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連載なぜ進む? どう防ぐ? 腎臓病・高血圧

患者1300万人 「新・国民病」CKDとは?

公開日

2019年10月15日

更新日

2019年10月15日

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2019年10月15日

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日本赤十字社医療センター腎臓内科

上條 由佳 先生

腎臓の働きが低下して起こる慢性腎臓病(CKD)は「新たな国民病」といわれ、約1300万人もの患者がいるとみられます。腎臓は血液中の老廃物を排出したり、体のバランスを整えるさまざまなホルモンをつくったりする器官です。CKDが進行するとこれらの機能が損なわれて透析や腎移植を余儀なくされるほか、脳卒中心筋梗塞(こうそく)の危険因子にもなります。予防のためには生活習慣の是正や適切な受診が大切です。

リタイア間近で発覚 このままでは透析にも

「え……透析が必要になるかもしれない?! 今まで1度もそんなの言われたことないんですよ。症状だってなにもありません。やりたくないです!」

Pさんは60代男性。家族を養うため、約40年の会社員人生は一心不乱に働き、接待や出張など多忙を極めました。単身赴任も何度も経験。外食が重なり、娘が生まれたときにやめたたばこもストレスのため20年前にまた吸い始めてしまいました。若い頃に野球で鍛えた体は、忙しさのため運動をすることもなく体重が20kg近く増えています。

娘も巣立ち「のんびり旅行しながら孫の面倒をみる生活も良いかな」とリタイアも頭をよぎったPさんは、最近受けていなかった健康診断を久しぶりに受け、再検査で病院に受診したところ医師から突然透析の話をされてパニックになってしまいました。

脳卒中や心筋梗塞のリスクが2~3倍に

CKDは、10年ほど前に日本に導入された比較的新しい病気の概念です。糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、腎硬化症など、いくつかの病気の総称で、「腎臓の血液ろ過機能が60%以下に低下した状態」または「たんぱく尿などの異常が3カ月以上続く状態」を指します。

腎臓の中にある「糸球体」という球状に集まった毛細血管や、周囲の「間質」と呼ばれる組織が障害を起こしてろ過機能が低下すると、老廃物の排出、水分やミネラルの調整、ホルモン生成などのバランスが崩れてしまい、老廃物がたまってくると全身にさまざまな不調を招きます(尿毒症)。

そして、塩分や水分を排出できない、血圧を調整するホルモンがうまく働かないことから高血圧が悪化します。また、その他のホルモンやミネラルバランスが狂うことで血管の石灰化(動脈硬化)が進み、命に関わる脳卒中や心筋梗塞の発症リスクが高まります。一般的にそれらの発症リスクは正常な方の2~3倍とされ、CKDが高度になればなるほどリスクは上がっていくことが知られています。

心筋梗塞

生活習慣病が腎臓にダメージ

CKDの原因として、動脈硬化や加齢に加え、糖尿病や高血圧などの生活習慣病があり、そうした患者さんがたいへん増えています。

生活習慣病はなぜ腎臓にダメージを与えるのでしょうか。腎臓は細かい血管の塊でできています。糖尿病高血圧、動脈硬化により細かい血管が傷つき、それらの圧が上がることで徐々に腎臓の働きが低下してCKDを発症・悪化させてしまうのです。

ほかには遺伝や感染、薬剤などが原因となる場合や、原因不明の特発性であることもあります。

一般に腎臓の機能が15%を切ると、生命を維持するために透析や腎移植を検討します。慢性腎不全による透析患者はいまや約32万人に達し、毎年3万人もの方に透析が導入されています。そのうちの6割は、糖尿病や高血圧が原因です。

CKDは早期であれば治療が可能なこともありますが、食い止めることができずに進行してしまうと、腎機能を改善することはできずに透析に至ってしまいます。

透析治療が必要になってくると生活や体にさまざまな制限を生じることがあります。また医療費の増加(年間500〜600万円)は国や自治体・健保組合などにとっても大きな負担となります。このようなことから、CKDはもっと注意すべき病気だという認識が高まっています。治療介入のタイミングを逸しないためにも、早期発見が非常に重要です。

早期治療で進行抑制も

CKDを早期発見するためには、どのような点に注意すればいいでしょうか。まずは、定期的な健康診断で尿や血液、血圧などの検査をすることが欠かせません。高血圧やメタボリックシンドローム、血糖値が高めの人は、尿検査や血液検査結果が正常範囲であっても、将来的に腎臓に障害が出るリスクがあります。糖尿病の人は、医療機関で「尿中微量アルブミン検査」を受けることが望まれます。また、尿検査に異常が出た患者さん(尿潜血や尿タンパクなど)は「糸球体腎炎」という病気を起こしている可能性があります。早期検査・早期治療によりCKDの進行を抑えることができる可能性がありますから、医師に相談しましょう。

腎機能は以下の検査で状態が把握できます。

血清クレアチニン・eGFR(血液検査)

クレアチニン(Cr)は筋肉で作られる老廃物の1つで、本来であれば腎臓の糸球体でろ過され尿へ排出されますが、腎臓の働きが悪くなると、排出されずに血液中にたまっていきます。血清Cr値が高いということは腎臓のろ過・排出がうまくいっていないと判断できます。

ただ、Crは筋肉量の影響を受けるため、同じ値でも筋肉量が多い方とそうでない方では重症度が異なってきます。そのため現在では、Cr値を年齢、性別で調整したeGFR(推定糸球体濾過<ろか>量)という数値を用いて腎臓の機能を判断します。GFR(糸球体濾過量)は糸球体が1分間にどれくらい血液をろ過して尿を作れるかを示す値で、この値が低いほど腎臓の働きが悪いことを示します。eGFRが60未満の場合はCKDの疑いがあり、この状態が3カ月続くとCKDと診断されます。

だたし、eGFR値が90以上であっても▽高血圧▽血糖値▽高コレステロール値▽高尿酸値▽肥満▽喫煙習慣▽多量の飲酒▽運動不足▽ストレス――などCKDになりやすい危険因子のある人はハイリスク群で、注意が必要です。

尿たんぱく

たんぱくは、通常はほとんど尿に出ずに体内に再吸収されます。糸球体の働きが弱まると、「フィルター」の網目がもろくなり尿の中に混じって出てくることがあります。

尿たんぱくの検査結果で±(プラスマイナス)は弱陽性、+(プラス)以上は陽性となり、腎臓の病気の可能性があるのでさらに細かい検査を行います。ただし激しい運動の後や、脱水状態などでも、陽性になる場合があります。

尿潜血

目で見てわかるほどの血尿を「肉眼的血尿」、見た目は正常に見える血尿を「顕微学的血尿」といいます。原因として

  • 膀胱(ぼうこう)炎などの感染症
  • 腎〜尿路系の悪性腫瘍
  • 尿路結石
  • 糸球体腎炎など腎臓の病気

――などがあります。

これらの検査で尿潜血や尿たんぱくが陽性▽腎機能が低い▽血圧が高い――と判定されたり、むくみ▽貧血▽倦怠(けんたい)感▽息切れ――などの自覚症状があったりする場合は、腎機能が低下している恐れがあります。

減塩・減量・禁煙…セルフケアも治療の柱に

メタボリックシンドローム

CKDの発症に大きな影響を及ぼす不適切な生活習慣には▽塩分摂取過剰▽肥満▽運動不足▽飲酒▽喫煙▽ストレス▽メタボリックシンドローム(内臓脂肪型肥満・高血糖・高血圧・脂質異常)――などがあり、これらの見直しはとても重要です。また薬剤の多くが腎臓排泄(はいせつ)であることから、不必要な薬剤多量内服も腎機能悪化につながります。

一度失われた腎機能が回復することはほとんどありませんが、透析が必要な末期腎不全への進行を遅らせることと、重篤な心血管疾患になるのを防ぐための治療をします。治療としては、塩分摂取の制限、たんぱく尿の管理、血圧の管理、CKDの原因となった病気の管理が重要です。薬物療法としては血圧を下げる薬などを用います。高血圧や糖尿病などの生活習慣病がある場合は、その治療も必要です。

さらに肥満の場合は肥満の是正、喫煙している人は禁煙といった生活習慣の改善といったセルフケアも治療の大きな柱となります。

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日本赤十字社医療センター腎臓内科

上條 由佳 先生

日本赤十字社医療センターにおいて石橋由孝部長のもと、全人的総合的腎不全医療(Total Renal Care:TRC)を推進・普及させるためにアウトリーチ活動を行っている。一人ひとりの腎不全患者が自己管理や行動変容を実現するための教育というミクロなアプローチから、腎不全患者自身がさまざまな治療の選択肢を持てるようにするための社会システム全体の構築というマクロなアプローチも積極的に行っている。