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下痢が1か月以上続いたら要注意——炎症性腸疾患「IBD」とは

公開日

2026年03月05日

更新日

2026年03月05日

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2026年03月05日

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あんどう消化器内科IBDクリニック院長/安藤 純哉 先生

「週に5日はお腹が痛くなる」、「よく下痢に悩まされている」。そんな症状があっても、体質のせいやストレスのせいと軽く考えて、医療機関には行かず様子を見ているという人は少なくないのではないか。しかし、そこには炎症性腸疾患(IBD)が関与している可能性もある。

IBDは頻繁な腹痛や下痢で日常生活に支障をきたし、生活の質を大きく低下させる病気だ。放置すると症状がさらに悪化するだけではなく、大腸がんのリスクを高めるほか、腸の狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)、または腸に穴が開くなどの深刻な症状を引き起こすことが懸念される。だからこそ、早期に受診することが大切だ。

そこで、兵庫県明石市のあんどう消化器内科IBDクリニック院長・安藤 純哉(あんどう じゅんや)先生に、見逃されやすいIBDの特徴や、適切な受診のタイミングについてお話を伺った。

その症状、体質のせいだと思い込んでいませんか?

下痢や腹痛は日常的にも起こり得る症状です。そのため、「体質だから仕方ない」「そのうち治るだろう」と受け止められやすく、深刻な病気とは結びつきにくい傾向があります。

しかし、その症状が1か月以上続いている場合には、一度立ち止まって受診を考えてほしいと思います。こうした症状の背後には、IBDという病気が隠れている可能性があるからです。IBDは症状だけで判断することは難しく、市販の整腸剤で様子を見続け、医療機関を受診するタイミングが遅れてしまうケースも少なくありません。「いつもと違う」「長引いている」というサインを見逃さず受診することが大切だと考えています。

IBD患者数は国内だけでも40万人以上

IBDとは、いずれも難病に指定されている「潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)」や「クローン病」といった腸に慢性的な炎症が起きる病気の総称です。 

「難病」と聞くと、自分には関係ない特別な病気と思われるかもしれませんが、日本には潰瘍性大腸炎患者さんが約31万人、クローン病患者さんは約9万人存在するとされ、決して一部の方だけの病気ではありません(2023年時点)。特に10代から30代といった若い世代での発症もみられ、年齢を問わず注意が必要な病気です。

潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に炎症や潰瘍ができ、下痢や血便、腹痛が主な症状として現れます。一方、クローン病は口から肛門(こうもん)までの消化管全体に炎症が起こる病気で、腹痛や下痢、体重減少に加え、痔ろうなど肛門の病変がみられることもあります。

IBDはどのように治療するのか

IBD治療の基本は薬物療法です。炎症を抑える薬やステロイド、免疫を調整する薬などを、病状に応じて使い分けます。また、これらの薬を使用しても治療に難渋する場合には、生物学的製剤など、より治療効果の高い薬物の使用も考慮します。近年、多数の先進的な薬剤が使用可能となっており、治療の選択肢が広がっています。このほか、クローン病では栄養療法も重要な治療法の1つとされています。

多くの場合、薬物療法や栄養療法で改善が期待できますが、十分な効果が得られない場合は手術が検討されることもあります。

なお、日本炎症性腸疾患学会認定のIBD専門医が在籍する医療機関や、IBD診療を行う消化器内科では、専門的な視点に基づいた診断や治療を受けることができると思います。紹介を希望される場合は、まずはかかりつけ医に相談することをおすすめします。

長引くお腹の不調は放置しないで

下痢や腹痛が続く場合、まず疑うべきなのは「一時的な不調なのか、何か病気が隠れているサインなのか」という点です。特に症状が1か月以上続く場合、IBD(炎症性腸疾患)の可能性も含めて、医療機関で原因を確認しておくことが大切になります。

一方で、下痢が続く背景はIBDだけとは限りません。たとえば、腸の動きが過敏になることで起こる過敏性腸症候群(IBS)や、感染症、食物アレルギーなどの体質的な要因、甲状腺疾患といった内科的な病気が関係していることもあります。だからこそ、まず原因を見極め、適切な治療を受けることが重要なのです。

医療機関では、問診で症状の経過を丁寧に確認し、必要に応じて血液検査や便検査、内視鏡検査などを組み合わせて診断をします。仮に検査で大きな異常が見つからなかったとしても、それはそれで安心材料になりますし、もしIBDなどの治療が必要な病気が見つかった場合でも、早い段階で治療を始めるほど、症状の悪化を防ぎやすくなります。

お腹の不調は、我慢できてしまう分だけ後回しにされやすい症状です。しかし、日常生活に影響が出るほど続いているなら、体からのメッセージだと受け止めてください。気になる症状が続くときは、消化器内科などで相談し、いまの状態を一度整理してみることから始めましょう。

取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。

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