常に患者さんの立場で考え、決断できる侍のような外科医でありたい

広島大学原爆放射線医科学研究所 腫瘍外科 教授 / 広島大学大学院医歯薬総合研究科 腫瘍外科 教授 / 広島大学病院 呼吸器外科 教授
岡田 守人 先生

常に患者さんの立場で考え、決断できる侍のような外科医でありたい

度重なる偶然により、自らの手で奇跡を生んだ岡田守人先生のストーリー

公開日 : 2017 年 11 月 01 日
更新日 : 2017 年 11 月 02 日

運命のいたずらで、呼吸器外科医の道へ

私の人生は、まさに天の気まぐれに左右された人生であったと思います。しかしその気まぐれが今の私を形作っているわけで、今となっては「よかった」と神様にとても感謝しています。

会社員の父のもとで育った私は、漠然と「自分が企業のようなひとつの体制・システムの一員として働くイメージが湧かない」と感じていました。より自分の個性や実力を発揮できる、プロ職人のような仕事をしたい。子どものころに病気で長期入院治療を経験したことも関係したのでしょう。気がつくと外科医を志すようになっていました。そして医学部を卒業後、私は神戸大学の第2外科へ入局しました。この入局が、私の人生を大きく変える転機となることを知らずに。

一般外科を学びながらいよいよ専門を決めるというころ、私は心臓外科に興味を持っていました。それは血塗れになりながら患者さんの生命を直接左右する、ダイナミックな手術に憧れを抱いていたからです。

心臓外科医になりたいとの思いから、神戸大学の研修先のひとつにあった、心臓外科では全国トップレベルといわれる兵庫県立姫路循環器病センターを志望しました。しかしもう一人、同じ志望先の同期がいたのです。残念なことに枠は1名のみ。じゃんけんかくじ引きでどちらが行くか決めることになりました。その結果、私は兵庫県立姫路循環器病センターではなく、兵庫県立がんセンターの呼吸器外科に行くことになってしまいました。こうして、私は不本意にも心臓外科医ではなく呼吸器外科医としての道を歩む方向になったのです。

師匠の名技に魅せられ、呼吸器外科の魅力を知る

「なぜ心臓外科を目指していた私ががんセンターの呼吸器外科に……」

兵庫県立がんセンターに赴任するまでは、正直、人生が狂ったと思うほど重い気持ちでした。しかし、その気持ちは師匠となる坪田紀明先生に出会い、一気に吹き飛びます。

坪田先生は、肺がん手術の権威と呼ばれ、呼吸器外科医のなかで知らない者はいません。彼のクーパー(手術用の先の丸いはさみ)さばきは、神業以外の何物でもありませんでした。坪田先生は、30cmもの長さのクーパーを、通常は刃先を外側に向けて持つところを手首を返して手前に向くように持つのです。この「逆さ持ち」によって、ぶれが抑えられ、より細かな動きが可能になります。

坪田先生の手技をみて感銘を受けた私は、「呼吸器外科も興味深い!」と心を新たにしたのです。それからは坪田先生の下で、手術手技の基本から応用までの手ほどきを受けました。

世界の肺がん手術の常識を変えた「ハイブリッドVATS」の開発

そして大学に戻って大学院生としての研究生活やアメリカ留学を経て、再び日本へ帰ってきた私はこう考えたのです。

「患者さんにもっと優しい手術はできないだろうか」

肺がんの開胸手術では長い皮膚切開に加え肋骨・筋肉を切断し胸を大きく開いて行います。がんを治すためとはいえもちろん傷は大きく、骨まで切ってしまいますから、術後の回復に時間がかかるうえに痛みもあります。

患者さんに優しい手術を目指すために、私は坪田先生から教えていただいた「カードサイズVATS」のアプローチをさらに低侵襲に発展させ、「ハイブリッドVATS」と名付けました。

ハイブリッドVATSとは、開胸手術と胸腔鏡下手術のよい点を組み合わせた手術です。通常、胸腔鏡手術ではモニターで患部をとらえますが、ハイブリッドVATSではモニターのほかに、肺の病巣を取り出すための4センチほどの穴から肉眼で患部を3次元に観て触ってその状態をとらえることができます。これによって、確実に必要充分な病変を切り出すこと、さらに気管支形成術などの難度の高い術式への応用が可能で、結果的に退院までの術後日数は平均4〜5日となり、開胸手術の半分以下になりました。

※ハイブリッドVATSの詳細は、『肺がん治療の進化-ハイブリッドVATSとは?』をご覧ください。

ハイブリッドVATSは、欧米で最も頻用されている胸部外科医向けの手術書の冒頭で「胸部外科の歴史を変えた手術」のひとつとして紹介されました。世界で私の名も知られるようになったころ、坪田先生から嬉しい言葉をもらいました。

「私のもとにとどまることなくさらなる飛躍に修練を続けたからこそ、私を超えることができたんだ。君に出会えて幸せだよ」

不本意だった呼吸器外科医の道で、「人間万事塞翁が馬」を思い知りました。

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広島大学原爆放射線医科学研究所 腫瘍外科 教授 / 広島大学大学院医歯薬総合研究科 腫瘍外科 教授 / 広島大学病院 呼吸器外科 教授

岡田 守人 先生

ハイブリッドVATSと呼ばれる低侵襲な肺がん内視鏡手術の開発者として、世界的に知られる呼吸器外科医。「患者さんのことを第一に考え医療を行う」ことをモットーとし、患者に優しい肺機能温存縮小手術(区域切除)に積極的に取り組む。また、自身が開発したハイブリッドVATSの次世代への伝承にも尽力している。 TBSテレビ「これが世界のスーパードクター」、HNKテレビ「ドクターG」などのテレビ出演、週刊朝日、週間文春などの雑誌に頻繁に取り上げられている。

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