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デリケートゾーンのトラブルは、更年期以降に増える? 専門医が解説する、女性ホルモンの影響について

公開日

2026年04月20日

更新日

2026年04月20日

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2026年04月20日

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池田産婦人科医院 院長/井上 真理子 先生

デリケートゾーンのかゆみや痛みといったトラブルは、若い世代の悩みとして語られることが多い。しかし実際には、更年期以降の女性のほうが長く続く不調や繰り返す感染症に悩まされるケースも少なくないという。女性ホルモンの変化によって粘膜の状態が変わり、膀胱炎を繰り返したり、違和感が慢性的に続いたりすることがあるが、その実態はあまり広く知られていない。

そこで今回は、京都府京都市伏見区にある池田産婦人科医院 院長であり、日本産科婦人科学会認定の産婦人科専門医である井上 真理子(いのうえ まりこ)先生に、更年期以降のデリケートゾーンのトラブルについてお話を伺った。

若い世代のトラブルは原因が明確なケースが多い

デリケートゾーンのかゆみや痛みといった症状は、よく診療中に相談をいただきます。ただし若い世代の場合、症状の背景となる原因が比較的明確であることが多いと感じています。代表的なものとしてはカンジダ腟炎などの真菌感染、細菌による外陰部の感染症、あるいは接触性皮膚炎などです。インナーウェアの素材や洗浄剤などの刺激が関係する場合もあります。

このような場合、診察と必要な検査によって原因を特定し、それに応じた治療を行うことで改善が見込まれることが多いのです。

症状自体は強い不快感を伴うことがありますが、原因と治療方針が明確になりやすい点は、この年代のトラブルの特徴といえるでしょう。

更年期以降、女性ホルモンの低下が招く影響

一方で、更年期以降の女性にみられるデリケートゾーンの不調は、若い世代とは異なるメカニズムで起こることが多くなります。

更年期に入ると、卵巣機能の低下に伴ってエストロゲン(女性ホルモン)の分泌が減少します。このホルモンの変化は腟や外陰部の粘膜にも影響を及ぼし、粘膜の菲薄化や乾燥、弾力の低下を引き起こします。

こうした変化によって、外陰部の皮膚や腟粘膜は刺激に対して敏感になり、軽い摩擦でも痛みや違和感が生じることがあります。また腟内環境も変化し、腟内細菌叢のバランスが崩れやすくなることで感染症に対する抵抗力が低下する場合があります。

この結果として、外陰部の慢性的なかゆみや乾燥感、性交時の痛み、さらには膀胱炎を繰り返すといった症状が現れることがあります。

感染症や接触だけが原因ではなく、ホルモン環境の変化そのものが症状の背景にある点が、更年期以降のトラブルの特徴です。

繰り返す膀胱炎の背景にある体の変化

更年期以降の方から、「膀胱炎を何度も繰り返している」という相談を受けることもあります。

実際、膀胱炎を含む尿路感染症の発症頻度は閉経後の女性で増加することが知られています。膀胱炎そのものは比較的よくみられる感染症ですが、頻回に再発する場合には、背景に粘膜の変化が関係していることもあります。
こうした症状は婦人科と泌尿器科、両方の視点からのアプローチが必要になることもあります。近年では、泌尿器科と婦人科の境界領域を専門的に診る「ウロギネコロジー(ウロギネ)外来」を設置する医療機関も増えており、骨盤底機能の問題や繰り返す尿路感染症に対して、より包括的なケアが受けられるようになっています。

年齢のせいと決めつけず、医療機関で相談を

更年期以降のデリケートゾーンの不調は、必ずしも特別なものではありません。しかし症状の性質上、人に相談しにくいと感じる方が多いのも事実です。診察した際、「年齢のせいだから仕方ないと思っていた」「誰にも相談できなかった」という声を聞くこともあります。違和感や不快感が続いていても、そのまま我慢してしまう方が少なくないのです。

デリケートゾーンの不調は年齢とともに起こりやすくなる傾向がありますが、原因を「年齢のせい」と決めつけてしまう必要はありません。
かゆみや違和感を放置してしまうとQOL(生活の質)にも大きく影響してしまいますので、気になる症状が続く場合には、早めに地域のクリニックを受診することが大切です。

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