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「肥満外来」とは?——糖尿病の専門医が語る、体重管理を見直すための医療の選択肢

公開日

2026年04月22日

更新日

2026年04月22日

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2026年04月22日

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林クリニック 院長/林 毅 先生

肥満外来という言葉を耳にする機会が、ここ数年で増えてきた。
以前は、専門的な施設や一部の医療機関に限られていた印象のある分野だが、近年は糖尿病などの生活習慣病を日常的に診ている地域のクリニックでも、体重や肥満に関する相談を受け付けるところが少しずつ増えている。

その背景には、肥満を自己管理の問題だけではなく、医学的に向き合う必要のある状態として捉える考え方の変化がある。

東京・板橋区にある林クリニックの院長であり、日本糖尿病学会認定の糖尿病専門医・研修指導医など複数の専門医資格を持つ林 毅(はやし たけし)先生に、肥満外来についてお話を伺った。 

肥満外来とは?

肥満外来と聞くと、特別な矯正プログラムを受ける場所という印象を持つかもしれません。ただ、地域診療の場では、体重管理や生活習慣について医師と一緒に見直していく相談の場としてイメージすると分かりやすいでしょう。

体重が増える理由は、人によってまったく異なります。食事の内容や運動習慣の有無だけでなく、仕事の忙しさによる生活リズムの乱れ、不規則な睡眠、年齢とともに起こる体の変化など、複数の要因が重なっていることがほとんどです。肥満外来では、そうした背景を丁寧に確認しながら、医学的な視点で現状を把握していきます。

肥満の治療と「GLP-1」の関係

肥満かどうかを判断する指標として、よく知られているのがBMIです。日本ではBMI25以上が「肥満」とされていますが、医療現場でより重視されるのは、肥満が健康に与える影響です。糖尿病や高血圧、脂質異常症など、肥満に関連した病気がある場合は「肥満症」と呼ばれ、医療的な対応が検討されます。

肥満の状態が続くと、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きが弱くなり、血糖値が下がりにくくなります。この状態が続くと、2型糖尿病につながる可能性があります。

そこで注目されているのが「GLP-1」というホルモンです。GLP-1は食後に腸から分泌され、インスリンの分泌を促したり、食欲を抑えたりする働きがあります。

このGLP-1の作用を利用した薬は、もともと糖尿病の治療薬として開発されましたが、使用中に食事量が減り、体重が落ちる人がいることが分かってきました。

現在では糖尿病の治療だけでなく、肥満症における治療の選択肢としても検討されることがあります。

肥満外来における治療の流れ

肥満外来では、まず診察や検査を通じて体の状態を正確に把握することを大切にしています。これまでの体重変化や生活習慣、過去のダイエット歴などを確認し、必要に応じて血液検査を行います。
そのうえで、医学的に治療が適切と判断された場合に、薬物療法を検討します。

GLP-1に作用する治療は誰にでも行えるわけではなく、年齢やBMI、糖尿病の有無などを踏まえ、医師が安全性や適応を慎重に判断します。ダイエットだけを目的に、安易に使ってよいものではないと考えています。

自己流ダイエットで悩み続ける前に、医師に相談を

体重の悩みは身近なテーマですが、「この程度で医療機関に相談してよいのだろうか」と迷う方も少なくありません。しかし、食事や運動だけでは体重管理が難しいと感じていたり、自己流のダイエットでリバウンドを繰り返している場合には、ぜひ地域のクリニックを受診してみてください。

肥満外来では、医学的な根拠に基づき、体の状態や生活背景を踏まえながら治療の必要性を判断します。
無理な減量を続ける前に、健康管理の一環として体重について相談する。その一歩が、将来の健康寿命を守るきっかけになればと願っています。

取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。

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