連載そこが知りたい!「インターバル速歩」

10年かけて確立したインターバル速歩の歩き方とその根拠

公開日

2019年11月18日

更新日

2019年11月18日

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2019年11月18日

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信州大学 学術研究院医学系 特任教授

能勢 博 先生

これまでの連載で、インターバル速歩を続けることで体力向上や生活習慣病の症状改善が期待できること、「楽」な普通歩行で1日1万歩を歩いても効果はないが1日15分のインターバル速歩は健康に効果的であること、そして何よりインターバル速歩は継続しやすく脱落者が少ないことを説明してきました。

今回は、いよいよインターバル速歩のやり方とその根拠を述べましょう。やり方についてはとてもシンプルで、「たったこれだけ?」と拍子抜けされるかもしれません。しかし、実はここまでくるのに10年以上かかっています。

歩き方5つのポイント

1)まず、図に示すように、服装は軽い運動ができる程度のもので、靴は底が柔らかく曲がりやすく、かかとにクッション性のあるものを選びます。

2)下半身を中心とした軽いストレッチを数分間行ってからスタート。視線は25m程度前方に向け、背筋を伸ばした姿勢を保ちます。

3)足の踏み出しはできるだけ大股になるようにし、踵(かかと)から着地します。慣れないうちは「1、2、3」とカウントして、3歩目を大きく踏み出すようにします。この際、腕を直角に曲げ前後に大きく振ると大股になりやすくなります。

4)速歩のスピードは個人が「ややきつい」と感じる運動です。感覚的な目安としては、5分間歩いていると息が弾んで動悸(どうき)がし、10分間歩いていると少し汗ばみ、もし友人と歩いているのなら軽い会話ができる程度、15分間歩いていると脛(すね)に軽い痛みを感じる程度――と思ってください。

5)速歩の継続時間は3分間を基準とします。これは、大部分の人が「これ以上の歩行継続を困難」と感じるからです。そこで速度を落として3分間のゆっくり歩きを挟むと、「また速歩をしよう」という気分になります。時計で正確に時間を測定しなくても、電柱などウオーキングコースの適当な目印にしたがって自分で設定してもいいのです。このセットを、5回/日以上、4日/週以上を繰り返すことを目標とします。この基準量は毎日まとめてやらなければならないわけではなく、1日の通勤、買い物の行き帰りと分けても、週末にまとめて実施してもいいのです。要するに週合計速歩時間が60分以上となり、これを5カ月間行えば、先に述べた効果が得られます。

歩き方の基本

方法のそれぞれに「根拠」あり

インターバル速歩のやり方を要約すると、「視線は25m程度前方」に向け、「背筋を伸ばした姿勢」を保ち、足の踏み出しはできるだけ「大股」になるように行い「踵から着地」します、その際、「腕を直角に曲げ前後に大きく振る」と大股になりやすい、です。なぜこのようなやり方をするのか、その根拠を説明しておきましょう。

まず、なぜ25m前方をみるか。早足で歩いているので、前方の電柱などの障害物にぶつからないため、と考える方もおられると思いますが、それよりも背筋を伸ばしてもらうことが目的です。これによって、大股で歩いた時の、前方への体重移動が容易になります。

次に、なぜ大股で歩くのか、です。こうすることによって、臀部(でんぶ)から下肢に至るまで多くの、それも大きい筋群が運動に参加するからです。これらの筋群だけで全体重の3分の1に相当します。主に下肢だけを動かす、例えば、ランニング、サイクリング、そして体力の低い中高年者ではウオーキング(速歩)でさえ、多くの筋肉を動かすことになるため代謝量が安静時の最大5~8倍にまで上昇し、その人の体力の最大値に達してしまうのです。つまり、大股で歩くことは、下半身で多くの糖質・脂肪を燃やす手段なのです。

さらに、なぜ踵から着地するのか。その1つの理由は、大股で歩く時は、どうしても大きく前へ踏み出した足への体重移動が遅れるため、踵から着地せざるを得なくなります。逆もまた真で、踵から着地を「意識すれば」自然と大股になるのです。

一方、踵から着地することで、踵に衝撃を与えて損傷することを懸念される読者もおられるかもしれません。しかし、体重をすばやく前足に移動するようにすれば、それは十分防げるでしょう。

さらに、高齢になると脛の筋肉が衰えて、つま先が下がり、転倒してしまうことが多くなります。しかし、大股で歩いて踵から着地しようとすることによってつま先を上げようとしますからつまずくことはありませんし、その調子でインターバル速歩をすれば脛の筋肉が鍛えられて将来の転倒の予防になると考えられます。

最後に、なぜ腕を直角に曲げ、前後に大きく振るのか。それは、歩行中の体の軸が回転しないようにするためです。例えば、左足を大きく前に踏み出し、右足が後ろに残った場合、それと逆に、左腕を後ろ、右腕を前に振ることで、腰の回転が最小限に抑えられます。これによって、腰に負担を掛けることなく、安定して大股で歩くことができるのです。

このように、インターバル速歩のフォームは、「ややきつい」と感じる速歩を長時間、安全に実施するための工夫なのです。

ニューヨーカーはいつも実践?

ニューヨーカー

余談ですが、このような歩き方って、他人からみてどうなのか、不安に思われる方がいるかもしれません。しかし、心配ご無用です。さっそうとしていて10歳ぐらい若返ってみられること請け合いです。

8年前、インターバル速歩は米紙New York Timesの“日曜版別冊”にあたる「New York Times Magazine」で紹介され、その翻訳記事が朝日新聞の特別誌面「Globe」に掲載されました。その時、翻訳を担当したニューヨーク在住の女性が「ニューヨーカーはいつもインターバル速歩をしている。彼らはダラダラ歩きをしない。歩くときは速歩、そして、ブロックごとに信号で立ち止まる。それは、まさにインターバル速歩みたいだ」と記事の感想を述べておられました。

これを読んだ時、私は、かつて留学中にマンハッタンのビジネス街で見た、ミンクのコートを着てスニーカーを履き、ショルダーバックを肩からタスキ掛けにして闊歩(かっぽ)する米国女性の姿を思い出しました。このような人が増えれば、日本はもっと元気になると思うのです。

最近、「ウォーキングの科学-10歳若返る、本当に効果的な歩き方-」(講談社ブルーバックス)を上梓しました。インターバル速歩の方法についてもっと詳しく知りたい方は、こちらも参考にしてください。

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信州大学 学術研究院医学系 特任教授

能勢 博 先生

画期的な効果で、これまでのウォーキングの常識を変えたといわれるインターバル速歩を提唱。趣味は登山。長野県の常念診療所長などを歴任し、1981年には中国・天山山脈の未踏峰・ボゴダオーラ峰(5445m)に医師として同行、自らも登頂した。