連載新型コロナと闘い続けるために

コロナ禍でも「がん」は減らない―膵臓がん検診とQ&A【講座サマリー4】

公開日

2021年04月21日

更新日

2021年04月21日

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2021年04月21日

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この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2021年04月21日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

新型コロナウイルス感染症への対策としてワクチン接種が徐々に進む一方、地域によっては油断できない状況が続いています。コロナ禍の受診控えにより病気が重症化する例が増えており、がんも例外ではありません。“沈黙の臓器”と言われる膵臓がん。2021年3月20日(土)メディカルノートオンライン講座「コロナ禍における医療機関へのかかり方」から、膵臓がんの検診の注意点と参加者からのQ&Aをまとめました。【4 膵臓がん検診とQ&A:講師 山口和也先生】

【講師】

織田成人先生 千葉市立海浜病院 副院長、救急科統括部長

山口和也先生 公益財団法人ちば県民保健予防財団 総合健診センター診療部 消化器担当部長

【司会】

寺井勝先生 千葉市立海浜病院 病院長

井上祥 株式会社 メディカルノート 共同創業者・代表取締役

膵臓がんは現状「任意型検診」のみ

がん検診には、健康増進法に基づき市区町村などが行う公的な「対策型検診」と、人間ドックなど個人が任意で受ける「任意型検診」の2種類あります。胃がんや大腸がんは対策型検診があるのですが、膵臓がんについては現状、任意型検診のみです。そのため、膵臓がんの検診は個人が自主的に受ける必要があります。

素材:PIXTA
素材:PIXTA

 

そこで、どのような方が膵臓がん検診を受けるべきかをお伝えします。膵臓がんのリスク因子として、▽糖尿病▽慢性膵炎(まんせいすいえん)▽肥満▽喫煙▽大量の飲酒▽家族歴(親・きょうだい・子に膵臓がんになった方がいる)――などの要素が挙げられます。

このようなリスク因子のある方は、人間ドックなどで膵臓がん検診を受けていただくとよいでしょう。気になる点がある方は、かかりつけ医に相談のうえ、超音波検査を年に1回などの頻度で受けることをおすすめします。

膵臓がん検診では何を調べるの?

人間ドックなどの検診では、腹部超音波検査を行うことが多いです。これは最初に行うのに適した検査です。プローブ(探触子)という器具に医療用ゼリーをつけて体に押し当て、超音波を出して跳ね返った信号を元に映像がつくられます。

こちらは正常な膵臓の超音波画像です。黒い線状のものが脾臓(ひぞう)からつながっている血管で、膵臓は白っぽく見えています。膵臓がんの場合、この白っぽく見える部分に黒い影が見つかることが多いです。

膵臓(正常)(腹部超音波検査)

必要な検診と検査は必ず受けてほしい

がんを早期に発見して治療するためには、検診を受けることが重要です。そして「要精密検査」と言われたら必ず精密検査をお受けいただきたいです。私たちの生活に新型コロナウイルス感染症の影響は多々ありますが、このような状況でもがんそのものがなくなることはありません。皆さん、必要な検診と検査はぜひ受けていただくようお願いします。

Q かかりつけの病院の再開まで検査を待つのはOK?

最後に、オンライン講座に寄せられた検診や新型コロナウイルスワクチンに関する質問に対して講師のお2人から回答をいただきました。

質問1:今までは年に1回胃の内視鏡検査を受けていましたが、かかりつけの病院でクラスターが発生したためしばらく検査を受けていません。このような場合、かかりつけの病院が再開するまで待つべきか、ほかの受診可能な病院で検査を受けるべきでしょうか。

山口先生の回答:内視鏡検査の能力を考えると、検査を1年間先延ばししたとしても治療選択が変わるほどの変化はないと思われます。かかりつけの病院で検査を受けるメリットは、過去のデータが蓄積されており、体の状態をよく知っている先生が対応してくれることです。そのため1年ほどならかかりつけの病院で内視鏡検査を受けたほうがよいでしょう。ただ、2〜3年という単位で検査を受けられないとなると、病気があった場合進行してしまう可能性があるので、対応可能な別の病院で検査を受けることをおすすめします。

山口先生

Q 内視鏡検査での新型コロナ感染が怖い

質問2:内視鏡検査は飛沫が多いと聞き、新型コロナウイルス感染が怖いです。データ上は感染のリスクは高くないのでしょうか?

山口先生の回答:内視鏡が口や鼻から入るときには嘔吐反射(喉の奥にものが触れて吐き気を催すこと)が起きやすく、そこで飛沫感染のリスクが生じます。しかし、嘔吐反射が起こることが分かっているぶん、念入りに感染対策を行っているところが多いはずです。当財団としても地域の医師会に向けて講習などを行っており、検査の合間には必ず換気するなどの具体策について伝えています。内視鏡検査の受診者から受診者へ感染するということのないよう病院は十分に注意していますので、ご安心ください。そして必要な検査は受けていただくようお願いします。

Q 新型コロナワクチン接種で気を付けることは?

質問3:来週、新型コロナウイルスワクチンを受ける予定です。何か気を付けるべきことはありますか。

織田先生の回答:特別に何かを制限することはありませんが、発熱があるとワクチン接種ができないので体調を整えておくことは重要です。また、アルコールの摂取や激しい運動は免疫反応に影響を与えるといわれているため、できればワクチン接種の前日と当日はそれらを避けてください。このような留意点は、毎年のインフルエンザワクチン接種と同じものです。

織田先生

Q 「かかりつけ医」の上手な見つけ方は?

質問4:「新型コロナウイルス感染症を疑う症状がある場合には、まずかかりつけ医に相談しましょう」と聞きますが、私はいくつかのクリニックに通院しており、かかりつけ医と呼べるのか分かりません。どのようなクリニック・医師をかかりつけにしたらよいのでしょうか。上手な見つけ方を教えてください。

山口先生の回答:かかりつけ医というのは「何か困ったときに相談しやすい医師」だと私は思いますね。ご自身が話しやすい・相談に乗ってくれる方がよいと思います。いくつかのクリニックに通われているとのことなので、その中で「この先生は相談しやすい」という方にまずは相談してみてはいかがでしょうか。

寺井先生の補足:小児科医として補足させていただくと、お子さんの場合は予防接種などを受けているクリニックがかかりつけ医になりやすいと思います。子どもは急に熱が出たりお腹が痛くなったりしやすいので、そのようなときに診てくれる医師がいると安心ですよね。それがクリニックであっても、病院での治療が必要な場合には判断してくれますので、まずはかかりつけ医に相談してみてください。

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