東長崎駅前内科クリニック院長/さいたま胃腸内視鏡と肝臓のクリニック和光市駅前院代表理事 吉良 文孝 先生
「大腸がんは聞いたことがあるけれど、ポリープって何?」「健診で便潜血陽性と書かれていたけど、どこに相談すればいいの?」。そうした素朴な疑問を、今さら誰かに聞くのも気が引けて、先延ばしにしている人は多いのではないだろうか。
大腸がんは日本人に多いがんの1つであり、特に女性ではがん死亡数第1位となっている。だが、その多くは「ポリープ」という段階から時間をかけて進行するため、早期に発見できれば予防や治療が可能な病気でもある。
そこで、東長崎駅前内科クリニック院長/さいたま胃腸内視鏡と肝臓のクリニック和光市駅前院代表理事である吉良 文孝(きら ふみたか)先生に、大腸がんと大腸ポリープの関係や、検査結果をもとにどのように行動すればよいのかについてお話を伺った。
大腸がんは、文字通り大腸にできるがんです。他のがんと異なるのは、多くの場合「ポリープ」と呼ばれる良性の病変から時間をかけて進行していく点です。つまり、ポリープの段階で見つけて切除できれば、大腸がんを未然に防げる可能性が高くなります。
実際、私のクリニックでは「大腸がんになる前の段階で止められた」というケースも経験しています。症状が出る前に、見つけにいく。この姿勢が報われる可能性の高いがんは、実はそう多くありません。
大腸ポリープとは、大腸の粘膜にできる小さな隆起です。全てががんに変わるわけではなく、「腺腫(せんしゅ)」など、がん化しそうなものだけを切除することになります。小さいものであれば、検査の最中に切除できるケースもあります。いわゆる「日帰り切除」と呼ばれる方法です。
ただ、大腸ポリープを切除したからといって、その先もずっと大腸がんとは無縁の人生が保証されるわけではありません。再発のリスクを下げるためには、定期的に大腸カメラ検査を受けることが肝要です。検査後、切除したポリープの病理検査の結果や、ポリープの個数・大きさなどをもとに、次に検査を受けていただきたいタイミングについて患者さんにお伝えすることができます。
検査によって大腸ポリープや早期のがんを発見・切除できることは、大きなメリットです。ただ、異常が見つからなかったのに体調不良や違和感が続くということもありますので、その場合は症状に応じた対処が必要となります。
たとえば不調の原因として、脂肪肝が考えられます。この病気には糖尿病や動脈硬化といった生活習慣病が関わっていることも多く、肝臓だけを診ればよいというものではありません。
またお腹の不調がある患者さんの場合、さまざまな要因が複雑に絡み合っている可能性があります。食事、運動、睡眠、働き方といった普段の生活が大きく関係していることも少なくないため、医師と一緒にライフスタイルの見直しを行うのもよいでしょう。
このように多様なケースが考えられるため、私は「検査をして、終わり」ではなく、患者さんと一緒に検査の前後を含めたプロセスを丁寧にたどることが、治療の本質だと考えています。クリニックでも、大腸カメラ検査で異常がなかった方については、丁寧に説明を行ったうえで、「どう生活を整えていくか」といった視点についてお話するようにしています。
「内視鏡検査は受けたほうがいいのか」「まだ様子を見ても大丈夫なのか」と心配になることはあるかもしれません。そんな時は、話をするだけでも安心できたり不安が軽くなったりすることはあると思いますので、まずは医療機関に相談してみるとよいでしょう。私自身もそうした患者さんの心配を丁寧に聞くことを大切にしており、対話を重ねるたびに、やはり医療の役割は検査や治療だけではないなと感じています。
「病気かもしれない」と感じたときはもちろん、「気になるけれど、受診するほどではないかも」と思ったときであっても、まずは相談をすることが大腸がんやポリープを見逃さないための第一歩となります。多くの方がそういった相談を気兼ねなくできる場所でありたいという思いで、日々の診療にあたっています。
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