院長インタビュー

地域に密着した在宅医療の提供を目指すクローバーホスピタルの取り組み

地域に密着した在宅医療の提供を目指すクローバーホスピタルの取り組み
篠原 裕希 先生

医療法人篠原湘南クリニック クローバーホスピタル  理事長

篠原 裕希 先生

この記事の最終更新は2018年03月06日です。

神奈川県藤沢市にある医療法人 篠原湘南クリニック・クローバーホスピタルは、1988年に篠原湘南クリニックとして開設されました。回復期・慢性期の患者さんの入院治療から在宅医療まで、幅広い医療の提供に努めています。

若い世代が多いイメージのある湘南地域ですが、高齢化は着実に進んでいます。在宅医療のニーズが高まるなかで、同院はどのような取り組みを行なっているのでしょうか。理事長である篠原 裕希先生にお話を伺いました。

当院は、在宅医療から入院までのトータルケアを理念として掲げる篠原湘南クリニックグループに属する病院です。グループ内には在宅療養支援診療所、老人保健施設、デイケア、訪問看護ステーションや有料老人ホームなどがあり、各施設が協力して地域住民のサポートができる体制つくりを目指しています。

2018年2月現在、当院は44床の地域包括ケア病棟や、58床の回復期リハビリテーション病棟を含む165床の病床と11の診療科を備えており、在宅医療におけるさまざまなニーズに対応しようと努めています。

 

当院は開設当初、療養病棟だけで運営していました。その後、時代と地域のニーズに合わせて回復期リハビリテーション病床、地域包括ケア病床などを整備しました。


当院の地域包括ケア病棟は、高度急性期病院で治療を受けた方の受け入れ(ポストアキュート)と、自宅や介護施設の患者さんの病状が悪化したときの受け入れ(サブアキュート)の2つの機能を持っています。
夜間も受け入れを行なっており、二次救急病院に近い体制のため、スタッフの疲弊も考慮して常に定員よりも多く人員を配置するように心がけています。

当院には緩和ケアに関する知識・技術を持つ専門医がいるため、終末期のがん患者さんの対応も積極的に行なっています。がんによって亡くなられる方は年間約35万人であり、死亡原因としては最多となります。現在日本には約8,000床の緩和ケア病床がありますが、すべてのがん死に対応することは不可能です。緩和ケア病棟以外でもがん患者さんの対応をすることが必要となり、当院では療養病棟のレベルを上げることによりがん患者さんのトータルケアを行っています。

 

当院では、退院時に必要なさまざまな調整を担当する看護師を配置しています。担当看護師は、介護保険や各施設の特徴などを学んでおり、退院時に在宅主治医やケアマネージャー、ご家族へアドバイスをしています。

 

たとえば、以前はご家族の方に退院後に介護施設を探すようにだけ案内していました。しかし、現在はその点でも退院時調整を担当する看護師がアドバイスできますし、入居先のケアマネージャーにも話がすぐに伝わります。

このような役割を担う看護師を含め、MSWなど複数のスタッフを配置することにより、入退院がスムーズになり、病棟看護師の負担軽減にも役立っています。

 

一般的に病院は、在宅復帰率を重視しています。

在宅復帰とは、入院患者さんが自宅、又はそれに準ずる施設に退院することです。当院では、入院当日から退院というゴール設定しています。それを多職種のスタッフたちと情報共有し、複数回の主治医を交えたカンファレンスをもって病態の改善度、リハビリ進捗度、介護サービスの調整を行います。これはとても重要な役割であり、患者さん側にも大きなメリットがあります。病院側も病床占床率・稼働率アップが見込めます。


 

最近では医療介護従事者向けの「病院・在宅連携研修会」と市民向けの「看取りでの経験を語る会」という講演会を開催しました。前者は、病院スタッフと在宅医療スタッフが一堂に会し、相互理解を深めることで、よりよい連携の実現を目指すものです。後者は若手医師から是非やりたいと提案があり、毎週集まってプログラムを検討しました。おかげさまでどちらも150名ほどの方にお越しいただきました。

これから地域の高齢化が進んでいくなかで、終末期ケアやお看取りはより身近な医療になっていくと思います。そのため、このような講演会を積極的に実施していこうと考えています。

 

当院が現在行なっているのは、有資格者の方が入職した際に、単純に人手不足のところに配置するのではなく、実際にどんなことをやってみたいのかをヒアリングし、可能な限り希望に沿った部門に配置するということです。そこを確認しておかないと、病院と職員とのあいだでミスマッチが起きてしまうためです。
 

また、入職後1か月、3か月といった節目の時期に面談を行い、職場に対する印象や本人の思いなどを聞く取り組みも始めました。
たとえば、この面談を行い、退職を考えている方の本音をヒアリングできれば、問題の解決や体制の改善につながり、最終的には退職を考え直してもらうこともできるのではないかと思っています。この取り組みはまだ始めて3か月ほどですが、いい結果につながることを期待しています。

 

当院の現在の課題としては、患者さんの自宅で行うお看取りへの対応が挙げられます。

 

ご家族のなかには、自身は延命治療を受けたくない一方で、患者さんであるご両親などには、なるべく延命治療を受けて、1日でも長く生きていてほしいという思いの方も多くいらっしゃいます。全体的に、日本ではお看取りに関する認識が成熟していないために、そういうギャップが出てくるのだと考えられます。そのギャップを埋めるために、我々と患者さんは繰り返し話をしていかなければならないと思っています。

 

たとえば、患者さんが口から食事ができなくなったときにどうするか、というのはとても重要な問題です。延命措置を行わないとしても、食事がとれず点滴もしないのは倫理的に問題があるのではないか、あるいは点滴をしても何も食べられないというのは、患者さんが苦しいだけではないか、と思う方もいらっしゃいます。しかし、どちらも一概にそうとは言い切れません。繰り返し話し合って認識の共有化をすることが大事です。

 

若手の医師や、現場に立つ看護師には「あなたたちだったらどうしますか」というテーマで研修の機会を設け、こういったお看取りに関する問題について考えてもらっています。

 

篠原 裕希先生

私たちが在宅医療において大事にしていることは、「だれでも、いつでも、いつまでも」です。これは、当院は24時間体制であり、家であっても介護施設であっても、最期まで責任をもってケアを行う、という意味です。
当院は、患者さんご本人にもご家族にも、最期の時間を大切にしていただきたいと思っています。そのためにも、当院は「だれでも、いつでも、いつまでも」をモットーに丁寧な医療とケアの提供に努めて参ります。

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