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連載新型コロナと闘い続けるために

新型コロナの教訓生かし改善を―地域医療の視点から見えた課題

公開日

2021年08月24日

更新日

2021年08月24日

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2021年08月24日

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この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2021年08月24日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

今、全国で新型コロナワクチンの接種が進んでいます。一方で感染が再び急拡大し、緊急事態宣言やまん延防止措置の適用エリアが拡大されるなど、混乱はなかなか収まりません。2021年8月に政府が「重症者以外は原則自宅療養」との方針を発表し、人々から不安や疑問の声が上がったことも記憶に新しい出来事です。神奈川県横須賀市で地域医療を支える磯崎哲男先生(小磯診療所理事長)は、「今回浮き彫りになった問題をそのままにせず改善を進めなければならない」と話します。自院で外来診療と在宅医療の2つを担い、県の保険医協会政策部部長としても活動する磯崎先生に、その思いを伺いました。

教訓を生かして平時からの対策を

新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の影響により、さまざまな問題が浮き彫りになりました。特に医療では、日本の医療提供体制が有事に弱く病床の逼迫(ひっぱく)が起こりやすいことが明らかに。ミクロに1つの診療所単位で考えると、感染対策用の医療資源を十分にストックしておくことや、発熱外来を設けて通常の患者さんと動線を分けることの必要性を痛感した医療機関も多かったと思います。

有事で明らかになった課題をそのままにすれば、結局は国民の一人ひとりが適切に医療を受けられない事態につながるでしょう。そのため今回の教訓を生かして、平時から医療提供体制の確立や医療資源の確保、地域の連携を進めていかなくてはなりません。

診療所での感染対策

COVID-19に関する情報が少ない時期はどこから対策したらよいのか分からずに混乱し、とにかく何でも感染防御しようとして、大変な思いをした医療機関や施設も多かったと思います。当院もそうでした。しかし、徐々に新型コロナウイルスの全貌や感染対策のターゲットも分かってきて、現在はコントロールしやすくなっています。

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写真:PIXTA

たとえば当院では、感染防御の観点でマスクを十分に確保して外来や在宅医療の患者さんには必ずマスクを着用いただいています。喉の診察は必要なときだけ行い、マスクを外す機会をなるべく減らしました。また、院内の空気が常に循環するよう、季節を問わず必ず窓を開放し、サーキュレーターや扇風機を随所に配置しています。

さらに職員同士の感染を防ぐために、更衣室や休憩所での会話をやめ、食事などマスクを外すときには互いに物理的・時間的距離を空けるよう徹底しました。

「家族と会いたい」と在宅医療を選択する方をサポート

当院ではCOVID-19の影響で在宅医療(訪問診療)を選択する方が増加しています。というのも、入院での療養では感染対策の観点でご家族との面会が自由にできない場合も多いからです。ご本人やご家族が「家族に会いたい」という理由で在宅医療を希望されるケースが増えました。そのような在宅医療を選択された方々が住み慣れた環境で穏やかな時間を過ごせるよう、十分な医療・ケアを提供するのも私たちの大切な役割です。

医療以外のことも相談できる「かかりつけ医」に

厚生労働省や日本医師会は、以前から「かかりつけ医」すなわち「健康に関することを何でも相談でき、必要なときは専門医療機関を紹介してくれる身近にいて頼りになる医師」を持つことの大切さを国民に伝えてきました。若年で病気のない方であれば必須ではないかもしれませんが、ある程度の年齢以降はかかりつけ医がいたほうがよいと思います。

患者さんとかかりつけ医の関係については、横須賀市医師会前副会長の千場純先生が提唱された「公立中学校の学区ほどのエリアにそれぞれかかりつけ医がいて、医療だけでなく介護・福祉・教育などの相談にも乗れる」という形を目指すべきだと考えています。なぜなら、それらは1つ1つ独立したものではなくつながっているからです。

このような考え方に基づき横須賀市医師会では、市と協働で、地域の中で医療から介護、福祉、教育まで相談できる仕組みづくりに努めています。

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写真:PIXTA

医療というインフラを継続させるために

COVID-19との闘いが長期化するなか、法人個人を問わず病院の経営が厳しい状態に追い込まれました。特に小児科と耳鼻科は減収が大きく、苦戦を強いられています。

その背景には、当初は感染を恐れた方が必要な通院を控えるいわゆる「受診控え」の影響があります。また、手洗いやマスクなどの感染対策を徹底するようになったことで感染症にかかりにくくなった可能性もあります。もちろん病気が減ることは喜ばしいのですが、減収が続けば医療機関は廃業に追い込まれ、結果として医療という社会の大切なインフラが途切れてしまう事態に陥りかねません。

このような状況を踏まえ神奈川県保険医協会では、必要な医療体制を継続するための方策として、診療報酬の「単価補正支払い」の実現を目指しています。簡潔にいうと、コロナ禍で減収した個々の医療機関に対して前年との比較で減収分を減らす仕組みです。

この方策はコロナ禍において時限的・特例的に講じるものであり、患者さんの払う自己負担は増えません。なお、新規財源は不要で既存スキームを応用するので、スピーディな対応が可能と思われます。個別に、迅速かつ確実な経営原資の補填がかなうでしょう。

最初の頃は反対する声も聞こえましたが、徐々に理解してくださる方が増えてきました。この取り組みを実現し、社会のインフラである医療をしっかりと継続していくことが目下の目標です。

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