連載「健康経営の最前線」ー現場に聞いたリアルストーリー

ソフトバンクの健康経営―「健康経営銘柄」2年連続受賞、社員が実践する健康習慣とは

公開日

2025年01月29日

更新日

2025年01月29日

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2025年01月29日

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健康経営とは、企業が従業員等の健康管理を経営的視点で考え、戦略的に取り組むことによって従業員の活力向上や生産性の向上などの組織の活性化をもたらし、業績結果や株価向上につながると期待されています。

経済産業省では、この健康経営に関わる顕彰制度として2016年から「健康経営優良法人認定制度」を設立しました。大規模法人においては「健康経営銘柄」「健康経営優良法人(ホワイト500)」「健康経営優良法人(大規模法人部門)」と認定が区分されており、特に「健康経営銘柄」は1業種1社といわれるほど、選定のハードルが極めて高いことも特徴です。

「健康経営銘柄」に2023年から2年連続で選定され、「健康経営優良法人(ホワイト500)」には2019年から6年連続で認定されているソフトバンク株式会社。小規模な施策からスタートし、コロナ禍を経て着実に健康経営を浸透させ、部署を横断しての体制整備やアプリ活用などに取り組まれています。具体的な健康施策の実績や今後の展望などについてソフトバンク株式会社 コーポレート統括  Well-being推進室の吉橋由美さんと長堀美代子さんに話を伺いました。

コロナ禍の取り組みを機に、健康経営が浸透

―—社内での健康経営の位置付けや、具体的な取り組みをお聞かせください。

(吉橋さん)―2016年ごろは人事本部内の衛生施策くらいの位置付けでしたが、改善を繰り返していくうちにようやく経営層にも健康経営の重要性が伝わり、今では経営会議で取り上げられるほど、当社の中では重要なテーマになっています。

コロナ禍の際には、唾液PCR検査や新型コロナワクチン接種の職域接種、在宅勤務への切り替えなどを他社よりも早い段階で取り入れたところ、「社員を大事にしてくれている」という意識が広がり社員の健康経営への関心も高まりました。ワクチン接種をお取引先企業様や社員の家族・友人も受けられるようにしたことで、私たちが当初から大事にしている「ウェルビーイング」や「健康経営」といった考えを、社外の皆様にも認知していただく機会にもなったと感じています。

データを駆使して多角的に分析

―取り組みの成果を図るために、どのような指標を重視していますか?

(吉橋さん)―個々の取り組みに対して評価アンケートをとるほか、2018年からは「健康意識調査」も始めました。社員の健康状態やニーズ、ヘルスリテラシーに加え、会社がホワイト500などに認定されていることを知っているか、それに対してどう感じているかということも聞き、健康経営に対する社員の認識も把握できるようになりました。

以前は感覚的な仮説をもとに施策を進めていましたが、ここ数年はストレスチェックや健康診断、健康意識調査結果などのデータを掛け合わせることで、多角的に分析ができるようになりました。この分析は、グループ会社であるSBアットワーク株式会社のウェルネスセンターや人事本部 人材戦略部 デジタルHR推進課と連携して行っており、健康課題が明確となり、施策の質向上につながっています。

―ターニングポイントとなった印象的な事例はありますか?

(長堀さん)―2021年から開催しているウォーキングイベントの効果検証を2024年に行ったところ、参加した社員のほうが、健康診断の有所見率の改善がみられるという成果がありました。イベントを通じて目に見える変化が得られたのは大きな成果です。

2023年に実施した睡眠セミナーの成果も印象的でした。健康意識調査のデータ分析の結果、睡眠課題がある社員のほうがBMIの正常値から外れている方が多く、パフォーマンスの発揮度も低いことが分かり、外部講師を招いて睡眠セミナーを開催しました。参加した社員の睡眠に関する意識の変化を、セミナー前後で確認したところ、質の高い睡眠をとる意識の向上がみられたのです。このような効果が実感できる施策は今後も続けていきます。

 

*睡眠セミナーの受講前後で質の高い睡眠をとるよう意識・実践しているか確認したところ、受講後のほうが意識・実践している人の割合が18pt上昇した。

(受講前:19%→受講1か月後:37%)

アプリや多彩な人材を活用できるのが強み

―健康経営を推進するにあたって活用しているツールはありますか?

(吉橋さん)―グループ会社であるヘルスケアテクノロジーズ株式会社が提供しているヘルスケアアプリ「HELPO(ヘルポ)」があります。もともとオンラインでの健康相談や唾液PCR検査の受付管理などに使っていたのですが、歩数計測機能の追加をきっかけに、ウォーキングイベントでも使ってもらうようにしたところ、順位の確認や集計も簡単にできるようになりました。社員からは「毎日の歩数を気にするようになった」「歩く習慣がついた」という声をいただき、「HELPO」の活用が運動の習慣化につながっていると感じます。ほかにも、「HELPO」には食生活や女性の健康に特化したコンテンツ、運動やストレッチの動画、喫煙に関する相談窓口などの機能を揃えています。

ツール活用だけでなく、規模を生かした環境作りにも取り組んでいます。

産業カウンセラーやキャリアコンサルタントなどの資格を持ち、所定の基準に合格した社員がボランティアで同僚社員などの相談にのる「ピアサポーター制度」(2024年現在約100名)や、ヨガインストラクターの有資格社員によるヨガ講座などがあります。社員同士の相互支援によって成り立っているこれらの制度は、他社からも評価をいただいています。

(長堀さん)―ウェルネスセンターには産業医・保健師・カウンセラーが常駐しており、社員が健康相談やカウンセリングに対応できる環境も整えています。実は、私も本務はウェルネスセンターで保健師として従事しており、今後はほかのグループ会社で提供している医療系サービスの活用も視野に入れ、さらなるウェルビーイングや職場環境の向上に向けてグループ内で連携を図っていきたいです。

産業カウンセラー等の資格をもった同僚がボランティアとして職場内の身近な相談役となる「ピアサポーター制度」を運営。ピンクのストラップがピアサポーターの証。

デジタルと泥くささの両輪で、ボトムアップを図る

―最後に今後の展望についてお聞かせください。

(吉橋さん)―社員が自分で情報を得て、心身ともに自立した健康管理ができる状態を目指し、これからも有益な情報や機会を提供していきます。忙しい社員や健康への関心が少ない社員にも私たちの取り組みがきちんと届き、効果を実感してもらうことが重要なテーマになるでしょう。

これまでもデジタルツールの活用と地道な努力の結果「定期健康診断の受診率100%」を達成できているので、このような泥くささも忘れずに、私たちの思いが数値に反映される日を待ち望みながら尽力していきます。

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