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連載新型コロナと闘い続けるために

命に直結しやすい心臓、肺、食道の病気——新型コロナを恐れず適切な病院受診を

公開日

2020年11月05日

更新日

2020年11月05日

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2020年11月05日

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この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2020年11月05日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

日本胸部外科学会が行った調査で、新型コロナ拡大による受診控えの影響を受けて6割以上の施設で手術数が前年同期と比べて減少し、減少割合は約4割に及ぶことがわかった。現場からの報告によると、進行の早い食道がんでは症状が進みすぎて治療が困難なケースもすでに出ているという。また、気温が下がると心筋梗塞(こうそく)など心血管系の病気を発症する人が増える。今年は、救急搬送されても、手術前に新型コロナ感染の検査に時間がかかることが予想され、従来通りの治療ができない可能性も示された。2020年10月29日から名古屋市で開かれた日本胸部外科学会学術集会での記者会見でデータを公表。「コロナを恐れることがもっと大きな病気の治療遅れにつながる」とし、積極的に病院に行くよう呼び掛けた。

手術数への影響とその背景にあるもの

心臓や肺、食道の手術を行う全国の認定修練施設に9月9日~10月7日に調査を実施し、588施設から回答を得た。

それによると、2〜8月に65%の施設が前年比で手術数が減ったと回答。単月でみると5月がもっとも大きな影響を受けていた。

調査結果
日本胸部外科学会提供


また、手術数は平均で約4割減った。その原因は▽「手術適応の症例が減った」が44%▽「手術を延期した」が20%▽「手術の適応が減り、延期もした」が36%――だった。

延期の理由には、患者からの要望、医師からの提案や病院側の事情などがある。たとえば、患者が感染を恐れて受診を控えたこと(いわゆる受診控え)や、病院が新型コロナウイルス感染症への対応あるいは感染予防のための資材不足などにより手術数を制限した可能性があるという。

延期した手術に関して、「順次実施し始めている」と答えた病院は94%に上った。一方で、今後の見通しについて「数カ月で症例数は元に戻ると思う」と答えたのは41%にとどまり、半数以上は「元通りには戻らずこの状況がしばらく続くと思う」と答えた。

コロナが胸部外科患者に及ぼす深刻な影響

会見では、食道がんの受診遅れの危険性について「食道がんは、症状が出て3カ月たつと水も通らなくなるほど、圧倒的に早いスピードで進行する。症状が出てから検査まで時間がかかると、見つかったとしても治療ができない状況もありうる。ちょっとした診断の遅れが命取りになりかねない。今症例が減った分、次に恐ろしいデータが出てくるのではないかと非常に懸念している」との指摘があった。

心臓血管外科領域では、急性心筋梗塞、大動脈解離など、すぐに手術をしなければ亡くなってしまうという患者も多い。だが、現状では病院でのクラスター発生を防ぐため、緊急手術に先立ち新型コロナウイルスのPCR検査を実施している。気温が下がるとこうした疾患の患者が増えるため、各施設で対応を検討している。そのような事情から、「今年はこれまでのような形で緊急手術が受けられないケースがありうる」として理解を求めた。

そのうえで、「新型コロナウイルスに感染しないよう注意して過ごすことはもちろん大切だが、心臓、肺、食道などの病気は命に直結しやすい。それらは新型コロナウイルスに関係なく起こる。病院はこれまでの経験から、対策を整えている。決して手遅れになることのないよう、コロナを恐れすぎずに、適切に病院を受診してほしい」と訴えた。

厳しい状況の中で診療に従事する医療者たち

新型コロナウイルス感染症は、病院の経営や医師の教育にも大きな影響を及ぼしていることも、調査で浮き彫りになった。赤字に転落したり赤字幅が拡大したりした病院は8割に上り、医師の教育にまで手が回らない病院もあるという。

手術は減ったが、胸部外科の医師・看護師たちの仕事が減っているわけではない。手術で胸を切ることも多い胸部外科の手術後にはICU(集中治療室)での管理が必要。新型コロナウイルス感染症で同じように集中治療が必要となった場合、慣れている胸部外科のスタッフが呼ばれるためだという。実際に今回の調査では、医師と看護師を合わせて6割が新型コロナの診療に関わっていると答えた。

最後に、澤芳樹理事長は「胸部外科は心臓、肺、食道という重要な臓器を扱う医学領域で、あらゆる臓器の中でも特に命に直結し、手術の難易度も高い。私たちには病気を治し患者さんの命を守るという役割がある。新型コロナウイルス感染症という新たな脅威に戸惑いながらも、医療機関は感染対策や日々の診療に尽力している。適切に検査や治療を行えるよう心がけてほしい」と話した。

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