概要
声帯ポリープとは、声帯に生じる炎症性のこぶのことです。声帯の振動する場所に声帯ポリープができることで、声がうまく出なくなります。ほとんどの場合、腫れの箇所は限定的で、片側にできることが多いです。発病から期間が経ち、重症化してしまうと、反対側の声帯にも影響を与える可能性があります。
声帯ポリープは職業柄、声をよく使う人によく見られる傾向があり、歌手や教師、ナレーターなどに多く見られます。また、大声を出した後にも発生しやすいです。声帯ポリープができた場合、声の使用を控え、局所の安静を図ります。症状が強い場合や発生から時間が経っている場合は、手術など治療介入が選択されます。
原因
声帯は空気の通り道である気管の入り口に、左右にひだ状に位置しています。空気の行き来を通じて声帯を動かし、声を形成します。声帯ポリープは声帯の振動に重要な部位にポリープができ、空気の振動に支障が生じることから声がうまく出せなくなります。声帯ポリープは声の出し過ぎが原因といわれており、声帯を酷使することで声帯の粘膜に出血をきたすことからポリープ形成に至ると考えられています。
そのため、日常的に声を出す方に声帯ポリープを認めることが多く、教師や歌手、ナレーターや政治家といった職業は発症リスクとなります。また、日常的に声を出していなくても、運動会やスポーツ観戦において大声で応援することをきっかけとして声帯ポリープが発生することもあります。習慣的な喫煙も要因のひとつとして知られています。
症状
主な症状は声がれ(嗄声)ですが、のどや発声時に違和感があったり、声がやや低音になったりすることもあります。声帯ポリープの存在は、振動体である声帯に邪魔なものがぶら下がっているのと同じ状況なので、声門がうまく閉じず、粘膜の波動を破壊(損なって)してしまいます。声が出にくくなる理由は、ここにあります。
検査・診断
声帯ポリープの診断は、声帯局所の観察を行うことからなされます。局所観察のためにファイバースコープと呼ばれる細いカメラを用います。また、喉頭ストロボスコープを用いて声帯の振動を観察することもあります。声帯には悪性腫瘍が発生することもあるため、局所病変が悪性かどうかを迷うときには直接病変部位から細胞を採取(生検)し、顕微鏡を用いて病理検査を行うことあります。
治療
初期段階では、局所の安静や消炎薬の投与、ステロイドホルモンの吸入治療を行います。これらの内科的治療でポリープが消失することもありますが、これが奏功しない場合には手術を検討します。
喉頭顕微鏡下手術
通常の手術は入院の上、全身麻酔をかけて喉頭顕微鏡下手術を行います。しかし、全身麻酔ができない場合、患者さんがどうしても入院できないという場合などは、ごく小さなポリープに限り、局所麻酔でファイバースコープを用いた摘出を行うケースもあります。
手術後、声帯に傷がつくため、安静をとって1週間程度声を出すのを控える必要があります。実際にどの程度の期間安静期間を設けるかどうかは、治療を受ける医療機関や患者さんの職業によっても異なります。
再発リスク
声帯ポリープは治療法にかかわらず再発するリスクが伴います。治療によって声帯ポリープが改善しても、声帯ポリープのできやすい環境が整えられたわけではありません。そのため、日常生活において、いくつか注意をしながら再発の予防に努めることが大切です。
特に声の出し方が悪いと声帯ポリープがやすいばかりではなく、治療完了後も再発しやすくなります。発声の仕方にも注意し、声帯ポリープが生じにくい発声の仕方を身につける必要があります。また、風邪をきっかけに声帯に炎症が生じると、声帯ポリープが再発することもあるので、風邪に注意することも重要です。
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