心臓に影響が及ぶと不整脈や心停止などが引き起こされます。その他、腎不全や電解質異常、皮膚の発赤や水ぶくれ、肝障害、下痢などが出現することもあります。
急性期の症状だけでなく、慢性的な頭痛や疲れやすさ、吐き気などにつながることもあります。また、筋肉や神経、腎臓などの臓器障害が慢性的に進行することもあります。
検査・診断
トルエン中毒・シンナー中毒は、症状が出現した状況を確認することから疑われます。状態を評価するために、血液や尿を用いて代謝産物を測定したり、臓器障害や電解質異常、ガス交換異常の有無などを確認したりします。また、不整脈や肺炎などを生じていないか確認するために、心電図や単純レントゲン検査などが行われます。心臓や肺の評価は、中毒の重症化を判定するためにも重要です。
治療
トルエン中毒・シンナー中毒が疑われる際には、随伴症状や合併症の状態、暴露後の時間などを考慮して治療方針が決定されます。トルエンやシンナーに対する解毒剤は存在しないため、対症療法が基本となります。
口からの摂取が疑われる場合には、胃洗浄、活性炭や下剤の使用などが検討されます。気道を介した中毒の場合には、まず、新鮮な空気を大量に吸い込み、体内への摂取量を軽減します。必要に応じて、酸素投与や挿管による人工呼吸管理、除細動、心臓マッサージなどが行われます。
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