院長インタビュー

地域の救急を守る─富士市立中央病院の取り組み

地域の救急を守る─富士市立中央病院の取り組み
柏木 秀幸 先生

富士市立中央病院 院長、東京慈恵会医科大学 客員教授

柏木 秀幸 先生

この記事の最終更新は2018年04月23日です。

静岡県富士市に位置する富士市立中央病院は、地域の救急医療を守るために多くの取り組みを行っています。地域の病院や富士市医師会と連携を密接にすることで、機能分担を図っています。また、同院では後進の医師の育成や看護師の育成など、若手の医療従事者に対する研修にも力を入れています。同院の取り組みについて富士市立中央病院 院長の柏木秀幸先生にお話を伺いました。

富士市立中央病院よりご提供

当院は、1949年3月に開院いたしました。開院当初は、町立中央病院として富士市本市場で診療にあたっていました。1954年に富士町、田子浦村、岩松村が新設合併して富士市となり、当院の名称も市立富士中央病院となりました。

その後、建物の老朽化にともない、1984年8月に現在の富士市高島町に新築移転し、同時に富士市立中央病院と改称いたしました。新築移転後も、地域の医療ニーズに対応するため診療科の充実や、救急患者さんの受け入れなどを行ってきました。また、当院は1991年に別館を増築いたしました。現在、別館の2階には女性専用外来を開設し、女性のプライバシーに配慮した医療の提供を心がけています。当院は、地域周産期医療センター並びに地域がん診療病院としても地域医療に貢献しています。2017年からは地域医療支援病院として、地域医療を牽引するようになりましたが、4月より地域医療連携センターを設立して、地域医療連携の強化を行うようになりました。

当院では、地域の病院や富士市医師会と連携を取り、地域の救急患者さんの受け入れを行っています。地域の病院には、一次救急の受け入れを担っていただいています。入院が必要な患者さんや、二次救急の患者さんは当院で受け入れるようにしています。

当院では、スタッフが一丸となり「地域の二次救急を必ず受け入れる」ことを心がけています。また、スタッフにもこの考えを共有し、地域の二次救急を守ることに尽力しています。

富士市には、二次救急を受け入れることが可能な病院が少なく、当院は市立病院としてだけではなく、地域の中核病院として救急患者さんを守っていかなくてはならないと考えています。

また、当院で対応が難しい三次救急の患者さんは、救急車やドクターヘリを使って三次救急を受け入れている病院に搬送しています。

富士市立中央病院よりご提供

当院の近くには、東名高速道路や新東名高速道路があります。静岡県内の病院へ三次救急の患者さんを搬送する際には東名高速道路などを使っています。

また、静岡県外の病院への搬送には、ドクターヘリを利用することもあります。

当院の救急患者さんの受け入れは、各診療科の医師がお互いに協力しています。

また、医師の尽力はもちろんですが、看護師などすべての医療スタッフの尽力で救急患者さんを受け入れることができています。

富士市立中央病院よりご提供
富士市立中央病院よりご提供

当院は基幹型臨床研修病院に指定されています。基幹型臨床研修病院とは、厚生労働省によって指定された臨床研修を行える病院です。基幹型では、その病院が独自で研修プログラムを定めることができます。当院は基幹型臨床研修病院に指定されているため、地域の医療を支える若手医師の育成に尽力することができます。また、富士市には市立看護専門学校もあります。このように富士市内では、医師や看護師などの医療従事者を育成することができます。

当院で研修を行うことで、医師としての経験や技術以外にも人間性を育てていけるように尽力していきたいと思います。

当院は地域の中核病院として、救急患者さんの受け入れなども行っているため、日々さまざまな症状の患者さんが来院されます。さまざまな症状の患者さんの診察を行うことで、医師としての経験を多く積むことができるのではないかと考えています。多くの患者さんを診ることで、患者さんとの接し方や向き合い方を学んでいってほしいと思います。

また、当院の研修を通して、患者さんひとりひとりに向き合うことのできる医師になってほしいと思っています。

富士市立中央病院よりご提供

富士市では、医師をはじめとした医療従事者の育成のために尽力しています。ひとつが、富士市立看護専門学校での看護師の育成です。同校は国家試験合格率5年連続100%を達成しています。また、助産師については卒業後に当院での就業を条件とした修学金制度も独自で行っています。さらに静岡県では、看護師や医師の育成に力を入れており、さまざまな奨学金制度があります。

これらの取り組みには、地域や静岡県の医療を担う方を、地域で育てていこうという思いがあります。

当院では、将来医療の道へ進むことを考えている中高生に対して1日職場体験を開催しています。高校生の1日職場体験では、医師と薬剤師のもとで職場体験をしていただきます。職場体験は、実際に白衣を着て行います。

また、1日ナース体験も開催しています。ナース体験でも、実際にナースウェアを着用して、さまざまな体験をしていただいています。中高生のときに医療の現場を知ってもらうことで、医療従事者になるという夢を持ってほしいと思い、取り組んでいます。

2018年3月現在で、当院が現在の富士市高島町に新築移転して30年以上が経過しました。富士市では、10年後の病院建替えの準備が始まっています。

私は、当院を建替える際には研修医・学生のためのスペースを新しくつくりたいと考えています。研修医は、大学を卒業後に当院に研修に来ます。私は、大学での教育は大切だと思いますが、大学を卒業した後の研修病院で行う教育はさらに重要だと考えています。当院を研修病院に選んだ若手医師に多くの知識や技術を共有していただくために、教育環境の充実を検討しています。

当院は、地域の中核病院として医療の提供に尽力してまいります。地域の二次救急を必ず受け入れることや、若手の医療従事者を教育することで、地域の医療を守っていきたいと考えています。また、地域との連携をより密接にしていきたいと思います。たとえば、地域のみなさまには、ご自宅付近の病院でかかりつけ医をつくっていただきたいと考えています。地域のかかりつけ医では対応が難しい病気や、救急医療が必要な場合に当院を頼っていただきたいと思います。当院は、地域のみなさまにとって、もう一人の主治医という立場になりたいと考えています。

地域のみなさまや、地域の先生方が困ったときには当院を頼ってください。

また、当院は地域がん診療病院や、災害拠点病院など多くの指定病院になっています。そのため、地域で災害があった場合には、当院を中心に災害医療を行っていきます。地域の医療ニーズに対応できるように、スタッフ一同努力してまいります。

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  • 富士市立中央病院 院長、東京慈恵会医科大学 客員教授

    柏木 秀幸 先生

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