連載クリニックの現場から

見逃されやすい3つの病気—— 専門医が解説する大腸がん・胃がん・膵がん

公開日

2026年04月23日

更新日

2026年04月23日

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2026年04月23日

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おなかクリニック 院長/村井 隆三 先生

大腸がんは便潜血検査によって早期診断が期待できるようになってきた一方で、早期発見が難しい膵がんは患者数が増加し、がん死亡者数第3位(男女計)となっている。かつて第3位であった胃がんは、ピロリ菌感染率の低下などを背景に死亡者数が減少し、年間5万人前後から現在は3万8,000人を下回る水準となった。その結果、胃がんは第4位となり、膵がんと順位が入れ替わっている(全て2024年時点)。

東京・八王子市にあるおなかクリニックの院長であり、日本外科学会認定の専門医・指導医、日本消化器外科学会認定の消化器外科指導医など複数の資格を有する村井 隆三(むらい りゅうぞう)先生は、内科・消化器内科・肛門外科(こうもんげか)・外科の診療に長く携わっている。

そこで、大腸がんや膵がんをはじめ、痔など幅広い病気を診てきた村井先生に、消化器診療の現場で大切にしている視点について話を伺った。

大腸がんは「検査で防げるがん」になりつつある

大腸がんは、数あるがんの中でも特徴的な位置付けにあります。なぜなら、内視鏡検査(大腸カメラ)によって、がんになる前段階である腺腫というポリープを早期に発見し、切除できるケースがあるからです。つまり、大腸がんは早期発見にとどまらず、ポリープの切除によってがんの発症リスクそのものを下げられる可能性があるといえます。

それでも現実には、大腸がん検診である便潜血検査が陽性となっても、「忙しいから」「症状がないから」「恥ずかしいから」「つらい検査だから」と精密検査である内視鏡検査を後回しにされる方が少なくありません。症状が出てからでは進行していることもあり、精密検査を受けるタイミングが結果を大きく左右することもあります。大腸がんは、精密検査を受けるかどうかが将来を分ける病気なのです。

膵がんは「気付いたときには進行しているがん」

一方で、膵がんは初期には自覚症状がほとんどなく、大腸がんと異なり特定の検診方法が存在していません。そのため、症状が出て見つかった時点ですでに進行しており、手術ができないケースが多く、5年生存率が11%前後と予後が厳しい病気として知られています。近年、部位別がん死亡者数の順位でも、膵がんが胃がんと入れ替わって第3位となり、早期発見が難しいがんへの対応が社会的な課題となっています。

重要なのは、膵がんのリスクが高い方は分かっている点です。糖尿病の方のうち、特に発症したばかりの方や急激に悪化した方は要注意です。また、ご家族が膵がんにかかった方、お酒をたくさん飲む方、膵嚢胞(すいのうほう)のある方、慢性膵炎(まんせいすいえん)の方などはハイリスクなので、定期的な検査(エコー検査・CT検査など)をおすすめします。

地域診療における膵がんへのアプローチ

膵がんの早期発見は、大学病院などの専門的な医療機関だけの課題ではありません。むしろ、患者さんに接する機会が比較的多い地域医療の現場こそ、最初に異常を発見する窓口になり得ます。

胃の痛みや背中の痛み、なんとなく続く不調、体重の減少など、一つひとつはありふれた症状であっても、背景に膵臓(すいぞう)の病気が隠れていることがあります。

私の場合は、血液検査や超音波検査、CT検査などを組み合わせながら、膵臓を意識して診ることを大切にしてきました。実際、自治体レベルで膵がんの早期診断に取り組む動きもあり、医療者側の意識が変われば、予後の改善が見込める可能性は十分にあると考えています。

痔だと思われる症状こそ、自己判断せずに受診を

また消化器診療の現場では、痔の相談も珍しいものではありません。肛門の違和感や出血をきっかけに受診される方は日常的にいらっしゃいますし、多くの場合は適切な対応で改善が期待できます。

ただ患者さんの中には、そういった症状があっても「痔があるから」と自己判断し、しばらく様子を見てしまう方も少なくありません。

肛門からの出血や排便時の違和感は、たしかに痔の症状であることが多いですが、背景に大腸がんなど別の病気が隠れている可能性もあります。そのため、症状の原因をきちんと確認することが大切になります。

これまでお話ししたように、大腸がん、膵がん、そして痔は、それぞれ異なる病気です。地域診療の現場では、こうした病気が同じ「お腹の不調」や「気になる症状」をきっかけに見えてくることが少なくありません。

大腸がんのように検査でリスクを下げられる病気もあれば、膵がんのように、いかに早く発見できるかが重要になる病気もあります。また、痔に思える身近で日常的な症状であっても、その原因を確認することは重要です。

大切なのは、「たいしたことはない」と自分で決めつけず、気になる変化があれば一度、医療機関に相談することです。その積み重ねが、結果的に健康を守ることにつながると考えています。

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