発達を見守りながら私たち自身も“発達”している

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発達を見守りながら私たち自身も“発達”している

結節性硬化症診療連携チーム(小児部門)酒井 康成先生のストーリー

九州大学病院 小児科 副科長
酒井 康成 先生

結節性硬化症のお子さんを診るとき大切にしていること

小児科で出会う結節性硬化症のお子さんは、発達の遅れや、けいれん発作の相談で来院されることが多いです。赤ちゃんであれば、“点頭てんかん”と呼ばれる難治性てんかんとして他院から紹介されることも少なくありません。そのとき、皮膚の白斑を含めて身体徴候の見逃しがないように、よく診察します。そのうえで脳波やMRI、そのほか必要な検査を追加し、結節性硬化症として神経系と神経以外の合併症がないかを確認します。診断がついたら、どのような病気か、全体像を両親にお伝えします。結節性硬化症に合併するてんかんは薬が効きにくい場合が多いこと、知的発達の遅れを伴うことが多いこと、自閉(スペクトラム)症と診断される子がいること、などです。これらの問題点を一度に話すと、ご両親は混乱されますので、まずは長く向き合わなければならない病気であることを、きちんとお伝えします。次に述べる成長後の問題点については、適切な時期に少しずつ説明します。

結節性硬化症は、神経・発達症状が来院理由であることが多いですが、眼科、皮膚科、歯科などの問題点には気づかれていないこともあり、集学的管理が必要です。また思春期以降では腎臓、成人期には肺病変といった、年齢とともに問題点が変化することも特徴です。成人後の診療体制に関しても、結節性硬化症診療連携チーム内の情報共有が重要になりますので、泌尿器・前立腺・腎臓・副腎外科、脳神経内科、精神神経科、脳神経外科、皮膚科、呼吸器科、小児歯科・スペシャルニーズ歯科、眼科の先生方との定期的な討議を続けていくことをお話しします。

病気の原因については、細胞の成長や、たんぱく質の合成に重要な役割を果たす遺伝子に関連することを、ご両親の気持ちに配慮しながら少しずつお話しします。ただし、遺伝の話はとても繊細です。遺伝子の異常が必ずしも両親からの遺伝を意味しないことを明確に区別します。結節性硬化症は、多様な症状を示す病気であるため、さまざまな診療場面を想像しますが、およそこういった流れでこれまで説明してまいりました。

子どもの発達を通して自分自身も“発達”している

最近、小児科の説明会の時によくお話するのですが、小児神経学は、子どもの発達を見守りながら支える専門領域です。その子とご家族に何ができるのかを考え続けることで、自分自身も多くのことを学び、専門医として発達しているように感じます。

もう一つ、小児科の特徴は、ひとつの診療科の中に、神経だけでなく心臓、血液、腫瘍、免疫、腎臓、内分泌、感染症、新生児など、複数の専門グループがあります。私たちは専門が違っても同じ小児科医ですので、横のつながりを重視しており、各セクション間の垣根をなくしています。小児期に起こる問題全般をカバーし、柔軟に対応するためです。

九州大学病院 結節性硬化症診療連携チームが果たす役割も、全く同じように思います。小児期だけでなく、その後成人した結節性硬化症患者さんの健康を長く支えるために、病院内の異なる診療科から構成された連携チームが必要でした。昨年、江藤 正俊(えとうまさとし)教授(泌尿器・前立腺・腎臓・副腎外科)をはじめとする先生方のリーダーシップで、これが実現しました。本連携チームの取り組みが、北部九州の結節性硬化症にかかっているお子さんとご家族の安心につながれば幸いです。

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