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抗菌薬が効きにくい性感染症が増えている? 薬剤耐性菌の実態と、正しい治療のために知っておきたいこと

公開日

2026年05月15日

更新日

2026年05月15日

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2026年05月15日

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東京ロータスクリニック 院長/吉田 剛大 先生

抗菌薬が効きにくい「薬剤耐性菌」は、公衆衛生上の重要な課題とされている。世界保健機関(WHO)は薬剤耐性(AMR)を「世界の健康に対する10の脅威」の1つに挙げており、2019年には、細菌の薬剤耐性が直接の原因となった死亡が世界で127万人、関連した死亡は495万人にのぼると推計されている。

抗菌薬による治療が基本となる感染症では、耐性菌の出現が治療に大きな影響を与える。性感染症も例外ではない。淋菌(りんきん)やマイコプラズマ・ジェニタリウムなどでは、これまで使用されてきた抗菌薬に対する耐性が問題となり、治療が難しくなるケースが報告されている。

こうした問題に、日々、診療の現場で向き合っているのが、東京ロータスクリニック(東京都千代田区)の院長で、日本専門医機構認定泌尿器科専門医の吉田 剛大(よしだ たかひろ)先生だ。今回は、薬剤耐性が問題となる性感染症の現状と、適切な治療を受けるために知っておきたいポイントについて話を伺った。

性感染症治療の現場で起きている「薬剤耐性」

薬剤耐性の問題は、入院患者の感染症などで知られていますが、性感染症の分野でも指摘されています。

その1つが、マイコプラズマ・ジェニタリウムです。この菌は尿道炎や子宮頸管炎(しきゅうけいかんえん)の原因になることがありますが、近年、治療に用いられるマクロライド系抗菌薬(アジスロマイシンなど)に耐性を示す株が増えていることが指摘されており、難治例も報告されています。

また、淋菌(淋病の原因菌)でも薬剤耐性の問題は以前から知られています。かつては内服薬による治療が行われることもありましたが、現在ではセフトリアキソンなど注射薬による治療が基本とされており、経口抗菌薬は代替的な位置付けとなりました。
 

なぜ耐性菌は生まれるのか

薬剤耐性とは、抗菌薬の使用によってその薬が効きにくい菌が生き残り、増えていく現象です。

抗菌薬は感染症の治療に欠かせない薬ですが、使い方によっては耐性菌の増加につながることもあります。たとえば、「症状が消えたから」と自己判断で服薬を途中でやめてしまうことや、以前処方された薬を自己判断で使い回すことなどは、抗菌薬に耐性を持つ菌が残りやすくなる要因の1つと指摘されています。

マイコプラズマ・ジェニタリウムで問題となっているアジスロマイシンなどへの耐性も、こうした抗菌薬の誤った使用の積み重ねが関係している可能性があります。

「何の菌か」を正確に調べることが、治療の出発点

薬剤耐性菌への対応では、症状だけで治療を決めるのではなく、必要に応じて検査を行い、原因となっている病原体を特定することが重要です。

検査では、尿やうがい液、スワブ(綿棒で粘膜を拭って採取した検体)などを用いたPCR検査などにより、淋菌、マイコプラズマ・ジェニタリウムなどの病原体を調べることができます。どの菌が原因なのかを特定したうえで、現在の耐性状況も踏まえて薬剤を選択する――この手順が、適切な治療を進めるにあたって重要視されています。

「何度治療しても再発する」「治療後も症状が続いている」という場合には、まず原因菌を特定する検査を受けることが大切です。

治療を終えても、安心するのはまだ早い

性感染症では、感染症の種類や検査法によって、治療後に一定期間を空けて再診や再検査、治癒確認が検討されることがあります。

再検査の時期や必要性は一律ではありませんが、症状が改善した場合でも自己判断で治療を終えるのではなく、再診や再検査の要否、タイミングについて医師の指示に従うことが大切です。治療の終了は自己判断に委ねず、経過を含めて確認することが重要です。

 

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