ふくやま病院

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兵庫県明石市硯町2丁目5-55

山陽電気鉄道本線「西新町」駅 徒歩3分

078-927-1514

「また来てね」と患者さんにいえる病院でありたい−ふくやま病院の取り組み

院長インタビュー画像

ふくやま病院は、1974年に明石市西明石に開院し、43年間地域に密着した医療を実施してきました。2016年に新しく明石市硯町に新築移転し、これまで一般病棟で行っていた緩和ケアの専門病棟をオープンしました。新しくなった同院は、一般診療のほかに、急性期病院やがん専門病院のバックアップおよび退院支援、緩和ケアや在宅療養のサポートに取り組み、患者さんを中心に地域医療連携を行っています。

ふくやま病院が担うべき医療と今後のあり方について、理事長の譜久山 剛先生にお話を伺いました。

ふくやま病院の沿革と地域における役割

当院は、1974年4月に、19床の有床診療所の譜久山外科として開院しました。開院以降、病床数を増やしながら、明石市西明石の地域医療の充実に励んできました。1993年には院内保育園を開設、1996年には野々池在宅介護支援センターを開設し、地域医療を支えてきました。

2016年には明石市硯町に新築移転しました。当院では、内科・外科・整形外科を中心とした診療を行っています。なかでも、糖尿病などの生活習慣病、消化器疾患、肛門疾患、整形外科では股関節や膝関節の人工関節手術に力を入れています。さらに、「基幹病院では手が回らない領域の医療を提供すべき」という考えのもと、緩和ケアの患者さんを受け入れています。明石市には、急性期医療を担う総合病院やがんセンターなどがありますが、その病院と緩和ケアを行う病院との間に連携がありませんでした。そこで、兵庫県立がんセンターと緩和ケアの基本的な知識を共有する勉強会を開き、互いの連携を深めてきました。

2017年5月に20床の緩和ケア病棟を開設して、患者さんとご家族が安心して緩和ケアを受けることができる環境が整いました。

がんと診断されたときからの切れ目のない緩和ケアが必要

以前は、緩和ケアは「治療が難しい状態になってから」と思われていましたが、今では、「がんと診断されたときからの切れ目のない緩和ケアが必要」といわれています。近年では、化学療法のみの肺がん患者さんと、化学療法と緩和ケアチームによる月に一度以上のサポートを受けた患者さんの生活を比較調査したところ、緩和ケアチームによるサポートを受けた患者さんのほうがQOL(生活の質)の向上やうつ症状の軽減、さらに生存期間の向上が認められる、という集計結果が出ています。

当院では、兵庫県立がんセンターと連携して、抗がん治療を受ける患者さんに対して、化学療法や手術はがんセンターで行い、それと並行して緩和ケアを定期的に当院で受ける、というしくみを作りました。がん治療を始めたときからその患者さんをサポートすることができれば、患者さんは少しでも気持ちに余裕のあるときから、さまざまな状況への準備をすることができます。私たちも患者さんとの信頼関係を構築することができます。

がんセンターのような専門病院では対応しにくい、心理的・社会的な問題に対して、多様な職種のスタッフで協力して柔軟に対応します。訪問看護ステーションとも連携をしており、患者さんが、主体的にがんと向き合いながら、その人らしく過ごせるよう、サポートしていきます。

がん治療法のひとつとして、緩和ケアを早期から実施することが大切であると、世の中にどんどん発信したいと思っています。

がんに罹っても、年齢を重ねても、住み慣れた地域で安心して過ごせるように

当院の在宅医療部は、地域のみなさまが住み慣れた場所で安心して生活していけるように、地域の開業医の先生方や、当院の「訪問看護ステーションふくやま」や地域の介護サービス事業所などと連携して、在宅復帰支援に取り組んでいます。

地域の開業医の先生方とは、勉強会を開いたり意見交換をしたりして、連携を深めてきました。患者さんの看取りに関しても、日頃連携している開業医の先生方から患者さんの状況を聞いていれば、終末期に当院に入院していただくこともスムーズにできますし、当院が在宅療養支援をしてご自宅でお看取りすることもできます。その選択は、患者さんとご家族が決めることだと考えています。

これからも、院内での連携はもちろん、地域の医療機関や介護サービス事業所、行政とのネットワークを強化することで、地域のみなさまと地域の医療機関や福祉サービスとのつなぎ役として尽力していきます。

KM-CART療法を使った新しい腹水治療の推進

消化器や婦人科のがんでは、進行して終末期になると、腹水が溜まることがあります。腹水が溜まると、便秘や食思不振、また体が重く歩くのに支障をきたすことがあります。腹水は抜くと血圧が下がることがあったり、抜いてもまた溜まるので、腹水治療には大変苦労してきました。

当院では、KM-CART療法という画期的な腹水の治療法を実施します。ではKM-CART療法は従来の治療とどのような点が異なるのでしょうか。

KM-CART療法のしくみ

KM-CART療法とは、患者さんの体内に溜まった腹水をすべて抜き取り、抜き取った腹水を特殊なフィルターでろ過し、必要な蛋白成分を濃縮して点滴で静脈内に戻す方法です。蛋白成分を血液に還元することで、血圧の急激な低下やそれにともなう合併症を防ぐことができるのです。

従来の腹水治療は、利尿剤を使ったり、腹水をろ過する方法(従来型CART療法)はありましたが、従来型CART療法では、1リットルの腹水をろ過するのに30分から1時間かかっていました。KM-CART療法だと10分程度で処理できるようになり、また、ろ過方法の工夫により従来型CARTと比べてより多くの蛋白成分を回収でき、発熱などの合併症が少なくなりました。これによって大量腹水でもKM-CART療法により安全に全量の腹水を抜くことが可能になったのです。

この治療によって、起き上がることも難しかった患者さんの症状が緩和し、食事ができるようになる方もいます。すると「頑張って治療をしよう」という意欲にもつながります。

KM-CART療法の効果と全国への普及へ

これまでがんの終末期になってから実施していた腹水治療ですが、早期から実施することで、腹水がなくなれば、患者さんは楽に食事が取れたり、十分な休息・睡眠が取れるようになったりします。これにより、患者さんのQOL(生活の質)が格段に上がり、治療に対して前向きになります。医療者側も、腹水をコントロールしながら、がん治療をすることが可能になります。

腹水はたくさん抜いてはいけないという、これまでの常識を覆す治療法のため、このKM-CART療法を実施する医療機関はまだ多くはありません。当院では積極的にこの治療法を実施します。一人でも多くの患者さんの症状が緩和されるよう、学会などでも積極的に発表していきます。

誰もが訪れることができる、身近な病院でありたい

当院を、誰もが気軽に訪れることができるような場所にしようと思っています。たとえば、散歩の途中でふと立ち寄って、病院のトイレを利用してもらうだけでもいいのです。何か情報を得たり、誰かとおしゃべりをしたりして人とのつながりを感じられる場所になれたらいいなと考えています。

新病院を建築するにあたり、2015年から地域の自治会長さんやコミュニティセンターやボランティアの会、サークル活動の責任者の方々にヒアリングを重ねてきました。その話し合いのなかで考えたのが、コミュニティホールとライブラリーの設置です。

地域のきずなを作るコミュニティホール

当院のコミュニティホールは、最大で50人程度まで対応可能なスペースです。イベント・展示・ワークショップ・会議などに、どなたでも無料でご利用いただけます。地域のみなさまに健康相談に来ていただいたり、みなさま同士で互いが元気であることを確かめられたり、子育て中の方がお子さんを連れて集まり悩み事を相談したり、支え合いができたり、など、さまざまな用途で幅広い年代の方々に利用していただき、地域のみなさまとのきずなを形成していきたいと思っています。

本を通じて人と人のつながりを育むライブラリー

当院の待合室から2階のコミュニティホールに上がる階段の壁面に、ライブラリーを設置しました。患者さんだけでなく、どなたでも自由にご利用いただける本棚です。本を通じて地域のみなさまの趣味や健康づくりに関する知識を共有したり、適切な医療情報を提供したり、本を介した公開勉強会を実施したりと、健康な地域づくりに役立てられればと考えています。

入院患者さんのLIFEを充実させるために

病院に入院した患者さんは、毎日誰かがひっきりなしにお見舞いに来たり、何かしらの趣味に没頭したり、ということがなければ、誰とも会話することのない時間を過ごしたり、ひとりの食事時間を過ごすことが多くなってしまいます。

患者さんの入院生活をできるだけ充実させたい、という思いから、コミュニティホールやライブラリーを作りました。

たとえば、コミュニティホールで外部のサークルの方が手芸や歌などを楽しそうになさっている姿を入院患者さんがご覧になり、「私も元気になって参加したい」、「次に来てくれるのが楽しみ」と、入院生活を楽しく前向きに過ごしていただけたらいいなと思っています。

病院がなくても、安心して過ごせる地域づくりを目指して

譜久山 剛先生

当院は、KM-CART療法のような新しい緩和医療を積極的に取り入れたり、院内外の研修に積極的に参加したりするなど医療の質の向上に努めます。

そして、患者さんがどこで過ごしたいのか、常に患者さん本人に選んでいただける環境をつくります。病院でも在宅でも、患者さんとご家族が地域のなかで安心して過ごせるような仕組みを、今後ますます力を入れて構築していきます。