連載そこが知りたい!「インターバル速歩」

インターバル速歩と通常のウォーキングの違いとは?

公開日

2019年03月18日

更新日

2019年03月18日

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2019年03月18日

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信州大学 学術研究院医学系 特任教授

能勢 博 先生

インターバル速歩は、国内ではNHKの「ためしてガッテン」「あさイチ」「きょうの健康」などメジャーな番組やさまざまなメディアで紹介され、海外でも米国紙「New York Times」で大きく取り上げられるなど、徐々に国内外に知られるようになりました。この連載を通じて、インターバル速歩はなぜ、これほどまでに注目されるようになったのか。「そこ」を皆さんに解説していきたいと思います。

インターバル速歩で生活が変わる

「以前は、日帰りの山登りしかできなかったのですが、インターバル速歩をしたら、数日かけて北アルプスの縦走ができるようになりました」「以前は、朝から『今日の夕飯の献立は何にしよう』と考えているうちに1日が終わってしまいましたが、インターバル速歩をするようになってから、午前中に掃除、洗濯、夕飯の準備まで済ませ、午後から友人と出かけてお茶をする余裕ができました」――。これは、インターバル速歩を継続している人たちから聞いた“実感”です。「自分は通勤時の駅までの往復を含め、毎日1万歩以上歩いているけれどそんな効果は感じない」と思った人もいるのではないでしょうか。同じ「歩く」という行動でも、そういう人の歩き方とインターバル速歩は、全く別物なのです。

続ければ10歳若返る

図1

図1:中高年者(男性60名、女性186名)を、対照(何もしない)、1日1万歩、インターバル速歩群に分け、5カ月間の介入研究を行った後の変化の平均値。縦バーは標準誤差の範囲で、平均値の変動範囲を表す。
Nemoto et al: Mayo Clinic Proceedings 82: 803-811, 2007,


図1は、中高年者を対象にインターバル速歩と普通歩行の効果を比較したものです。彼らを、運動をしない「対照群」(左)▽1日1万歩を目標に歩く「1日1万歩群」(中央)▽インターバル速歩を実施する「インターバル速歩群」(右)――の3群に分け、開始時点と5カ月後の体力の変化を調べました。その結果、インターバル速歩群では、膝を伸ばすための筋力(膝伸展筋力)が13%▽膝を曲げるための筋力(膝屈曲筋力)が17%▽持久力の指標である最高酸素摂取量が10%――それぞれ向上し、体力的に“10歳若返る”という効果が得られたのです。さらに、それらの体力の向上に比例して、生活習慣病の症状も改善しました。一方、1日1万歩群ではこうした効果は見られず、全く運動を行なわない対照群とほぼ同じでした(これらについては、この連載でいずれ詳しく説明します)。

これらの結果は、個人が「ややきつい」と感じる運動が体力向上に必須であること、そしてその体力向上が生活習慣病の予防・治療に有効であることを示唆しています。このような運動は従来、スポーツジムに通い、「自転車エルゴメーター」や「トレッドミル」などのマシンを使うことが前提とされていました。しかし、インターバル速歩のように手軽にできる歩行系の運動でも、同様の効果を得られることが明らかになったのです。

インターバル速歩は続けやすい

インターバル速歩は“脱落”する人が少ないのも特徴です。私たちは、これまで14年間で7400人の中高年者を対象にインターバル速歩事業を展開してきました。トレーニングの継続率は、5カ月間で95%、22カ月間で70%、10年間でも20%の人が続けています。一般に行われている「1日1万歩の運動処方」は、5カ月間の継続率がせいぜい60%と報告されていますから、それに比べると極めて高いのです。

インターバル速歩を続けられる主な理由は、参加者が体力の向上を自覚できることにあると私たちは考えています。1日1万歩を始めるきっかけは、「健診でひっかかった」「病気を予防するため」など、消極的な動機が多いのです。そうして始めた運動なのですが、結果として多少血圧が下がろうが、血液成分が改善しようが、本人はあまりその効果を実感できません。だから続かない。

しかし、体力の向上は違います。冒頭に紹介した経験者の言葉に表れているように、体力の向上は具体的な生活や行動の変化に結びつきます。それによって生活の質(QOL)が向上するのです。これは一旦手に入れたら離したくなくなります。だから続くのです。

ゆっくりと早歩きを3分ずつ交互に

そんなメリットがあるインターバル速歩。具体的にはどのような運動でしょうか。

図2
図2:普通歩行とインターバル速歩の酸素消費量の違い。インターバル速歩では、最大体力(最高酸素摂取量)の70%以上に相当する強度の早歩きをしているが、通常、1日1万歩を実施する際の普通歩行ではそのレベルにまで達していない。


図2を見てください。普通のウォーキングは、ウォーキングの速度(エネルギー消費量)が一定なのに対し、インターバル速歩は「ゆっくり歩き」と「早歩き」を3分間ずつ、交互に繰り返します。

この時の「早歩き」は、個人の最大体力(最高酸素摂取量)の70%以上の「ややきつい」と感じる速度を目指します。「ややきつい」と感じる速度とは、安静状態を1点とし、もう駄目だと感じる速度を10点とすれば、6~7点に相当する速度です。

なぜ、3分間ずつ交互に繰り返すのかというと、3分間以上の早歩きは「しんどく」て続けられないからです。たとえば、早歩きを開始して2分経過すると、ほとんどの人が「えぇ……、まだあと1分のこれを続けるのぉ……」と思います。

こうした運動で「しんどい」と思うのはなぜでしょうか。少し難しい話になりますが、一定以上の強度で筋肉を使い続けると、乳酸が筋肉内にたまって筋肉内のpHが下がり(=水素イオン濃度が上がり)、足が動かなくなって筋肉痛まで引き起こすのがしんどさを感じる原因です。そして、乳酸の「酸(=水素イオン)」が血中に出てくると「息切れ」を引き起こします。たまに急いで階段を駆け上がったとき、踊り場で、両膝に手をついてハァハァ呼吸をしますよね。場合によっては吐き気までします。あれは乳酸の「酸」の仕業です。

早歩きの後、3分間のゆっくり歩きを挟むと、その間に筋肉内の乳酸の水素イオンが洗い出され、血中に出てきた水素イオンも体外に放出され、筋肉痛も息切れも治まってきます。そして、「また、早歩きをしてもいいか」という気分になるのです。

前述のように、この「しんどい」強度の運動を一定頻度、一定期間して初めて、運動の効果が体に現れてきます。インターバル速歩は、こうした運動を手軽に、効果的に続ける方法なのです。

さあ、これから「インターバル速歩」についての「これは知っておいてほしい」と思う点をピックアップして解説したいと思います。お付き合いください。

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信州大学 学術研究院医学系 特任教授

能勢 博 先生

画期的な効果で、これまでのウォーキングの常識を変えたといわれるインターバル速歩を提唱。趣味は登山。長野県の常念診療所長などを歴任し、1981年には中国・天山山脈の未踏峰・ボゴダオーラ峰(5445m)に医師として同行、自らも登頂した。